ヘッドギアで和気あいあい映画『機動警察パトレイバー EZY File 1』感想文

《推定睡眠時間:0分》

前に誰かがパトレイバーシリーズはレイバーのいる世界という大枠の中で制作に関わる各人がそれぞれ好き勝手にやりたいことをやるシリーズみたいなことを言っててなるほどそれは言い得て妙だなと膝を打った。もともとメディアミックス作品だし中心にはゆうきまさみの漫画と高田明美のキャラクターデザインとかあるのかもしんないですけど脚本の伊藤和典、監督の押井守、メカデザインの出渕裕って重なるところはあっても個人的な趣味としてやりたいことはみんな違うよね。TVアニメ版(観たことないけど)にしたってゆうきまさみの漫画からは離れてるかもしれないし。

そういう良い意味でも悪い意味でも同人サークル感みたいなのがたぶん制作集団ヘッドギアの作ったパトレイバーの特徴だから押井守が他のヘッドギアメンバーを入れず単独で実写版パトレイバーを監督した時には多少なりともヘッドギアの面々は気を悪くしたようで、数年前にこの『EZY』が押井守以外のヘッドギアのメンバーをスタッフとして始動した時には意趣返しにしか思えず他人事ながらもう~みんな仲良くしなよ~とか思ってしまった。しかし完成したこの『FILE 1』を観て一安心、ヘッドギアのみなさんと押井守は昔はケンカもしたかもしれないが今は仲が悪いわけではないらしい、ということが最後まで観ればわかる。

なぜならそこで伊藤和典と出渕裕が主要スタッフ……ではないのだがまぁなんというか生みの親に近い形で関わった押井守のある映画、ちなみにこの映画は世間的にはガッカリ作として扱われているが俺はクリス・マルケル風の映像エッセイとして傑作だと思ってるのだが、これをパロディ化してツッコミを入れるというシーンがあって、そのパロディは押井守に許諾をもらいましたというクレジットがエンドロールの最後の方に目立つ形で入っていたからだ。ある映画と言いつつここまで書いてしまったら何の映画だかオタクには完全にわかってしまうわけだが、まぁそれはともかく、こんな内輪ウケのお遊びを入れているということは険悪な仲ではないだろう。色々あったかもしれないが押井守もヘッドギアもみんなもうジジィである。ジジィ同士でいがみ合ってもしょうがないし、ま、昔のことは水に流して仲良くやるか、みたいな友情感は第1話でも示されていたので、なんだか観終わってイイ話だな(作品というよりそのバックストーリーが)と思わされるこの『FILE 1』であった。

さて『FILE 1』というのは『EZY』は全8話でそれを3部に分けて公開しているので今回はその第1部ということ。8話を3分割しているので今回は20分程度のエピソードが3つ入ったパッケージなのだが、ここから察せられるように『EZY』はどうやら劇場用アニメではないようだ。エンドロールを見ていたら制作委員会にU=NEXTが入っていたので、おそらく元々はU-NEXT独占配信用のアニメだったんだろう。この制作委員会には松竹も入っていて、最近の松竹は新作テレビアニメの先行上映会とか総集編上映会とか劇場用アニメ以外のアニメの興行をよくやってるから、どうせ作ったんなら劇場公開しましょう、それからU-NEXTさんで配信しましょう、そうすれば宣伝にもなりますし、とおそらくはこういう感じである。

なにせ3つの劇場版がどれも違うベクトルで傑作なのでパトレイバーの映画と聞けばそのクラスのものを想像してしまうのはせんないことなのだが、最初に映像化されたパトレイバーはOVだったんだし、『EZY』も往年のOVAのノリを一応今っぽい感じに多少アレンジしてやってるので、これはたぶん「パトレイバーの映画を観るぞ!」みたいなノリじゃなく、本来であれば家でダラダラしながら流し見するような作品なんだろう。家で適当に笑いながらダラダラ観るように作られてるからぶっちゃけレイバー戦闘とかほとんどないしお話の捻りも少ないしでそんなに面白くない。けれどもそれなりには面白い。俺パトレイバーシリーズはそんな観てないですけどあぁ最初のOVAパトレイバーこんなだったなとか思いましたよこれ観ながら。まぁようするにそういうやつだこれは。あんまり面白くないというのは刺激少なく安心感があるとも言えるので、なにも悪い意味じゃない。

ただあんまり面白くないのはいいんですけど、今回は最初のパトレイバーから数十年後の世界が舞台だからレイバー隊のメンバーは整備顧問のシバシゲオを除いて全員交代、その新メンバー紹介がどうもあまり上手くいってないように見えたのにはちょっとだけ困った。それは第一に新メンバーは常識外れの人が旧メンバーに比べて少ない……というかいないからで、旧メンバーはもっとマンガ的というか、昭和ギャグマンガ的だったから味付けが濃くてすぐ顔と名前が覚えられたんですけど、今回は昭和マンガ感なくリアル(?)路線だからパッと顔と名前が覚えられない。加えて第二に、総監督・出渕裕の演出は少しメリハリが弱くてフラット気味なので、ストレス無くダラッと観ていられるという点ではいいんですけど、どうしても場面やキャラクターが強い印象を与えてくれない。

新メンバーも一人一人みれば良いキャラで、とくに今回第二小隊隊長・佐伯貴美香を筆頭に女性陣が光っていたから、もう作り終わっちゃったものにそんなこと言ってもしょうがないんですけど、第2部と第3部ではもう少し新メンバーが印象に残るようになってくれればいいなぁとか思う。個人的には伸長180センチのボーイッシュ色黒健康体・柚木八久万が好きなので柚木さんがんばってください。デカい女の人は常に正義なのだ。

Subscribe
Notify of
guest

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments