しょせんテレビドラマだしな映画『太陽は動かない』感想文

《推定睡眠時間:20分》

「あの藤原竜也に今度は爆弾が埋め込まれる…!」的な特報が面白かったし藤原竜也がでけぇ木箱を突き破って出てきて「連絡もできずにすいません!」って言う予告編も面白かったのでそういうやつだとしか思えなかったわけですがそういうやつといえばそういうやつではあってもなんか俺が思ってたのと方法性とだいぶ違った。

うーん、真面目。そしてベタ。まぁでもそうだよなって思うよ日本映画だもん。テレビドラマの劇場版だもん。俺はもう騙されないから大作サスペンスアクションとかを謳う日本映画に。奴ら絶対に入れてくるんだよ、無駄にナイーブでセンチメンタルなヒューマンドラマ要素。なんでそういうのがそんなに好きなの君たちは。えぇ? アクション映画っつったらもうずっとアクションだけやってりゃいいじゃない。ダメなの? なんか子供の頃の泣かせる感じの回想とか入れないといけない法律とかあるの? 生きることとは云々みたいなメッセージ性とかないとダメ?

いや別にそういうの入れてもいいけどなんていうか物語のクライマックスを明らかにそのナイーブかつセンチメンタルかつヒューマニスティックなドラマに置いているからそこはちゃんとアクションにしろよって思うじゃないですか。アクションの味付けにヒューマンドラマを入れるのとヒューマンドラマの味付けのためにアクションをやってるんじゃ映画として全然違うじゃん

ちょっとこれはドラマ成分が多すぎだな。ヒューマンドラマ成分も多いしテレビドラマ成分も多い。せっかくの迫力あるアクションシーンもテンポと緊張感を削ぐドラマパートの執拗な挿入で台無し…とまでは言わないが、今ひとつ盛り上がらないのは間違いない。なにせまぁヒューマンドラマに力点を置かれると「あぁこの主人公はこのアクションシーンでは死なないんだろうな」とか思っちゃうからね。

もちろんアクション映画の主人公が普通は早々死なないというのはよほどのキッズでもなければだいたいの人は知っている。でもハリウッド映画とかの緊張感溢れるアクションというのはそうだなぁ、なんというか…ドラマパートで描かれた主人公のキャラクターや設定上の伏線なんかをアクションシーンでちゃんと生かすんですよね。ドラマとアクションが分離してなくて強固に結びついてるから逆にドラマを意識しないでアクションに集中できる。これとか典型ですけどテレビドラマの劇場版系のアクション日本映画ってそこを分けるんですよ。

アクションはアクション、ドラマはドラマって明確に切り分けていて、実際にそうなのかそれとも業界人の思い込みなのかは知らないですけど観客はアクションよりも登場人物のゆくえとかアイドル俳優のドラマ芝居に興味があるからっていうのが俺が考えるその理屈。アクションとドラマが融合するとそれがじっくり見れなくなっちゃうんですよね。変な話だけど!

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最初なんか結構期待したけどなー。胸に爆弾の埋め込まれたスパイを抱える産業スパイ組織AN通信とかいう厨二設定は文字にすると恥ずかしいだけだがその成り立ちを解説するアバンタイトルはなかなかセンスが良くてですね、テレビドラマ系の日本映画ってテロップのフォントとかホントに雑ですけどこれは新聞みたいなフォントがニュースフィルムに乗る。かっこいい。

でそれから舞台は何の説明もなく東欧ブルガリアに飛びます。そしたらそこになんらかの悪い組織に拉致拷問されてるAN通信の諜報員・市原隼人がおる。なんだろーこれはなんだろーなーとテレビドラマ版から観ている観客ならあーはいはいあれねとなるに違いない展開をテレビドラマ版未見の俺が不思議に思いながら眺めているとこれまた何の説明もなく(テレビドラマの方で散々してるからね)市原隼人を救出しに藤原竜也が窓を蹴破って飛び込んでくる。

