空想科学映画『シン・ウルトラマン』素人語り感想文

《推定睡眠時間:0分》

ウルトラマンは全然見たことがないので俺とウルトラマンの接点といえばスーファミで出てた『ザ・グレイトバトル』シリーズか中島義道がいつもの愚痴本で引用していた中野翠だかの「男の子はウルトラマンのように感情を殺して戦うヒーローに感情移入しないといけないから大変そう」みたいな感じの一文ぐらいしかないのだが、『ザ・グレイトバトル』ではロアかガンダムかライダーばかり使っていたしってそれは要するにウルトラマンだけ操作キャラとして使ってなかったということなのだがそういう具合で中野翠の引用文というのも(これツイッターで能町みね子が言ってたやつだっけ?)ってなるぐらいには記憶が定まらず、ようするにぜんぜんウルトラマンとかかわりのないじんせいでした。

だいたいウルトラマンってなんか気持ち悪いじゃないですか。大仏みたいで。おれ大仏も苦手なんですよねなにあれ。あの螺髪とかいうイボイボとかあのなんとも言えん表情とか。きっとさ大仏作った人はさこれ一応信仰の対象だからっつって鑑賞者が畏敬の念を抱けるようあえてちょっと怖く造形したと思うんですよね。じゃあウルトラマンは? ウルトラマンもやっぱあれじゃねぇかなほら一応怪獣と戦う存在じゃないですか。戦う存在だからかわいい顔してたらダメだよね怪獣にナメられちゃう。ウルトラマンは戦士だしその金属的な質感と流線型は兵器も思わせる。なら気持ち悪くて正解だ。

それでふと思い出したのだがあったわ俺とウルトラマンの接点。昔ボンボンに載ってた『ウルトラ忍法帖』読んでたわ。あれ面白かったな。ボンボンらしい尖ったギャグが随所にあったしウルトラマンが二等身ぐらいになってて服も着てて目もちゃんと描いてあってかわいかったからっていうのも相当でかい。思えば強そうなもの、威圧感のあるもの、あるいは(同世代の中でそうとされている)カッコイイものと昔から縁遠かった。ウルトラマンは見てないし仮面ライダーも見てないし戦隊ヒーローにも怪獣映画にも興味がない。ま子供の頃はね。今はまぁなんでも観てみようかという大人の超余裕がありますから映画館でやってればわりと足を運びますし昭和ガメラも大好きですしってほらやっぱり三つ子の魂百までだよ! カッコよくはないもんね昭和ガメラもね! どっちかって言えばバカバカしくて笑えるとかそっち系だもん! それが昭和ガメラ好きな理由だもん! あと怪獣も異星人もなんかお茶目!

違うんだろうな。そういうことじゃねぇんだよって特撮オタクとかは思ってるわけだろうたぶん。「男の子はウルトラマンのように感情を殺して戦うヒーローに感情移入しないといけないから大変そう」の一文を俺が覚えていたのもやっぱ頷けるところがあったからなんだよ。俺はさそこには感情移入できなかったわけ。で『シン・ウルトラマン』は感情移入できまくる人が作った映画です。もうなんか、なんとなく言いたいことわかるでしょ?

まぁいろいろ思ったんですが、タイプの勢いに任せて抽象的な話を先にすると、兵器に感情移入するオトコノコって要するに右翼だよね。でこの映画はこれは公開設定だからネタバレじゃないですけど怪獣が日本にだけ来るんですよ。日本にだけ怪獣が来るから日本にだけウルトラマンも来るの。あぁもうわかりやすいなって思うよねその構図。日本はつまり世界でもっとも理不尽な災害に見舞われる国なわけで、だからこそ人類を先導する神の力を天から恵みとして与えられるわけで、それを災害対応で培った現場力でもって見事に操縦することもできます。うわぁ「近代の超克」みたい! いやまったく今時こんなにストレートな右翼寓話もロシアぐらいにしかないよな。日本バンザイですよ。日本サイコー日本スゴイ。カミカゼ!

