【だいたい網羅】奇才テリー・ギリアム闘争史!(その2)

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汚らしい中世を再現することに拘ったスカトロジカルな初監督作『ジャバーウォッキー』のニューヨーク試写会で来場していた子供が律儀にも出てくるキャラクターの汚らしさや醜さを感想カードに書き込んだらある意味狙い通りにも関わらず根に持って二十年も後のインタビューでその子供を「吹き出物だらけの小汚いデブ」呼ばわりする武闘派映画監督テリー・ギリアム!

わざわざ試写会に来てくれて丁寧に感想カードも書いてくれた子供にそんな言い方ないだろ! そう思ったとしても二十年も根に持つなよ! いったいなにがギリアム監督をそうさせるんでしょう! 気になりますよね! 今日もどこかで人々の顰蹙を買っているギリアム監督の出身、学歴、宗教、陰湿な悪口、粘性のトラブル、偏執的かつ分裂的な性格などをまとめてみました! ファッキンジャップぐらいわかるよトレブロ構文!

パイソンズの戦い

アメリカからイギリスはロンドンに逃れたギリアム先生はひとまずフリーのイラストレーターとして日銭を稼ぐ。その頃、有能パートナーのグレニス・ロバーツは創刊間もない週刊ニュース雑誌『ロンドナー』誌の編集長に栄転、『HELP!』でハーヴィー・カーツマンと仕事をしていたとはいえセミプロの域を出ないギリアム先生をアート・ディレクターに抜擢する。ギリアム先生にちゃんとした社会人への道が拓けた! だが、ギリアム先生に他人と協調し自分を抑制しなければならない大人のお仕事が務まるはずはなかった。せっかくパートナーが用意してくれた立派なポストも一年で嫌になって後先を考えずに捨ててしまう。

ギリアム先生が頼ったのは『HELP!』時代に知り合い、娘のバービー人形に欲情してコトに及ぶ父親を描いたギリアム先生作の実写漫画に出演してもらったジョン・クリーズだった。当時クリーズは『アット・ラスト・ザ・1948・ショー』と『ザ・フロスト・レポート』の二つのコメディ番組で英国TVコメディの人気者。人には独立独歩の精神を説くくせに自分が困った時には結構他人になんとかしてもらうギリアム先生である。

クリーズからケンブリッジ・フットライツ・レヴューの共同作業者でその頃はTVコメディの新進プロデューサーだったハンフリー・バークレイを紹介してもらったギリアム先生は書き溜めたスケッチ(コント)こそ半ばスルーされてしまったものの、漫画の才能を買われていくつかの番組で似顔絵描きや切り貼りアニメの仕事を任される。

と同時に、バークレイはこちらも新進コメディアン/コメディ作家のテリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、エリック・アイドルとギリアム先生を引き合わせ、これが実験的な子供番組『ドゥ・ノット・アジャスト・ユア・セット』に発展する。後にパイソンズとなる面々はいずれも英国コメディ界の革命家スパイク・ミリガンの影響をダイレクトに受けた世代。そのラジオ番組『ザ・グーン・ショー』は遠く海を越えてLAのギリアム先生も愛聴していたから、6人を繋ぐ糸は既に用意されていた。そして翌1969年、『アット・ラスト・ザ・1948・ショー』組のジョン・クリーズ、グレアム・チャップマンも合流し、伝説の『空飛ぶモンティ・パイソン』が誕生するのだった。

番組制作にあたっては合議を鉄則とする戦後民主主義の申し子なオックスフォード・ケンブリッジ組の他のメンバーと違って、スケッチを書かないギリアム先生はそうしたところに関与することはほとんどなかったし、制作会議に参加しても大声で笑って場を盛り上げるだけ。ひたすら屋根裏部屋にこもって一人で自由に切り貼りアニメを作り続けては放送当日に局に持って行くゲリラ職人、自分の思うように表現さえできれば後はどうでも構わないのがギリアム先生であり、したがってギリアム先生のパイソンズ時代の戦いは、パイソンズの飛躍と共にその表現欲が屋根裏部屋には到底収まらないほど肥大してからようやく始まる。主な敵をパイソンズとして。

