みんな大変なんです映画『ニューヨーク、親切なロシア料理店』睡眠感想文

《推定睡眠時間:50分》

親切なロシア料理店と言われても死ぬほど寝ているのでどう親切かよくわからないのだが(主人公に弁護士とか紹介してくれたっぽい)これは今家に帰ると死ぬかもしれんという状況に追い込まれてしまったため着の身着のままやむなくネカフェで一夜を過ごし何か大きな音がする度に目を覚ますのでまとまった睡眠が取れず寝不足頭のままとにかく映画を観て落ち着こうと思って映画館に入ったら落ち着き過ぎて激睡してしまったという事情があり、この主人公も身の危険を感じて子供二人と共に家を出た人だったのである意味4DXを超えて6DXぐらいの体感上映の結果であった。

こちらの方の身の危険はひとまず去って早くも平穏な日常に復帰しているがこの映画の主人公の方はそうすぐには日常が戻らずかなり大変そうである。アメリカにはドリンクバーとかアイス&ヨーグルトバー付きのネカフェとかがないのか車中泊が着の身着のまま暮らしの基本。着の身着のままだから金もねぇっつって飯とかは知らない人のパーティに潜り込んでバレない内にさっさとオードブルを食っちまうとかかなり限界に接近している感じである。忙しい中華料理屋入ってって店員が来ないうちに片付け終わってないテーブルの食い残しを素知らぬ顔で食うとか。

邦題の感じからするとそこから着の身着のまま一家がロシア料理店に拾われて皿洗いとか手伝いながら生活を立て直そうとした矢先店に着の身着のまま暮らしの原因のDV夫が店を訪れて…みたいな『天使にラブ・ソングを…』的アメリカ映画あるあるを想像するが実際はもう少し複雑だった。なんか主人公以外にも三人ぐらい境遇の違うニューヨーカーが出てくる。一人はロシア料理店のオーナーやってる三十代半ばぐらいの若い男。これはまぁわかる。残り二人が睡眠鑑賞者的にクセモノである。

このロシア料理店のオーナーも参加していたような気がするがアメリカ映画あるあるのグループセラピーを担当している精神科医なのかセラピストなのか知らないがとにかく白衣を着た女と、あとなんとなくネジが抜けているのでなかなかイイ感じの職に就けず(?)生活が常に綱渡り状態のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが出てくる。果たしてこの二人は主人公とどう関係するのであろうか。

よくわからない。すいませんよくわかりませんでした。でも最終的にみんなで一緒に例のロシア料理店に飯食いに行ってたのでなんらかの関係はあるんだと思います。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズにメシ作らせたら食えたもんじゃなかったのでやっぱ店行こうぜみたいな感じで。

たぶんですねこれはですね俺が思うにロシア料理店に色んな人が集まってくるというかそこを中心にした色んな傷つき人間たちの群像劇。なんかやつれてたからな精神科医だかセラピストだかの女も。ロシア料理店のオーナーも脛に傷ある風だったし。楽しそうなのはケイレブ・ランドリー・ジョーンズぐらいだがこの人はこの人でそこそこ日常生活に支障を来しているわけだからニューヨーカーはみんな大変、お悩みジャンルは違えどみんなそれぞれ何かしらの事情を抱えてるんである。

しかしそのタッチがドキュメンタリー的とまでは行かないが比較的硬質で、ハリウッド娯楽映画的な一直線ストーリーとか分かりやすい起承転結とか、あるいは悪者やっつけて万々歳的なカタルシスがあるわけでもないから、説明の少ない「まぁそこらへん汲んでくれや」的演出と相まってなんだかモヤモヤっとしたものがたぶん寝ないで観ても残るんじゃないだろうか。

まぁね、そんな簡単に世の中シロクロつかないっすよ。とくにこれなんかDVがメインお悩みなわけじゃないですか。DV被害受けた人がDV親父と別々に暮らすようになったからといって速攻ハッピーになれるわけじゃないですよね。新しい生活の中にも身体に染みついたDVの記憶がときおり現われて前に進もうとする足を引っ張る。映画の終盤はDV夫を裁判に引きずり出す展開になるのだが、これが拍子抜けのアッサリ描写で観ている側の無責任なDV夫をやっつけろマインドを満たしてくれる感ゼロ。

それはDV被害は裁判云々で別に消えたりするものじゃないということの表現なのかもしれないし、新しい人生を生きようとする主人公(と二人の息子)にとっては嫌な過去を思い出させるだけの裁判なんか見たくないし別に判決だけ出りゃ過程なんか興味ない、みたいなことの表現なのかもしれない。そういえばグループセラピーの場面も参加者の中でなんか解決した感が全然ないのだった。世の中、一挙に解決する問題なんかなかなかないんである。だから問題を共有できる仲間とかを作って一緒に地道に無理のない範囲で問題に取り組んでいくしかないんである…まぁたぶんそういう感じの、都会的な共同体の在り方とか助け合いの形を描いた映画なんだろう。

睡眠鑑賞者に言えることはせいぜいそれぐらいだがそうだあと一点! DV夫怖かったね! こいつ表向きは人当たりの良い警官なんですけど平時とキレ時のバッファ時間がゼロなのでさっきまでノーマル警官だったのにちょっと目を離したら人でなし暴力警官に豹変したりして怖いんだよ~。俺が寝過ごしていただけかもしれませんが途中まではこいつの怖さが着の身着のマザーの子供の口からしか語られないからそれちょっと盛ってない? そこまで悪いようには見えませんが? とかDV被害者の方を疑ってましたがDV夫がブチ切れるシーンが完全ホラーだったので疑ってすいませんでした。

※ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが和み要素になる映画とかこれぐらいじゃないだろうか。いつも人殺しとか悪いことばかりやっているので(映画の中で)

【ママー!これ買ってー!】


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こっちは別にDVがどうとか重くないアルトマンの群像喜劇ですけどなんとなく雰囲気似てた。

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