【ネッフリ】『バード・ボックス』感想文(ネタバレ大注意)

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『ハプニング』です。もう一行目からバラしてやる。M・ナイト・シャマランの『ハプニング』の色んな意味でびっくりな焼き直し。
なんで今更かって思うしそのアイディア二度は使えないだろって思うし。しかも『ハプニング』より抽象度が下がってオチに説教が付いたから台無し感あるし。
意味わかんないじゃんそんなの。まさか映画に関わった誰一人として『ハプニング』を見ていなかったとでも言うのか。そんなわけはないと思いたいのですが…。

『ハプニング』との違いと言えばせいぜい定型的で面白くもない寓話的な色合いが多少加わったぐらいだろう。
サンドラ・ブロックは妊娠中。相手とは色々あったりなかったりしたらしいがまぁそいつのことはどうでもいい。世界が、突然、理由もなくぶっ壊れてしまったからだ。
いったい何が人々にそうさせているのかは不明だが、風と光に乗って外界を満たす何かを見た人々は狂う。狂って目的なき破壊行為や自傷行為に出る。

で、どうもこの人らにとってはその何かがたいそう美しいものと見えるので、クローネンバーグの寄生虫ホラー『シーバース』じゃあないが、この美しいものをみんなに見せてあげようってんで外の何かから必死に逃れようと家にこもる人々を襲ったりもする。
襲うってカーテンをシャーって開けたりするとかですけどね。それで中の人ウワァァァってなる(引きこもりか)

…という世界崩壊模様をこの映画は半回想形式でやっていて、外の何かを見ると狂うから目隠ししたまま決死の川下りに突入する(川下には避難所があるとの無線情報を得たため)サンドラ・ブロックとまだ幼い二人の子どものパート、それからなぜそうなったかっていう経緯にあたる多人数籠城ドラマのパートを交互に見せていく。

この構成の創意のなさ、すごくない。いや俺が言いたいのは『ハプニング』と『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』+『ゾンビ』をバカ正直にくっつけただけじゃんとかそういうことではなく(それも言いたいが)、昨今の世界崩壊系ジャンル映画でこの半回想パターンどれだけ見たと思ってんだよっていう…。
別にジャンル映画を作るにあたって必ずしもジャンル映画を勉強する必要はないと思いますけど、これ結構豪華な俳優揃えているから金はあるんですよ。

その金があるんなら多少は先行作品を勉強してさぁ、その上で何ができるかっていうシナリオ開発の部分にもっと力入れてもよかったんじゃないすかねぇ…。
これじゃあ本当にもうよくあるソフトスルーの未公開映画なんですよ。それも見終わって金返せよクソッてなる系の…まぁこういうの、Netflix映画のお家芸ですけどね!(とはいえ、似たようなストーリーのNetflix映画でも『すべての終わり』なんかは面白かったので、単にこの映画がつまらないという話ではある)

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いかん、貶しが高じて寓話的云々から話が逸れてしまった。一応そこはこの映画のオリジナリティだから…いやそれも本当は疑義があるんですがひとまずオリジナリティということにして、目隠ししたたま川下り、なんか寓話っぽいですよね。なにについての寓話だかはわかりませんが寓話っぽい装いというのがアメリカ映画では重要だ。

二人の子どもを連れてサンドラ・ブロックは川を下る。手にした箱には鳥数匹。この鳥は発狂者や外の世界の魔を感知するとチュンチュン無く崩壊世界の炭鉱のカナリヤ。同じようなアイディアは映画版『サイレントヒル』にもあったが、まぁそれはともかく。

川を下った先には鬱蒼とした森。サンドラ・ブロックと子どもたちはこの森で「声」の攻撃に遭う。この「声」は聴いた人間の心に最も深く食い込んだ誰かの声で現れる(ゾンビ映画でよくある親友や恋人がゾンビ化して云々的なあれだ)
それまで風とか光の形象で表現されていた魔が今度は声で来ちゃった。もう設定の整合性もクソもないな。なんでもいいのか。本当にお前らはジャンル映画を…いやまぁそれはいいとして!