VS.テリー・ジョーンズ

先ごろ亡くなったテリー・ジョーンズはギリアム先生の大恩人。モンティ・パイソンは元々『アット・ラスト・ザ・1948・ショー』組のジョン・クリーズとグレアム・チャップマン、『ドゥ・ノット・アジャスト・ユア・セット』組のテリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、エリック・アイドルの5人で何かをやれないか、というところから始まった。

5人が目指した笑いはオチから解放された好き勝手支離滅裂自由で無意味で突飛な笑い。しかしこれは同時期に始まったスパイク・ミリガンの革新的TVコメディ『Q』で先を越されてしまう。先を越されてしまった以上は同じことはできない。どうすればより刺激的なTVコメディが作れるか。ジョーンズが閃いたのはギリアム先生の起用だった。

もとよりギリアム先生の破壊的ナンセンス・アニメを高く評価していたジョーンズはギリアム先生と共に「意識の流れ」のコンセプトをパイソンズに持ち込む。オチを排したスケッチの合間をギリアム先生のシュールアニメで強引に繋げばこれはなんだか新体験。スケッチの繋ぎに困ったらギリアム先生のアニメを使えばいいのだからパイソンズの面々も好きにスケッチを書ける(といってもネタの選考は相当厳しかったようだ)。『Q』の更なる先へとパイソンズを押し進めたのはギリアム先生であり、ジョーンズだったんである。

そんな恩人ジョーンズにギリアム先生が噛みついたのは初のオリジナル・パイソンズ映画にして本格中世劇『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の撮影時だった。ギリアム先生は宗教画の世界に入り込んでしまう人だったがジョーンズには中世研究家としての顔もあり、互いにパゾリーニやボロズウィックの映画を好むなど趣味嗜好が近かった。そのことからジョーンズは『ホーリー・グレイル』撮影時にギリアムを共同監督に指名、連名とはいえギリアム先生に念願の初長編映画監督の機会を用意することになる。

ジョーンズさまさま。『ホーリー・グレイル』でのジョーンズの野心的な試みの一つはリアリティを追求するため登場人物の歯を中世らしく汚すことだったが、それが数十年後、『ブラザース・グリム』撮影時のギリアム・バトルの発端となったことを思えば、ジョーンズが映画監督テリー・ギリアムに与えた影響の大きさがよくわかる。
ジョーンズと俺はほぼ同じ考えを持っていた、とギリアム先生は述懐する。だが、とギリアム先生は続ける。実際に撮影に入ると異なることがわかった。当たり前のことを悪口のように言うのはギリアム先生のお家芸である。

ジョーンズとギリアム先生は現場で激しくぶつかった。背景よりも出演するパイソンズの演技を撮り、絵的な完成度よりも撮影を無事終わらせることを優先するプロの映像職人ジョーンズに対して、ギリアム先生は自分が納得する画が撮れるまで次に進まない。自分で俺はジョーンズより映像センスがあるんだと(例によって数十年経ってからも)言い放つギリアム先生である。もうジョーンズの撮るものがまったく受け付けない。構図なんて全然ダメだし、ロケ地の選定からして許せない。

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戦いは酸鼻を極めた。まずギリアム先生がやってきて構図や照明等々をセッティングする。それからジョーンズがやってきてセッティングを変えさせる。しばらくするとまたギリアム先生がやってきて変えさせる。戦いは深夜になっても続く。ジョーンズがラフ編集した撮影素材をジョーンズが帰った後、ギリアム先生はこっそり再編集して自分の好きなショットを勝手に入れてしまうんである(ギリアム先生はジョーンズは気付かなかったと言っているが、確実に気付いていてただ波風を立てたくなかったんではないかと思う)。ある時にはシーンの統一性のために再撮影を求めるジョーンズにギリアム先生は激高、ボートに乗って帰ってしまったことさえあった。

この時の経験からパイソンズ映画の実質的な第二弾、『モンティ・パイソンズ・ライフ・オブ・ブライアン』では監督はテリー・ジョーンズ、ギリアム先生はプロダクション・デザイン兼コンテ兼出演と役割を分担することになる。撮影は『ホーリー・グレイル』と比べて格段に順調に進んだ。だがギリアム先生は不満だった。せっかく作った(そして絵コンテにも描いたに違いない)壮麗かつカオティックなセットの一番撮って欲しい天井部分をジョーンズは撮ってくれない。ギリアム先生は陰湿かつ非道なのでジョーンズが俳優としてカメラの前に出た際、プロダクション・デザインの肩書きでありながらこっそり構図を変えて天井が映るように工作してしまう。

クライマックスの磔刑シーンに最高のロケ地を見つけたのでジョーンズのプライドを傷つけないように誘導すると、撮るには撮ったがギリアム先生が思い描いていた方向とは逆の方向から撮ってしまった。例によってその後ずっとジョーンズ演出のダメさをネチネチと語り続けるギリアム先生であったが、その度にジョーンズの演出がいかに間違っているか言葉で伝えられなかった僕が悪いんだ…と絶対に反省していない人の反省の弁を述べるのであった。

『ホーリー・グレイル』後に撮影されたギリアム先生最初の単独監督作『ジャバーウォッキー』でもギリアム先生と出演したジョーンズはクレーンの位置を巡って衝突、今度は監督なんだから黙って撮影を強行してしまえばいいのにジョーンズ案を試してみてそれみたことか! と勝手にキレる。
こうして、最後のパイソンズ映画『モンティ・パイソン/人生狂騒曲』になるとギリアム先生は吹っ切れる。その間『ジャバーウォッキー』『バンデットQ』と自身の監督作を発表し、批評的にも興行的にも上々のプロの映画監督として歩み出していたギリアム先生は、もうジョーンズにも他のパイソンズにも気兼ねする必要などなかった。

前二本のパイソンズ映画と異なり『空飛ぶモンティ・パイソン』の拡大版のような『人生狂騒曲』には『空飛ぶ』に倣って当初ギリアムが監督する数分程度のアニメが中盤に挿入されるはずだった。だがそのアイディアはギリアム先生の意向で実写短編に変更、こうしてプロデューサーとジョーンズが目を離している間にギリアム先生が作り上げたのは23分の大作短編『クリムゾン 老人は荒野をめざす』、もう中盤に差し挟むことはできなくなり併映短編として冒頭に持ってくるという大胆な構成変更をジョーンズらは余儀なくされた。

パイソンズ・インタビュー本の『モンティ・パイソン・スピークス!』には醒めたというか諦めた感がすごいジョーンズほかパイソンズと、実に嬉しそうに『クリムゾン 老人は荒野をめざす』を語るギリアム先生の温度差が残酷なまでに記録されている。

ジョーンズ:
オレたちは、もともと彼が5分間のアニメーションを作っていると思っていたんだ。彼が作っているのが、まったく別物だと突然のように知らされたのは、テリー(ギリアム)が、もう100万ドルばかり余分に予算を欲しいと言ってきた時だった。彼は、オレたちよりも巨大なセットを作っていたんだ。

ギリアム:
『ミーニング・オブ・ライフ』(※『人生狂騒曲』)をカンヌ映画祭で見た時、『クリムゾン』は大きなスクリーンによく映えて、音がビュンビュン場内を走っていたし、まるで見ている我々まで大きなフィルムの中にいるような、「まさに銀幕!」といった感覚を味わわせてくれた。しかし、それから後のスケッチの順番になると、スクリーンはテレビのようになっちまった。大きなテレビって感じにね。

パイソンズの中では最もギリアム先生の近くで仕事をし、同時に激しくやりあったジョーンズは、他の誰よりギリアム先生の本質を理解していたに違いない。こんな絶縁ものの経験の後でなおギリアム先生をリスペクトするジョーンズに、もうどうにもR.I.Pが止まらない。

ジョーンズ:
テリー・ギリアムは偉大なファイターだと思う。彼は本当にチャレンジすることが好きで、いつも現場で戦っていた。彼は、本当に戦うことによって生き残ってきたんだ。

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VS.ジョン・クリーズ

『ホーリー・グレイル』の印象的なシーンの一つであるバラバラになっても戦い続ける黒騎士はジョン・クリーズが演じている(バラバラ後は別)。『テリー・ギリアム映像大全』は原著題がギリアム先生の漫画スケッチ(絵の方)から採って『DARK KNIGHTS AND HOLY FOOLS』という。主人公の理想の姿として、あるいは主人公の前に立ちはだかる存在として騎士のモチーフが後々のギリアム映画に度々現れることを思えば、これはなにやら因果を感じるところ。

