たぶんお蔵回避映画『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , , ,

《推定睡眠時間:45分+もっと寝たかった分》

難病や重度の障害を抱えた人々およびその家族に「安楽死は幸せ」の甘言を弄し自殺幇助的嘱託殺人を行う猟奇殺人犯ドクター・デスの殺害手口はまずチオペンタールを投与して患者を半昏睡状態にしたのち塩化カリウム投与で心停止という比較的一般的な(?)ものであったがチオペンタールと塩化カリウムの組み合わせから俺の頭に浮かんだのは一般的な方ではなく、オウム真理教が起した凶悪犯罪のひとつに数えられる假谷さん拉致監禁事件においてその主犯格に当たる井上嘉浩が従来チオペンタールの複数回投与により麻酔状態が長く続いたことでの過失致死とされていた假谷さんの死因を死刑確定後の2011年になって翻し、麻原からポアの命令を受けた共犯者の中川智正による塩化カリウム投与が死因であると証言したことであった(中川と他の実行犯は否定)

そういえば白衣を着て現れる(なぜそんな目立つ格好を?)ドクター・デスの白髪交じりの後ろ姿はオウム医師にして地下鉄サリン実行犯の林郁夫を思わせるところがある。林郁夫はチオペンタールを教化補助兼自白剤として用いたナルコ(のちには電気ショックも加えて記憶を消去するニューナルコも)の実行者であるが、チオペンタールのナルコ的利用も映画の中でドクター・デスは行っていたのであった。

偶然というかもはや妄想的こじつけであるが、とはいえ令和になっても未だ消えぬオウムの影、自分たちの都合でしかないのにあくまで被害者のための殺してるんだという麻原の説いた慈悲殺人の精神は昨年のALS患者嘱託殺人事件の犯人コンビにも垣間見ることができるわけで、その事件を思い起こさずにはいられない『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』は日本が克服したと思い込んでるだけで別に何も克服してないオウム的なるものを2020年に引っ張り込むのであった。

引っ張り込むのがオウム的なものだけならよかったのだが90年代的なセンスも一緒に引っ張り込んでしまった。さて、さて、さて…これは一体どうしよう。無駄に声がでかいだけの熱血上司、とりあえず走って近所の人に聞き込みをするだけの無能捜査、バカみたいなタイミングで高らかに鳴り響く大仰な劇伴、杜撰にして記号的ないてもいなくてもいいキャラクター群、インスタントで安っぽい画作り、狂った人は狂った顔で狂ったことを言う的な恥ずかしい猟奇殺人者イメージ、陳腐の消費期限すら過ぎてしまって逆に歴史的価値を帯びた伝統的テレビ刑事ドラマ台詞の数々、すべてがご都合主義の上に全部を口で説明してくれるのできわめて脳にやさしいながら見推奨の展開…なにこの90年代刑事ドラマ感! 沙粧妙子! 俺こういうの『沙粧妙子 -最後の事件-』で観たよ!

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出たよ邦画の十八番テレビドラマのサイレント映画版。タイトルだけだと劇場版とか付いてないからテレビドラマの続きだってわからないで観ちゃうやつね。テレビドラマの映画版だから演出脚本全部テレビ準拠。それ久々に食らったわー。いやーきつかったなー。俺映画観るつもりで映画館入っちゃったからなー。しかも嘱託慈悲殺人の題材から座間首吊り連続殺人事件とか相模原障害者虐殺事件みたいなのを想像してたからなー。まー確かにタイトルの「-BLACK FILE-」の部分がちょっと怪しいなとは思ったけどねー。でも映画観ようと思って完全にテレビドラマのしかも火サスみたいの始まっちゃったらダメージでかいよ。アメリカだったら暴動だろこんなもん。全然面白くないので奪うものがないが…。

45分も寝たのに起きて腕時計を見たらまだ40分ぐらい残ってる。絶望したね。もう一度寝ようと頑張って目をつむったのに眠れないし、目つぶってても全部台詞で説明してくれるから展開わかっちゃって腹立たしい。時計を見る度に10分ずつぐらいしか進んでないからもう俺にチオペンタールを投与してくれと思ったほどだ。いいよこんなのドラマ版のファンだけ観りゃいいじゃん。素人が映画版から急に観ても面白くないよキャラクターも知らないしお約束も知らないし。

だ、が。公式サイトとか見るとなんかどうもテレビドラマの映画化じゃないっぽい。『BLACK FILE』という綾野剛と北川景子の刑事ドラマがあってその最終回的映画版が『ドクター・デスの遺産』なのだろう…『真夏の方程式』みたいな感じで…って思ってたのでいささか面食らう。うそ? あり得るの? このクオリティでメジャー配給の劇場用映画が? クオリティはともかく演出のトーンは完全にクソダサテレビドラマなのでにわかに信じがたい。

そこで閃いたのだがもしかしてこれ、日テレ制作だし元々は嘱託猟奇殺人をネタにした1クールのテレビドラマだったんじゃないだろうか。ALS患者嘱託殺人事件が報じられたのは去年11月のことだから偶然そこと撮影タイミングが被っちゃって撮ったはいいがこれ放送できないだろってことになって映画として再編集…みたいな。結構ありえそうな話じゃないすか? っていうかそうとでも思わないとやってられないだろこんな映画。

まぁテレビドラマの総集編として観たら! それでもお世辞にも出来のいい映画とはまったく思えないが! そこそこ面白く観られる可能性がないわけではない。北川景子スタイル良いしね! パンツルックのクールな北川景子はスクリーンでは厳しいがテレビサイズに脳内変換すれば実に映えますな~。綾野剛の野良犬刑事っぷりもよいですね~。頑張って褒めてる。俺頑張って褒めてるよこれでも。死んで良い命はないし公開されなくて良い映画もないんです。『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』は俺には糞みたいな映画だけれども糞としか思えない映画でも誰かにとってはきっと大事な宝物。

よかったですね無事劇場公開されて。俺に言えるのはそれぐらいだ。あと何か言おうとすれば「その人は何者ですか?」「その人は…ドクター・デス」みたいな会話があるがその流れでドクター・デスって言ったら「ドクター・デス」なのか「ドクターです」なのかわかんねぇだろ仮に元がテレビドラマだとしてもバカじゃねぇのかそれぐらい考えろよとか基本的に全部悪口になるので封印します。

【ママー!これ買ってー!】


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『沙粧妙子』だってスクリーンに投影したらとても観ていられないとは思うがテレビで観る分には面白いので、『BLACK FILE』もテレビなら案外普通に観られるのかもしれない。それにしても1995年放映の『沙粧妙子』は今観ると笑ってしまう古くささだが(俺がDVDで初めて観たの去年とかである)似たような題材の『ケイゾク』はその4年後の放映なのに今でもそれなりにカッコイイのでいかに『ケイゾク』が斬新だったかという…関係ないが!

4 Comments
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匿名さん
2020年11月14日 7:50 PM

この映画の原作は、刑事犬養隼人シリーズというシリーズの4作目なんですよ。だから、主人公達が何の説明も無く登場してるんだと思います。ちなみに他の刑事犬養隼人シリーズは、2015年にドラマ化されてるそうです。
映画の内容については、なんか見てて出演されている方が可哀想でした。

匿名さん
Reply to  さわだ
2020年11月14日 11:53 PM

なるほど、ドラマとは出演者が違うんですね。勘違いしてました。だとしたらこの映画かなりアレですね。