攻撃をくぐり抜けた先には果たして避難所があった。その避難所とは盲学校。大事なことだから二回書くが、その避難所とは盲学校であった。
かなり控えめに言ってバカじゃねぇかと思う。だってですね、これはあくまで『ハプニング』の場合ですけど、あれは正体不明な脅威が正体不明なまま収束して、いつかまだ訪れるかもしれないけれども正体不明だからそれを予期することはできないし防ぐこともできないっていう、すごい抽象的で原初的な恐怖を描いた映画だったわけじゃないですか。

『バード・ボックス』はじゃあなに、結局目が見えなければいいの? っていう…。でも奴ら声で襲ってきたじゃんとか思うんですけど、まぁそれを抜きにしてもさぁ、理解できないものの恐怖が雲散霧消してしまうよねこんな場当たり的でアホみたいな教訓的ハッピーエンド持ってきちゃったら。
だいたいお前ら盲人をなんだと思ってるんだ。俗世間と交流を絶って森の奥に住まう叡知に富んだ盲人ってそんな盲人がそうそういるか。モーガン・フリーマンぐらいだろその役をやっていいのは。
山手線の駅でも行けば盲人そこらへんで普通に白杖持って歩いてるっつーの。盲人に目の見える人間への戒めを託すとかどんだけ野蛮人の発想よ。

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もうげんなりですよ色々と。久々に酷いNetflix映画を見たよ。でも面白いところもあって、それは一応書いておきますが籠城パートね。籠城パート面白かった。
なにせ俳優を揃えてきてる。ジョン・マルコヴィッチは説明不要でしょうが、『サイタマノラッパー』のアメリカ版みたいな貧乏ラップ映画『パティ・ケイクス』のラッパー志望女ダニエル・マクドナルド、『メイズ・ランナー』シリーズで2作目からのヒロイン役だったローサ・サラザール、『ムーンライト』で大人形態の主人公を演じたトレヴァンテ・ローズ 、そして『ゲット・アウト』の面白黒人リル・レル・ハウリー!

どうですかこの顔ぶれ。サンドラ・ブロックとジョン・マルコヴィッチを支柱にしてフレッシュな若手注目株勢揃いって感じじゃないですか。
このアンサンブルは面白かったですね、うん。各々にちゃんと見せ場あるしね。スーパー勤務のネット終末論者兼自称小説家とかいう凄まじい設定のリル・レル・ハウリーなんて爆笑ですよ。「俺が書いてるのは『メイズ・ランナー』とか『ハンガー・ゲーム』みたいなガキ向けじゃない本格派なんだよ!」お前そう言ってる横に『メイズ・ランナー』の映画版出てた人いるぞ!
こんな映画でもきっちり笑いを取ってくるリル・レル・ハウリー、立派の一言。

映画のトーンはシリアスそのものなんですが、俺はリル・レル・ハウリーの面白演技も結構そうなんじゃねぇかなぁと邪推するのですが、監督の(脚本家はもしかしたら違うのかもしれない)意図せざる笑いというのが結構あったように思う。
外を見ると狂う。でも食料尽きたから近くのスーパー行きたい。どうしよう。そうだ、ワゴン車のウィンドウを黒く塗ってダンボールで覆って外が見えないようにしよう! 「運転はどうするの?」「カーナビがあるじゃん!」

バカだろ。いや、良い意味でっていうことですが。こんなの下らなくて笑っちゃうもの。
スーパーでの買い物天国はゾンビ映画の定番場面。原作者と脚本家、やっぱり変形ゾンビ映画のつもりで書いたんじゃないですか。
特に脚本家のエリック・ハイセラーはリメイク版『エルム街の悪夢 』を手始めに『遊星からの物体X ファーストコンタクト』『ライト/オフ』『メッセージ』と、もうジャンル映画一本槍の人なので。

でもそのゾンビ映画的、ジャンル映画的意匠をたぶん監督のスサンネ・ビアは基本的にヒューマンドラマ系の人なのであまり理解していなかった。
その齟齬がこういう結果を生んだんじゃないかなっていう風に思いますが、真相不明。別に、興味もない。

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作る前にこれぐらいは見ておけよスサンネ・ビアお前! っていう映画二本。本当は二本どころではないです。つかジャケ絵似てるな…。

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