ジョーンズの場合は距離の近さゆえの対立という面があったが、クリーズの場合はギリアム先生とは完全に住む世界が違う。なにせクリーズはほんの一時期とはいえ元教師にして元弁護士、パイソンズのスケッチには会計士が登場する(そしてコケにされる)ものがいくつかあるが、これはクリーズの交友関係が反映されたものらしい。会計士、保険屋、経営者…ホワイトなカラーの人種は言うまでもなくギリアム先生の大敵である。クリーズの方はかなり上から目線でギリアム先生を可愛がってジョークのネタにしているが、ギリアム先生にとってのクリーズは倒すべき黒騎士そのものであった。

例によってギリアム先生とクリーズの衝突は『ホーリー・グレイル』の撮影で起こった。そのシーンはクリーズが書いたスケッチで、クリーズらは撮影のために泥の中に膝立ちになる必要があったのだが、画の見栄えにしか関心のないギリアム先生は光の反射や役者の立ち位置を気にして撮影長時間化、クリーズによれば4時間も同じ姿勢を続ける必要があった。

疲れる仕事は極力避ける9時5時の労働が基本スタンスのクリーズはやがてあからさまな不平不満をギリアム先生に申し立てる。「うるさい黙ってさっさと撮れ! こちとら紙切れじゃないんだ」(『モンティ・パイソン正伝』)。ギリアム先生も負けてはいない。「ちくしょう勝手にしろ、しょせんてめぇの書いたスケッチだ、おれはそれを撮ろうとしてやってんだ、それがどんなに難しいのかわかってんのかバカヤロウ」(前掲書)。

すわ喧嘩か。だがギリアム先生が次に取った行動は撮影を放棄して草むらに寝っ転がることだった。州軍で磨いたサボタージュ技術が生きた! 以降、喧嘩をすると現場を去るもしくは現場に行かなくなるというのがギリアム先生の基本戦術となる。
平和かつ大人げないギリアム先生であったが、平和かつ大人げなさではクリーズも負けてはいない。パイソンズで最も激しく火花を散らしたのは性格の真逆なジョーンズとクリーズだった。そのためクリーズはジョーンズの演出が気にくわないとその前でギリアム先生をわざと持ち上げ、ギリアム先生の演出に腹を立てると今度はジョーンズが居てくれたらなと持ち上げるのであった。極悪人である。

最初こそパイソンズにフリーハンドを与えていたBBCも『空飛ぶ』の人気が爆発的なものとなった第三シーズンになると内容に介入するようになる。つまりは検閲。いくつかのスケッチのセンシティヴな言葉(マスタベーションとか)が問題になり、ギリアム先生のアニメもその毒牙にかかる。そのひとつが牧師が電話すると電話線の先で何体ものキリストが電柱に磔刑に処されている、というもので、これが再放送時に検閲に引っかかった。

ギリアム先生はこの件をクリーズがBBCと共謀して行ったと考えた。ある時は「ジョンが裏で糸を引いたんじゃないかと感じた」(『モンティ・パイソン正伝』)と語り、ある時は「そのネタを切るのを実行したのがジョンだと、オレには伝わっている」(『モンティ・パイソン・スピークス!』)と語る。クリーズの方はBBCに協力こそしたものの自分からそんなことはしないしその権力もないと語っているのでギリアム先生説の信憑性はだいぶあやしいが、ギリアム先生が相当な不信感をクリーズに抱いているということはよくわかる。

だが不思議なことにもギリアム先生とクリーズはどこか通じるところがある。二人ともタブーなしの風刺を積極的に仕掛ける人種であるし、それに『空飛ぶ』第四シーズンに参加しなかったクリーズはパイソンズを抜けた最初の一人だったが、後のパイソンズ映画ではいずれも参加しているように、パイソンズを共同体ではなく運動体として捉えているところがある。そこで面白そうなことができそうなら喜んで中に入るし、そうでなければ入らない。自分の表現欲求を満たすためだけにパイソンズとして活動したギリアム先生とはスタンスがまったく違うようで、コインの裏表なのだ。