強襲、救出、そしてサポート役の部下・竹内涼真も巻き込んで追ってきて悪い奴らとカーチェイス開始。ちょっとショボい気はしないでもないがまぁでもいいだろう。このへんは邦画アクションではあまりお目にかかれないダイナミックなミリタリー系アクションになっており、何の説明もなく(まぁだからテレビドラマ版を見てない俺にとっては、なんだけど)始まるところも含めてスリル満点。これは素直によい。市原隼人の扱いもナイス。

しかしだ。なっちゃうんだよねこのアクションシークエンスが終わると結局いつもの「テレビドラマ」に。ストーリーもキャラクターもベタにベタベタ、ディティールなんか客は観ねーよ式のざっくらばん加減にはいつものことながら呆れる。俺はそれをあえてのテレビ的ベタとして楽しめるほど大人ではない。藤原竜也と竹内涼真の乗ったヘリが墜落したら画面が暗転して次のシーンでは二人ともなんでか大した怪我もなく生きてるとかめちゃくちゃ納得いかねーって素直に思ってしまう。死ねや。いや別に死ななくてもいいですが死ななくてもいいんですが死なないなら死なないでその理屈はちゃんと付けてくれませんかね…って思うんだよ俺は! もうテレビドラマ映画にも慣れただろと思っても未だに!

まぁね、いいんじゃないすか。基本的にテレビドラマ版を見てる人のための映画なわけでしょ。じゃあいいんじゃないすか。なんか藤原竜也と竹内涼真のウェットな演技もじっくり見られますし(最後はまさしく「ウェット」なのだ)話も頭使ったりしませんしキャラクターも徹底的に浅くてね…この浅いっていうのは単純っていう意味なのでいかに苦悩を抱えたりしようがその苦悩の内容と表現が陳腐ならば浅いのです。テレビドラマだったらやっぱそういう方が楽に見られるからいいよ。女スパイの壇蜜みたいな仕草のベタさとかもう昭和ー! とすら思いますがテレビドラマは昭和でいいんだ、どうせ視聴者も高齢化しとる。今更ね今風な感じの人物造形とかやられても視聴者の脳ついていけませんよ。おいテレビドラマの視聴者をバカにしすぎだろお前! すいませんでした。

爆弾を埋め込まれたことで1日1日を生きることの尊さに気付く藤原竜也。イイハナシダナー。あれでしょそれで視聴者も私も毎日生きててよかったなって思うわけでしょ。いや俺はそこまで視聴者単純じゃないだろと思うけれども俺が書いてるわけじゃないんだからさこの映画の脚本は(『予告犯』とかの林民夫)。もうそういうの脱してもいいんじゃないのって思うし要所要所のアクションは本格的でテレビドラマ的お約束をぶち破るポテンシャルを秘めていただけにそうならなかったことでのガッカリ感も大きい。

まぁ、こんなもんだろう。しょせんテレビドラマ映画なので。せっかく藤原竜也に爆弾埋めたんだからもっと竜也で遊べやとか思うけどな!

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24時間に1回ボスの佐藤浩市に連絡しないと爆弾が爆発して死ぬ設定なのに見た感じ連絡には普通の携帯を使っていて世界中を飛び回る産業スパイなのにそれで大丈夫なのかと思った。ちょっと電波入らないところに行ったら終わるだろそれ。

↓佐藤浩市と鶴見辰吾が出てる点と製作会社がロボットという点とサスペンス大作を期待させといてのテレビドラマ展開に大いに落胆させられるという点で姉妹編のような一本


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匿名さん
匿名さん
2021年3月8日 1:05 PM

原作が好きだったので見てきました。
この映画って原作の「太陽は動かない」とその前日譚の「森は生きている」を合わせたもの

匿名さん
匿名さん
2021年3月8日 1:09 PM

途中で送信しちゃいました。
原作が好きだったので見てきました。
この映画って原作の「太陽は動かない」とその前日譚の「森は生きている」を合わせたものになっててヒューマンドラマとおっしゃってるシーンが「森は生きている」の部分なんですよ。
つまり原作を上手いこと詰め込もうとして失敗したっぽいですね。