カモンベイビーアメリカ映画『検察側の罪人』感想(多少ネタバレある)

《推定睡眠時間:0分》

臭ぇなおい! 臭い! 映画オタクの臭いがぷんぷんしてやがる! バターの! メリケンの! 欧米映画の! 憧れが! 強すぎる! 強すぎる! ガワだけあくまでガワだけ!
なんとなくビックリマークを超連打したくなる台詞が絶叫系映画なのでついそんな書き方をしてしまうがそれにしても『検察側の罪人』というタイトル、なんか知らんけど比喩的な意味合いかなぁと思っていましたが(冤罪とか)検察側も罪人だったのでそのまんまだ。

それも贈収賄とか証拠の揉み消しとか見た目に地味なやつじゃなくて殺人の下手人。エリート検事の木村拓哉が裏稼業系の人・松重豊の手を借りてどうも担当する事件の真犯人っぽい大倉孝二をぶっ殺すのですがその松重豊が超有能。
キムタクの手を見て「この手に合うのはベレッタか○○か…」とおもむろにスマートフォンを取り出すと電話一本で拳銃と車と殺しをスマートにサポートしてくれるボンドガール的凄腕女性アシスタントを手配してくれる。

なにそれっておもう。良し悪しは置いておくとしてそれはかなり想定外じゃないですかね。超有能なんですよマジで。
警察からもヤクザからも追われる大倉孝二をうまいこと人目につかないところに逃がしてキムタクに殺させてあげて初めての殺し(銃殺)の疲労でつい殺しに使った車を犯行現場に置き忘れてきちゃった!
と焦るキムタクに対して松重豊はこうです。なぁに、私が処理しておきました。こんなこともあろうかと車に発信器を…007かよ。

こんなの出てきちゃったらぶっちゃけミステリーもなにもないよね。っていうか実際ミステリーもなにもないよ真犯人わりとすぐ分かっちゃうんだから。
あんまスリル的なものもないよ松重MI6出てきちゃったんだから。松重MI6に対抗できるだけのサポートスタッフ持ってないんだからキムタクに対する二宮和也。
っていうか別に闘おうともしないんだよ。キムはキムのやりたいことやってニノはニノのやりたいこと別々にやってるだけなんですよ。

じゃあなんなんだよ。なんなんだって映画オタクのダメなところだけ煮詰めたようなやつですよ…。
洋画のこういう場面とか台詞カッコイイよねっていうのをひたすら、ひたすらパッチワークした。それでその上にありきたりな社会風刺とジャポンの右傾化と政治腐敗を乗せて容赦なく世相を斬ってしまう反骨の俺的なやつで味付けた。

きついじゃない。絶対きついやつじゃないそれ。事実きつかったのである俺は。これはなんというかストレートな反戦メッセージも含めてマイク水野の『シベリア超特急』がいちばん近い映画なのではないかと思われたが、シベ超と違ったのは監督の凝り固まった映画愛で客を圧迫するばかりで、同じような映画愛の押しつけといってもマイク水野のような柔軟性や包容力はないのでこれはちょっと愛せないですね…。

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でその映画オマージュがっていうか洋画オマージュが一周して厨二化してるのがまたきつくて、監督の原田眞人は歳だから絶対ゲームとかやらないしラノベとか読まないしアニメとか漫画とか基本見ないと思うんですけど、この映画章立てされていてですね、映画が始まると「一章:言葉の魔術師《The Magician》」のテロップと一緒にタロットの絵が挿入されるっていう。

ほらもう早くもやばいとこ入っちゃった。そりゃあ原作ものだから原作がそうなのかもしれませんが撮り方ってものがあるじゃない。
こんな趣向だせぇにも程があるし大体この題材にしてアルカナ章立てってもう絶対ジャッジメントとフールに続くじゃん。俺はハングドマンまで行くかと思いましたがそこまで行きませんでしたがでもそう自然と読むじゃん今の若い人は、タロットとか超ベタなサブカル小道具だから。