こうした調子は『シン・ゴジラ』の時もあったけれども『シン・ゴジラ』の場合は日本映画離れしたスペクタクルに加えて上等なサスペンスや細かいことは長広舌で煙に巻く台詞のマジックで少なくともちょっとぼんやりしたそこらへんの人には嗅ぎつけられない程度に誤魔化せていた。今回はどうなんでしょうねぇ。今回は『シン・ゴジラ』にはなかったちょっとしたお色気要素があります。そのお色気要素にもし嫌悪感を覚える人がいるとしたらその人には半分嗅ぎつけられてるんじゃないですかね。俺がその理由をがんばってコピペして書かないでも右翼の思い描く理想の世界が男の眼差す男中心の世界であることは誰にだってわかるでしょうから。この映画のお色気には右翼的なメンタリティが透けて見えるんだよ。

実際この映画は配役の推定9割が男で占められた超男ばかり映画である。ことに政治家連中ときたらおそらく一人の例外もなく全員男なのであったがこれは元祖『ウルトラマン』の時代に敬意を払い…という演出意図ならそれこそ隠しようもなく復古主義であるし、そんな意図はなく単に「俺たちのイメージする政治家」をいろんな役者にやってもらったら結果的に全員男になった、という場合でも結局同じことじゃないだろうか。

政治の話になってきた。じゃあ政治の話をしよう。ここで描かれる「政治」は『シン・ゴジラ』同様のリアルポリティクスであり、こういう状況になれば政治力学によってああなるだろう、ああなれば政治力学によってこうなるだろう、こうなれば政治力学によって…が延々と機械のように続く運動である。しかしリアルポリティクスの「リアル」とは何か? 怪獣とウルトラマンとかいうリアルのカケラもない状況に対して「リアル」ポリティクスなど本当にあり得るのだろうか? むしろかような予測不能な状況にあってその予測不能性を取り入れることこそ文字通りの意味でリアルポリティクスなのではないか?

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予測不能性、言い換えるなら政治的な意志決定のリアルなプロセス。スケールでかめの政治決定が次々と下されるこの映画ではあたかも野党や国民など存在しないかのようだ(これは『シン・ゴジラ』も同じ)。そりゃ日本が独裁国家でかつ常時怪獣有事ならこんな透明かつ迅速な意志決定もあり得るだろうが腐っても民主主義国家のジャパンでそれは無理だろ。俺は『大怪獣のあとしまつ』を世間の五割増しぐらいで評価しているがそれはあの映画が茶番を演じているようで(演じているが)意志決定のプロセスを『シン・ゴジラ』やこの映画と違って小馬鹿にしつつもしっかりと描いていたからだ。

『シン・ゴジラ』がリアルじゃない政治をリアルに見せた迫真のファンタジー映画だとすれば『大怪獣のあとしまつ』は極めてバカバカしい茶番であると同時にリアルな政治を身も蓋もなくリアルに描いた政治風刺劇であり、だからこそ特撮オタクどもは徹底的に叩きやがったんである。リアルなど見たくないのがオタクというものだ! こうしたオタク・メンタリティも右翼メンタリティに通じるもので、さすがに最近では少数派だろうとしても海外のCG怪獣にはない着ぐるみ怪獣の美点をやたらと語りたがる特撮オタクなどというのは界隈の定番キャラである。

その気持ちもわからないでもないが金がないからしょうがなく着ぐるみで怪獣をやっていたというリアルを反転させて金がないからこそ優れた表現が生まれた的なファンタジー美談にすげかえる操作は客観的には現実逃避でしかない。右翼もオタクもやっていることは同じなので自然と結びつくのだ。合言葉は「俺たちは虐げられているが、だからこそ素晴らしい!」。ここまできてようやく『シン・ウルトラマン』は右翼寓話である論に回帰できたのでこの話はもうやめにしよう。

ストーリーについて。あんまり詳しく言うとこれから観る人の興を削ぐことになるのでざっくり言うが基本『シン・ゴジラ』みたいなドミノ倒し展開。でも『シン・ゴジラ』みたいに面白くないのはたぶんリアリティがないぶん危機感も感じられないから。しょせん虚構の世界とわかって一歩引いたところから眺める形になるのでそうなるとドミノ倒し展開が単に無味乾燥なだけに見えてしまう。オタクは一歩引いたところから過剰に散りばめられた引用ネタを楽しめばいいが俺みたいにそうじゃない人にはだからなにって感じ。俺だって『ウルトラQ』ぐらいはわかるけどな!