VS.マイケル・ペイリン

YMOで言うところの高橋幸宏、パイソンズの和ませ役マイケル・ペイリンは温厚な人柄で知られるが(だからこそ激情家のテリー・ジョーンズとコンビを組めていたんだろう)、そのペイリンをクリーズに「あんなものはこれまでの人生で一度も見たことがなかった、ぼく(ペイリン)が本気で怒ったのもはじめて見た」(『モンティ・パイソン正伝』)と言わせるほど激怒させたのもギリアム先生だった。

やはりというかそれも『ホーリー・グレイル』の撮影現場でのことで、泥食い男を演じたペイリンは泥の中を這いずり回って泥に似せたチョコレートをひたすら汚く食う(でも、チョコと泥をどう見分けたらいいんだ? とペイリン)芝居をしていたが、8回やってもギリアムはOKを出さない。そのシーンにはクリーズとチャップマンも出ていたのでクリーズが理由を尋ねるとギリアム先生は「君たちはいいんだが、どうしてもマイクの背中が入らない」(『モンティ・パイソン正伝』)。こんなに真面目にやったのに入ってなかったのかよ! その場で駄々っ子に暴れて泥をまき散らすペイリンにクリーズとチャップマンは唖然、拍手を送ったという。

VS.エリック・アイドル

もともとアイドルはパイソンズの一匹狼、『ドゥ・ノット・アジャスト・ユア・セット』時に最初にギリアム先生と仲良くなったという以外、チャップマンともどもギリアム先生とのあまり目立ったエピソードは持たないが、ギリアム先生は見境がないのでそんなアイドルでも敵に回す。

『ライフ・オブ・ブライアン』には最終的にカットされた「オットー」の場面がある。そこに何が映り込んでいたかといえば、ギリアム先生デザインの鉤十字と十字架をミックスしたようなダビデの星。ラフ編集を見たアイドルはこれは面白くないんじゃないかと考えた。それでカットされたということは他のメンバーもある程度面白くないことに同意したんじゃないかと思われるが、ギリアム先生ともなるとやはり視点が違う、カットの理由をギリアム先生は(その当時アイドルが住んでいた)ハリウッドのユダヤ人への配慮だと語っている。

もちろんアイドルは否定しているが、っていうか鉤十字と十字架をミックスしたようなダビデの星て。ギリアム先生が本当にやばいことをするときはいつもこっそりやる。
※ちなみに『ホーリー・グレイル』の試写で客の芳しくない反応に直面したギリアム先生は鬱モードに入ってしまい、アイドルかチャップマンが映画の出来に腹を立てて出ていったと語っているが、アイドルは誰もそんなことはしていないとこちらも否定している。パイソンズ時代にギリアム先生が学んだのは職場放棄のほか、真偽不明の怪情報の流布という更なる闘争戦術であった。

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VS.プレイボーイ・クラブのオーナー

それまでの『空飛ぶ』スケッチを新規に撮り直したベスト盤的な内容でしかないとはいえ、『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』は最初のパイソンズ映画としてパイソンズに映画の道を切り拓いた重要な一作だ。その重要な一作の企画を持ち込んでお金を出してくれたのがロンドン・プレイボーイ・クラブのオーナー、ヴィクター・ロウンズという人物。同年にはロマン・ポランスキーの『マクベス』も製作しているからこの人この時ノっていた(『アンド・ナウ』もポランスキーに監督の打診があったという)

ロウンズは単に金目的でパイソンズと接近したわけではなく自身パイソンズのファンであり、ギリアム先生のアニメーションも大好物だったようだ。その愛ゆえかギリアム先生の制作パートに干渉したらしく、創作に干渉する者は誰でも敵なギリアム先生は(とくにどのように名前を出すか指示を受けていなかったという理由で)どうもタイトル中のロウンズのクレジットをひどくみすぼらしいものにしてしまったらしい。ロウンズは怒り、結局別の人間にクレジットを入れ直させたという。

VS.ABC放送

パイソンズ人気がいよいよ沸騰してくるとアメリカのABC放送が『空飛ぶ』に目を付けた。BBCから放映権を買ったABCはこれをズタズタに再編集してCM込みで放映、これでは番組の狙いが伝わらずパイソンズの株まで下がってしまう。放映中止を求めてパイソンズ代表でアメリカに飛んだのはギリアム先生と後に『未来世紀ブラジル』で拷問役人を演じることになるペイリンだった。

