欲望解放系ホラー映画『テルマ』の感想

《推定睡眠時間:冒頭20分》

そうと思えばなんとなくタイトルもそれっぽい響きを帯びてくる80年代的ファンタ系SFXホラーの現代アップデート版みたいな映画で、そのへんのサブジャンルにはあまり明るい方ではないが『カサンドラ』とか、『パトリック』とか、『ザ・センダー』とか…あぁあと『フェノミナ』とか。

『キャリー』は76年か。まぁでもこの映画にも影響は与えてるだろうから強引に80年代枠に押し込んでしまおう。
見ながらそういうのを連想したと言えばほら、不思議と無味無臭のこの人名タイトルもいかにもそれっぽく思えてきませんか。

最初の20分ぐらいは疲労のため睡眠。主人公のテルマがレズビアンの同級生とバレエ?公演みたいのを観に行くところで目を覚ましたがあまり説明の多い映画ではなかったので話を理解するのに少し骨が折れた。
どうもこのテルマという女子学生の人は敬虔なクリスチャンのようだ。レズビアンの友人と関係(わりと清いめ)を持ったテルマの心象風景は口に入ってくる蛇。好きは好きだが内心では葛藤が吹き荒れているらしい。

でこの葛藤をテルマは癲癇発作のようなものを伴う特別な方法で無意識的に解消してしまうのですが、その方法というのがえらい迷惑なもので、もう『フェノミナ』とか『パトリック』とか書いちゃったので半分ネタバレですがテルマが強く念じると何かが起きるわけです、何かが。

その何か、テルマの持つ力というのは前述80年代的ファンタ系SFXホラーの露悪的な見せまくり演出を一回転させたような、あえて見せないことで静かな恐怖を喚起させるタイプの演出が施されていたので好悪はともかく絵的にすごい地味だったのですが、どっこい最後まで見たらなんかアメコミ系スーパーヒーロー映画の第一章みたいなところに着地したので地味どころか『パトリック』みたいなやつより遙かに大スケールであったよ、物語的には。

最初はノルウェーの憂鬱雪景色で背景を塗ったニューロ系の心理ドラマから始まって(いや俺そこ寝てたから違うかもしれませんが…)それから80年代的ファンタ系SFXホラーを経てスーパーヒーローっていう展開おもしろかったっすね。
俺はそれほど映像表現とか役者の人の演技とかに惹かれるものはなかったんですけど仄めかしと省略多用のミニマム映像美学は小綺麗な感じでよかったかもしれない。

欲望の解放はスーパーパワーの解放。意外と、後腐れがない感じの晴れやかな映画だった。

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『パトリック』とかは一旦忘れて最近の映画だと『スプリット』が結構テイストが近かったかもしれない。

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