キャラクターについて。単純に魅力がないがそれはおそらく脚本も悪いが実相寺昭雄スタイルを採用した構図重視アングル重視のカメラワークのせいもかなりあって、ドラマ的な画を作らないからキャラクターの個性が伝わってこない。タメを入れない庵野的な編集もそれに拍車をかける。あと怪獣はあえてCG臭さを残した質感にしてるんだと思うんですけど、そのオタク的な表現のこだわりで逆に怪獣のキャラクターが埋没してないか。

バトルについて。いやバトル全然おもしろくないだろなんだよこの淡泊さは! 怪獣プロレス的な!? オマージュとしてあえて怪獣プロレス的なわびしさを出そうとしたの!? それもこの監督脚本コンビならわりとあり得そうだけどそこは職人になって普通に手に汗握るバトルにしてくれてもよかったんじゃないのか!?

奇妙さについて。すごいへんな映画です。この変さはおそらく確信犯的なもので特撮シリーズとしてのウルトラマンじゃあなく『ウルトラQ』に続く空想科学ドラマとしての『ウルトラマン』を現代の技術で作ってる。とくにあれがああなってあーってなる中盤以降の展開とか演出はそう。で、それがちょっとおもしろい。俺はウルトラマンには興味がないが『ウルトラQ』は面白がれる人間なのでこういう変なのは好きなんすよね。

とりあえずの結論。だからたぶんあれだよこれはさ変な映画として面白いんですけど変なお話を『シン・ゴジラ』的なリアル路線のファンタジーに乗せようとして失敗してるんだと思うんですよね。一方に非現実を超現実に見せる『ウルトラマン』の世界があって、もう一方に非現実を現実に見せる『シン・ゴジラ』の世界があって、その融合を目指したら非現実が単なる非現実にしか見えないなにやら乾いたファンタジーになっちゃって、そしたら日本特撮が元々帯びていた、けれども特撮が超現実や現実に見えている間は隠されていた保守性や右翼性が、非現実の空間の中で露呈してしまった(それでもオタクの目には見えないらしいが)

そういう映画なんじゃないかなこれは。散々文句言ってますけど話の種になるから嫌いじゃないよ俺は。異臭も個性だ。臭いは臭いが。

【ママー!これ買ってー!】


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いきなり『大怪獣のあとしまつ』を推しはじめて「すわステマ刺客か!」と驚かれた疑り深い方もいらっしゃるかもしれませんが『シン・ウルトラマン』と『大怪獣のあとしまつ』を両方とも観た人なら俺がここで『大怪獣のあとしまつ』を推す意味もわかるはずだ。示し合わせたんじゃないかってぐらいキレイに裏表の関係になってるんだよこの二作は。どっちも岩松了が政治家役で出てるし。

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堕つつ
堕つつ
2022年5月17日 2:44 AM

パシフィックリムってやっぱり偉大だったよなって思うんですよね。
あれもオタク絶賛のディティール映画だったしデルトロの原風景は同じく日本の特撮なんでしょうけど、映画に対する眼差しが違い過ぎるというか。パンズラビリンス撮ったりナイトメアアリー撮ってる監督なんだから格が違うのは確かだとしても。シンウルトラマン観て心底楽しめた人って居るんでしょうか笑
メタ的な観方が出来る特撮オタクだってちょっとキツイと思いますよ。
万人を楽しませる必要なんて全く無いけど、ここまで閉じた作品も凄いなって感じました。
大怪獣のあとしまつ観てみたくなりました〜