ここでパイソンズとギリアム先生を救ったのはまたしてもジョーンズだった。『空飛ぶ』放映に際してパイソンズとBBCが交わした契約書にジョーンズは「パイソンズの承諾を得ずに内容を削除できない」といった条項をねじ込んだ。これを盾にペイリン&ギリアム先生はABCとの闘争を開始したのである。

パイソンズとABCの交渉は決裂、事態は法廷闘争に発展し長期化すると共に放映権を販売したBBCやBBCとABCを仲介したテープ販売会社も加わって複雑化、最終的にパイソンズは訴訟を取り下げる代わりに『空飛ぶ』の全面的な著作権をBBCから勝ち取ることに成功する。ギリアム先生の闘争史においては貴重なハッピーエンドだが、しかしギリアム先生に声がかかったのはアメリカ国籍を持っている(=訴訟を起こすことができる)ためだったので、どちらかといえばこれはジョーンズとペイリンの勝利と言うべきだろう。

ギリアム先生が法廷で戦えるわけがない。ギリアム先生が戦えるのはもっと小さなところだ。ABCとイギリスのATVが共同製作したコメディ番組『ザ・マーティ・フェルドマン・コメディ・マシーン』にアニメーションで参加した際、放送コードの厳しいアメリカでも放送されることから古典絵画のヌードを含むギリアム先生の切り貼りアニメは修正を求められたが、その判定を下した放送コード審査部の女性をギリアム先生は陰でたっぷり毒づき、後々のインタビューでもいかに彼女がデブで欲求不満そうだったかネチネチと語るのであった。人としての株は下がるが、ギリアム先生はギリアム先生だなと安心させられるエピソードである。

VS.ジョージ・ハリスンのマネージャー

その物議を醸しそう感が全開の内容から資金集めが難航していた『ライフ・オブ・ブライアン』を救ったのはパイソンズに惚れ込んでいたジョージ・ハリスンと当時のマネージャー、デニス・オブライエンだった。二人は『ライフ・オブ・ブライアン』を完成させるべくハンドメイド・フィルムズを設立してパイソンズと関わりを深め、ギリアム先生の出世作『バンデットQ』もオブライエンがハンドメイド・フィルムスで製作することになる。

こちらも出資者が思うように集まらなかったことからオブライエンはハリスンと共同で所有するビルを抵当に入れて自己資本で予算を組んだ。絵に描いたようなギリアム先生の踏み台であり、踏み台のルートは決まっている。
オブライエンがジョージ・ハリスンの楽曲で本編に彩りを添えようとしたことからギリアム先生はオブライエンを敵認定、『バンデットQ』の英国での興行的失敗(意外なことにアメリカでは大ヒットした)をオブライエンがパイソンズ風に売り込もうとしたからだと断言し、後々パイソンズがハリウッド・ボウルでライブを行った際には当時パイソンズのマネージャーになっていたオブライエンが資金を使い込んだために予定のギャラがもらえなかったとギリアム先生は愚痴っている。

誰々が金を使い込んだ! は以降ギリアム先生の決め台詞になるから、オブライエンは『バンデットQ』のみならず武闘派映画監督としてのギリアム先生のひな形も作り上げたと言えるのかもしれない。かくしてギリアム先生は逃走から闘争へ路線チェンジ、次の長編映画『未来世紀ブラジル』で武闘派監督のイメージを決定づける戦いに身を投じるのであった。
ちなみにオブライエンはその後、ハンドメイド・フィルムスの経営を巡ってハリスンと裁判沙汰になっている。

【だいたい網羅】奇才テリー・ギリアム闘争史!(その3)に続く…

2020/2/7追記:VS.ジョージ・ハリスンのマネージャーの項すこし書き足しました。

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ギリアム先生は不満タラタラですが自分の発案で自分で作った変な宇宙人と宇宙船出したりして好きにやらせてもらってるんだからある程度は満足しろよお前マジでって思いますよね。内容はもう、テリー・ジョーンズの代表作、人生の傑作。

↓参考にしたもの

テリー・ギリアム―映画作家が自身を語る
テリー・ギリアム映像大全
バトル・オブ・ブラジル「未来世紀ブラジル」
モンティ・パイソン・スピークス!
モンティ・パイソン正伝
モンティ・パイソン大全 (映画秘宝コレクション)

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