映画の感想『サッドヒルを掘り返せ』

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セルジオ・レオーネ畢生の大作西部劇『続・夕陽のガンマン』のクライマックスに登場する円形墓地の野外セットを1966年の撮影時と同じ場所に同じように再現してしまおうという映画マニアの愛が爆発したドキュメンタリーなんですけどやべぇ『続・夕陽のガンマン』観てねぇ。っていうか遠い昔にチャレンジしたが30分ぐらいで中断してしまった…。

たぶん今観たら面白いと思うんですけどその頃レオーネの西部劇ハマらなかったんすよね、なんか。真面目っつーか。あと長いし。
アメリカ製の西部劇でもイタリア製の西部劇でもジャンル映画としての西部劇って基本90分くらいじゃないすか、『西部開拓史』みたいな例外もあるにしても。『続・夕陽のガンマン』劇場公開版で162分とかあるもんな。そりゃ長いよ~。

という俺みたいな人間にとっての取っかかりはポスターに書いてあったスペインの奇才アレックス・デ・ラ・イグレシアの出演だったのですが、観て驚く出演シーン約2分。それはもうポスターに書いちゃいけないレベルだろう。しかもイグレシア、このサッドヒル復活プロジェクトには絡んでいなかった(※どうも無事掘り返されたサッドヒルでの『続・夕陽のガンマン』野外上映会のイントロダクションとしてエンニオ・モリコーネやジョー・ダンテなんかのインタビューと一緒に流された映像っぽいが、未確認)

にも関わらずイグレシアが持ち出された理由は円形墓地のセットが組まれたのが『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』の舞台となったスペイン南部のなんとかというところだったからだろう。『サッドヒルを掘り返せ』、ある意味『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』の変奏ドキュメンタリーだった。

マカロニ・ウェスタン華やかなりし頃にそれはもう大活躍したスタントマンたちも今は寂れたウエスタン村で働きながら酒とかつての栄光に浸るだけの日々。その一人はクリント・イーストウッドのスタントは俺がやったんだぜと言っているが誰も相手にしない。あぁあの頃が懐かしいなぁ。このまま俺たちは惨めに死んでいくのだろうか。

とそんな折、ウエスタン村の土地買収計画が持ち上がる。ついにその時が来てしまったか…落ちぶれスタントマンたちは銃を手に立ち上がる。たとえ作り物だとしてもこの町だけが俺たちのリアルなんだ。この町が死ぬ時が俺たちの死ぬ時だ!
マカロニ・ウエスタンという模造品が本物のウエスタンになる瞬間。スタントマンという代用品が本物の西部劇スターになる瞬間。映画という一時の現実逃避に過ぎないものが、紛れもなく現実を凌駕する瞬間だった。

命を投げ打ってマカロニ魂を守ろうとしたガンマンたちの祈りが通じたのか、『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』のラストにはクリント・イーストウッド(※)が登場する。
予告編にもそのシーン入ってるからもう言ってしまうが『サッドヒルを掘り返せ』もラストの野外上映会に『続・夕陽のガンマン』の主演であったクリント・イーストウッドその人がビデオメッセージで出てくる。

50年も前の撮影セットをアマチュアの映画マニアたちが手弁当(途中からクラウドファンディングとかしてたっぽい)で再現するのはバキボキ骨が折れることだし、大体そんなことをしても大した得もない。
それでも『続・夕陽のガンマン』の世界に自分の手で触れてみたかった映画マニアたちの前にイーストウッドが降臨する瞬間、すっかり荒れ果ててとてもそこでマカロニ・ウエスタン史上の傑作が生み出されたとは思えないぺんぺん草の生える赤茶けた原っぱは、確かに『続・夕陽のガンマン』の円形墓地になったのだ。

泣ける話だなぁ。今度観よう、『続・夕陽のガンマン』。『続・夕陽のガンマン』の撮影裏話ドキュメンタリー的な側面もあったので。

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これはまた更に長い178分バージョンらしい。

500