堕つつ
堕つつ
Reply to  さわだ
2022年5月18日 3:21 PM

平成ガメラは自分も子供の頃3作全て映画館で観ていて、特に印象深いのはオフクロに同行してもらって観に行ったレギオン襲来なんですけど。
なんて面白いんだよって、小学生の自分が熱狂してる横で特撮なんて子供騙しと思っていたであろう母親が鑑賞後大絶賛していたんですよね。
あんなに一般層、マニア向け、子供受けとバランス感覚に優れた特撮映画はそれまでにもそれからも無いんじゃないですかね。
それに比べてシンウルトラマンはどうだ…って思うのは仕方無いですよね。
期待して観に来たキッズやら付き添いで来ていたオバハンを楽しませてくれる映画なのかよこれはって笑
パシフィック・リムを観ていてたチビッ子達はやっぱり鑑賞後盛り上がってましたから…

パン毒
パン毒
2022年5月18日 2:53 AM

正直期待せずに鑑賞したので意外と楽しめましたが、「商業映画」として見るとやっぱり歪なバランスで出来た作品なんですよね。そりゃ賛否あるよなって感じで‥

~ネタバレと長文失礼~

自分は子供のときに親の影響で昭和ウルトラマンを見てて、今のシリーズは見てません。それ込みの感想です。

まず題材がウルトラマンの時点でリアリティラインはゴジラよりも低いんですよ。だって怪獣と宇宙人が戦う話ですよ、画面いっぱいの大乱闘を見せるだけで満足じゃないですか。説明も基本設定だけで充分だと思うし。でもそうしない、派手に戦わず設定もリアル路線。
きっとこれって脚本の庵野さんの気質なんですよね。オタク的というか、”ウルトラマン”というコンテンツへの自己解釈がちゃんとあるタイプ。
シン・ゴジラの時は”ゴジラ”というコンテンツには少し距離を置いてて、だからこそ大スペクタクル作品として成功したんですよ。ただ今回は自分の解釈をふんだんに取り入れてて、だからこそのバランスの悪さというか、公式なのに二次創作的な作品になったわけですよ。↓

パン毒
パン毒
Reply to  パン毒
2022年5月18日 2:59 AM

オタク的なのは良い所でもあると思うんすね。
例えば、外星人パート(ザラブ、メフィラス)なんかはやりたい事が明確で、結構好感が持てたんすよ。メフィラス星人役の人がかなりのハマり役だし。それに斎藤工もウルトラマンとしてそこに存在してたんですよ。
最後のゼットンパートもアプローチが良くて、日常に戻るシーンなんか個人的に大好きなんですよね。雑誌ネタのゾーフィも嫌いになれなくて。というか”そこ”です。この作品全体にイースターエッグ要素が散らばってて、そこを楽しむ奴です。
(ガボラとパゴスは同じ着ぐるみ、最初のウルトラQネタ等)

勿論、オタク的な所が悪い方に転がってる箇所もあって。
やっぱり禍特対メンバーの記号的なキャラの描き方はどうしてもノイズにはなってて、特に長澤まさみがね。 尻叩くのはまぁいいとして、巨大化の際のアングルは「ウルトラマンを現代にリバイバルさせる」という作品の意図に合ってないんじゃねぇかなと。というかウルトラマンに元々そういう要素はない訳ですよ、匂いの件も含めてノイズにしかなってないんですよね~
他のメンバーにも気になる箇所が多かったですね。ピー音とか。↓

パン毒
パン毒
Reply to  パン毒
2022年5月18日 3:05 AM

まぁ作品全体としては「面白い」というより「興味深い」なんですよね。こういう解釈も有りか、みたいな感じで…
好きか嫌いかじゃなくて、ここは好きだけどここは嫌いみたいな。映画館を出たあとファミレスとかで友達とワーワー言うタイプの映画でした。

追記 
長文乱文を垂れ流して申し訳ないです
ウルトラマンという作品に子供の頃、熱中していたオタクなのでつい文章にも熱が入ってしまいました。
荒らしみたいになってたらすいません。

りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
2022年5月24日 6:29 PM

あの世界でジャミラ出してほしかったです。