こう見えて爆破とパッション映画『悪夢の系譜』感想文

《推定睡眠時間:40分》

はいまた出ましたね「伝説の」的な惹句のリバイバル映画! リバイバルというかこれは日本だと『デッドライン 「恐怖の極限」とは何か?あるホラー作家の衝撃の体験!』みたいにビデオスルーだったのがウン十年を経て劇場初公開というパターンかもしれないが、まーしかし近年リバイバル上映がブームとなって何度「伝説の」映画に騙されたかわかりませんよ! こちらにしても分別をわきまえた立派な大人であるから「伝説の」映画が本当に伝説であることは「伝説の」映画が100本あっても1本もないぐらいのことはわかっているが(「伝説の」なんて冠をつけていいのは戦火などで散逸したと考えられていたフィルムだけだ!)それでも「あの伝説の……」などと煽られれば騙されたくなってしまうではないか! そこまで織り込み済みで観に行っているなら文句を言うな! まぁそれもそうだな……。

といって別にこの映画『悪夢の系譜』、つまらなかったわけではぜんぜんない。そりゃ「伝説の」的な惹句はもちろん誇大広告だとしてもなかなかユニークで面白かった。ただその方向性である。『落下音』とかもそうだが最近の配給会社はいかにも面白そうな予告編を作るのが本当に上手くなった……この映画も今回の劇場公開に際して作られた日本版の予告編を観るとたとえば映画なら『ジェイコブス・ラダー』とかゲームなら『サイレントヒル2』とかああいう現実と虚構の区別がつかなくなってやがて妄想が現実を侵食していく……みたいな映画に見え、その恐怖演出はどこか『シャイニング』も思わせるところがあったから、ホラーを高学歴ホラーと低学歴ホラーに分けるとすれば、これは高学歴ホラーだろうと俺に予感させたのである。

ところが実際にお出しされた『悪夢の系譜』はなにやらベケベケいうシンセ音がド派手に鳴り散らかし恐怖演出はデデーンと出てぐわーみたいなダイナミックさでそして最後はちょっと引くぐらいのものすごい火力で建造物が爆破されて終わった……と頭の良いシーンもありつつ全体のトーンとしては低学歴ホラー寄りである。そして重要なのは、これはオージー・ジャッロとでも言うべきジャンルで、厳密にはホラーとはちょっと違う映画であった……。ジャッロ映画大好きなのでそんなの全然構わないし、オーストラリアといえばサスペンス大国、『パトリック』でお馴染みリチャード・フランクリンを生んだお国であるから、この映画もまたそうした流れの1本と捉えることができるかもしれない。最初からそのつもりで観ていればなぁ。もっと素直に面白がれたような気がするのだが。

興行は水物、とにかくお客さんに来てもらわないことには始まらないのだから各社あの手この手でこの映画はこんなに面白いんだぞとアピールするものである。その事情はわかるのだが、結果、あくまでも個人の体験としてはその映画との良い出会いとはならないこともまぁあるよな、とかなんかそんなことを思う『悪夢の系譜』なのであった。逆に公開&ビデオリリース当時アクション映画として宣伝された『アムステルダム無情』なんかはもしリバイバル上映の機会があるなら今度はジャッロ映画であることを全面に出して売ってほしいものだ。なんの話だ。

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