なんか洋画に倣って気を利かせたつもりなのかもしれませんがそんなもん今更やってもな。陳腐じゃない。今もうアニメとかラノベとかその陳腐をパロディにして遊ぶ段階も過ぎてあえて意図的なダサさとして取り入れるぐらいなところまで行ってるじゃん。
そういうのを原田眞人は意識してなくて俺センスだと思ってるっぽいのがきついんだよな。
なんか良い感じの店とかたくさん出てくるんですよ。高級店でござい的な。そのベタな…紋切り型なハイソイメージというのも…うわアニメっぽいなって…とかなるんだよ観てる間ずっと、いちいち。

ストーリーは随分と錯綜していてっていうかシベ超的に関心のあるものを片っ端から盛っていて、本筋は金貸し殺しと犯人捜しの裏で密かに進むキムの私怨絡みの冤罪計画でしかないんですが、そこに例の右傾化&政治腐敗とか松重MI6とかボウリング拷問ヤクザとかインパール作戦の記憶とか検察内部告発本で一山当てようとする人とかキムに憧れるニノとか家に帰るとカミさんが二胡弾いてるキムの家庭問題とかニノと検察事務官の恋愛とか検察事務官の過去だとか弁護士の偽善とかカークラッシュとか舞踏とかなんでそんなところでやっているのかよくわからないストリート大道芸とかそれからキムが陥れようとしている性犯罪の前科持ち野郎のそれはそれで悲惨な境遇がとかおい盛り過ぎだろどう考えても!

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でそのすべてが薄っぺらいというかあまり有機的に結びついているようには思えないのだけれども洋画的ケレン、洋画というかほぼアメリカ映画の意匠、アメリカ映画のオマージュと憧れで隅から隅まで塗りたくられていて、そのくせアメリカ映画の十八番的な裁判ものの展開には一切行かなかったりする(検事なのに)のだからよくわからないが、ともかくUSAの嵐、老齢のオタク語りは色んな角度からそれなりにつらいというのは確か。今更カモンベイビーアメリカはねぇだろと思うがいや別にそんな台詞が出てくるわけではないのですが…。

荒川中州のロケーションとかいいっすけどねぇ。でもあの背の高い草むらの中で荒川に向かって歌を歌う少女とかいう絵とか不自然極まりないと思うのですが無理がありすぎると思うのですが洋画的な絵が欲しいからの一点で押し切った可能性があるのでそういうところなんですよ映画オタクのダメなところは!
言えば言うほど自分に怒っているように感じられてくるのでその意味でもつらい。

追記:殴り書きのようになっていて酷かった気がしたので少しだけ書き直しましたが直しながらふとシドニー・ルメットのバイオレンスコップ映画『Q&A』なんかネタ元なのではないかと思い当たった。刑事ドラマの印象があったがあらすじを読み返すと新米検事補と悪徳刑事が各々の正義を巡ってVSする的なことが書いてあるのでとてもそれっぽい(『検察側の証人』は検事VS検事ですが)
『Q&A』はおもしろかったからじゃあ『検察側の証人』がなんであれだったんだろうとおもうとあれかな爆破かな。良い爆破シーンがあったんだ『Q&A』には。『検察側の罪人』にはなかったんだ爆破が。あの別荘爆破したらよかったのに。映画は爆発だ。

【ママー!これ買ってー!】


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正義の在り方がどうとか反戦がどうとかカッコ良さげなことを言っているが、スターも揃えてそれなりに体裁を整えた上で、その安全圏からそんな威圧的かつ紋切り型のメッセージを発せられてもうるせぇバカってなもんで、客に笑われるのを承知で徒手空拳、大好きなアメリカ映画のオマージュを通して愚直にシンプルに戦争はこんなに悲惨なんだと客に語りかけるマイク水野の姿勢はそんなものよりも遙かに響くのだ。

…それで実際に見てつまらなかったとしても俺の責任じゃない。

↓原作

検察側の罪人 上 (文春文庫)

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通りすがり

木村は原田監督からトゥルーディテクティブのマコノヒーを参考しろと言われたそうで…

まあそういう意味でもカモンアメリカンな感じですね

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