映画感想『ちいさな英雄 ~カニとタマゴと透明人間~』

《推定睡眠時間:0分》

ポノック♪ ポノック♪ ス・タ・ジ・オ・ポノック♪ …とかいう木村カエラの歌うスタジオポノックのテーマ曲で強制幼児退行。『ポノック短編劇場 ちいさな英雄 ~カニとタマゴと透明人間~』です。
いいよね短編アニメのオムニバス。夏といったらやっぱまんがまつり的なやつですよ。俺の世代だとまだギリ映画館でやってましたからね『地獄先生ぬ~べ~』とか『ゲゲゲの鬼太郎』とかね。映画ドラえもんも併映で30分のドラミちゃんものとかドラえもんズものが付いていたし。

そういう興行形態の復権っていうのが狙いとしてあったんだろうなぁ。子連れの親に訴求するノスタルジー商売といったらそれまでかもしれませんがいやでもなぁ、いいんだよなぁこれぐらいの上映時間とこれぐらいの物語。
サクッと見れる気軽な映画が今は映画館に少ないからどんどんやってくださいお願いしますですよ。そこがまず良いところだったなこの映画。なにか悪意なきディスを自分で感じなくもない書き方だが別にディスじゃないですが…。

一話目、『カニーニとカニーノ』。語感からイタリアの人の話かと思ったらサワガニ兄妹の話。カニーニはにぃになんですよあははーなるほど。じゃあニーノはなんなんだよ。カニーモだったら妹っぽい響きなるのに…でも郷土B級グルメとか漁師飯っぽくなるかカニーモだと。蟹芋…。

そんなことはどうでもよいがこのサワガニ兄妹と両親は擬人化されていて、先端にカニバサミの付いたモリで餌の小魚を獲る。あれ便利そうでしたね。何に使うかと言われても答えに窮するが一家に一本置いておきたい感じ。ドンキで売ってるかな。それもどうでもよいか。

お話はこの兄妹の父親が濁流に流されてどっか行っちゃったんで兄妹がミニマム冒険に出るとこういうもの。
最初はこっちもサワガニ目線で世界を見てるからだいぶスケール感が縮小されており兄妹が冒険に出るや広がる世界の巨大さにびっくり! したかと思ったらその後すぐ終わってしまったので案外小さくなった甲斐がなかった。

小さな英雄の小さな冒険だから別にいいのか。その巨大な外の世界がサワガニ世界に突然入ってくる感じとか小さなワンダーを感じたし、あと水の表現が綺麗だったのでよかったです。
ちなみに最大のびっくりポイントはカニーニとカニーノは擬人化されているが他のカニは単にカニっていう。そこは違うんだ。

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それにしてもフル表記のタイトルが長い映画。頭のポノック短編劇場を取ってもまだ長いし、あとカニとか透明人間が小さな英雄というのは感覚的にわかるがタマゴはなんのことやらわからない。
二話目の『サムライエッグ』は冒頭からちょっとへぇってなった意欲作っぽいやつで、小児科の経口免疫療法病室から話が始まる食品アレルギー題材の生活ドラマ。それでタマゴか。主人公の少年はタマゴアレルギーなのだった。

短編アニメオムニバスの良いところの一つはこういう長編映画だったら企画段階で弾かれそうな題材でもわりと持ってこれる(これそう)っていうところだなぁとしみじみおもう。
いい話なんですけどこれで二時間とかキツいし、見る側も。主人公の少年がアナフィラキシーショックに襲われた時のアニメ的恐怖表現とかも短編だから生きてくるっていうのあるんじゃないすかね。

アイスに突き刺さったスプーンがゆっくり倒れていく場面、何気ない日常の一コマのはずがとっても不穏。ちょっとしたホラー映画みたいな演出。Jホラー的な。
食品アレルギーの人の恐怖というのは日常生活に潜んでいるわけだからそれをこういう風に表現するっていうのすげぇ良いと思ったな。

息子の食品アレルギーに神経を尖らせる母親の心情とかも繊細なタッチで描かれていて。少年の取るに足らない反発とかっていうのもその取るに足らないところに切実なリアリティがあって。
なんかネタバレになりそうですが病を本人とか家族の心の持ちように還元したりだとか安易に克服したぞ的な展開にしたりだとか、そういう雑な収め方をしないのも真摯な感じで好感度めっちゃ高い。

これは面白かったし良い映画だったなぁ。これは、と言うとまた間接的な一話目ディスになりかねないがぶっちゃけ一番心が跳ねなかったのは一話目なので今度はディスがちょっと入っている。

三話目。『透明人間』。自動車販売店勤務の透明人間の話。先ごろクロス・ホエンに入られたハーラン・エリスンのSF短編『聞いていますか?』がなんかこんな話だったと思うのですが、書いてしまってもそんなに知名度の高い短編ではないだろうからネタバレには当たらないだろうたぶん。
それに、これでネタバレと思うようなSF脳だったらそもそも誰もネタバレしなくたって勝手に内容を察してる。

三話の中ではこれが一番フックがあったように思う。だって透明人間ですから。ビジュアルがまず目を引くし、描かれるの透明人間の日常ですし。おもしろいよね。あと音楽が中田ヤスタカだ。これも、ノれる。
『透明人間』と言いつつ『フランケンシュタインの花嫁』もちょっと入ってる。市川崑的なというか石井隆的なというかなクレジットの字体もなんか独特なので作った人の拘りっつーか趣味っつーか美学がハッキリ出てる系。スタイリッシュでユーモラス、かつ透明人間の見えない背中に漂う哀愁がなかなか沁みる映画だった。

以上、かんそうおわり。日本中のみんなが見ているに違いないスタジオポノックの『メアリと魔女の花』も米林宏昌の他のやつも実は一本も見ていなかったのでどんなもんやスタジオポノックと思っていたのですがー、存外おもしろかったので次も見たい感じになりましたね俺は。

【ママー!これ買ってー!】


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別にポノックとは関係のない映ドラの併映短編集ですがアララはドラミちゃんものの傑作だし結婚前夜はみんな知ってるあれだしオカシナナもドラえもんズの個性がよく出ていてって感じでどれもおもしろい短編だったので…。

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