二本立て睡眠感想文『ヴィタリナ』『イサドラの子どもたち』

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どんな映画でも寝てしまって困った体質だと思っていたが最近になって食物アレルギー起因の軽度のアナフィラキシーではないか説が浮上し確かにアレルギーっぽい食べ物を避けると劇的に眠らなくなる。

ついに睡眠鑑賞も卒業か! しかしそんな矢先に観たこの二本ではちゃあんとアレルギーっぽい食物は避けたにも関わらずガッツリ寝てしまった。なにも全ての睡眠がアナフィラキシーというわけではなかったのだと思えばまぁ、俺のアレルギー体質もそこまで深刻ではないことになるので良かったと言えば良かったが、とはいえですよ、とはいえね…そういう感想。

『ヴィタリナ』

《推定睡眠時間:110分》

さすがにそんなには寝てないだろうと思いたいのだが眠りと眠りの間に位置する間覚醒期は起きているといっても目の前の映像を脳が処理できないので目では映画を観ていても実質寝ているのと同じである。とくにこれなんかは主演の人の語りが基調を成す映画であったからそのケが強い。130分もの上映時間が実にあっという間であった。

ペドロ・コスタの新作かぁ…前作の『ホース・マネー』も寝るに寝たからなんか睡眠導入的な波長が出てるんじゃないかな、画面から。ペドロ・コスタの映画、タルコフスキー映画よりもソクーロフ映画よりも寝てしまう。よって『ホース・マネー』同様、今回も内容なんかほぼ不明。最初の場面がなんか古代都市みたいな道を葬列が通っていく場面だったから人が死んだらしいというのはわかる。で誰かがそのことでヴィタリナと呼ばれる女の人に何か話していたからそれがこのヴィタリナさんの夫かなんかだろうというのもわかる。しかしわかることはそれだけであった。

あとは何があったのかな。もう本当に全然わかんない。陰影の強烈な荒々しくも静謐なモノクロ映像がエル・グレコみたいで美しかったっていうことぐらいで…モノクロでしたよね? 先週観たばかりのはずなのにそれすらわからないのだから重症だ。一体俺は何を観ていたのだろう。なんだか本当に観に行ったのかさえ怪しくなってきてしまった。魂を揺さぶる映画体験というのはよく聞くが、記憶を揺さぶる映画体験というのはなかなかあることではないだろう…。

そうだあと思ったのが画が基本的に暗い映画でしたね。画が暗い映画、寝るね。俺『死霊魂』8時間はほぼ寝ないで(※上映時間中に占める睡眠時間はという意味なので30分ぐらいは寝てます)観れたのに『ヴィタリナ』は開始10分経たずに寝てますから。『死霊魂』、インタビュー映像集だから画が明るいんですよ。でも『ヴィタリナ』はたぶんずっと激暗。そこが寝る/寝ないの決め手だと思いますねやっぱ。

身も蓋もない話だがこういう生理反応には勝てないんだよ。まぁ、いいんじゃないの? 眠りたいところをあえて抗ってヴィタリナさん(?)の語りに耳を傾けるのも特別な映画体験、抗えずにほぼ全編眠ってしまってもそれはそれで特別な映画体験だろう。他の人の感想を読むと移民の人のお話だということである。移民の語りとはなにか。移民の語りは定住民特権の最たるものである眠りを打ち破ることはできるのか…まぁ、屁理屈はいくらでも書けるが嘘いくらでもは言い過ぎですがでも書けないことはないですが、とにかく、眠い映画でしたっていう感想しかぶっちゃけない。そう悪い眠りでもなかったけどね。

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『イサドラの子どもたち』

《推定睡眠時間:45分》

「イザベラの子供たち」でグーグル検索してもジャンプ漫画の関連ページがヒットするだけでおかしいなぁこんなタイトルじゃなかったかなぁと思っていたら『イサドラの子どもたち』でした。惜しいところをかすっていたな。これぐらい近づけられれば睡眠鑑賞者にしては上出来だろう。俺の上出来ハードルは基本地面0メートルです。みんなも自分を無根拠に褒めていこうな。

内容ね、内容…なんか踊ってたね。これはわかりやすい映画っていうか比較的睡眠が浅い映画でしたよ。なにせ画が明るい。台詞とかあまりないしトーンの変化に乏しく(むろん意図的な作劇であるが)眠くなるにはなるのだが、4人のダンサー…というか踊り手と言った方がいいのかな、たぶんプロのダンサーではない人も混ざってるので。

その4人のダンサーがイサドラ・ダンカンというモダンダンスの先駆者らしい人の「母」っていうダンスを踊る場面と、それぞれのドラマともドキュメンタリーともつかない日常パートが交互に来る構成なので、眠いなりにメリハリがあって結構起きていられる。そうは言っても映画サイトとかに書いてある「4人」の記述にまったくピンと来ないのでピッタリ一人分眠っていたらしい。最初の人が踊ってるところで寝て次の次に踊るダウン症の人のダンス場面で目覚めたからあぁ今回はほとんど眠らずに済んだんだなんて思ってましたが映画はそう甘くない。

でもこれは眠る映画なんじゃないですかね。この「母」っていうダンスには腕に抱えた子供をゆりかごみたいに揺らすパートがあったのでどの踊り手もそれをやるんですが、そういった動作は振り付けられたものではなく女性の身体の内側から湧き上がってくる普遍的なものである…というイサドラによる? テキストが? 読み上げられて? まぁだから身体の内側から湧き出てくる衝動に対してはこちらも内側から湧き出てくる衝動すなわち睡眠で応答…というのは屁理屈に過ぎないとしてもうまく映画と対話ならざる対話が成立していたなという気がしましたよ、なんか。

同じ動作でも踊り手が違えば違うダンスになる。それぞれのダンスにはその踊り手だけの過去や想いが宿るわけですが、これもまた身も蓋もない話になるが俺「身体性」っていう言葉を基本的に信じてないし「普遍的」っていうのも信じてないので…いやだって、身体の内から湧き出るダンスなんかないし、普通にゆりかごダンスなんて万国共通じゃないでしょ。

あくまで共通なんだって言うんならそれテーマのフィールドワークに出てちゃんと論文にまとめて査読通すぐらいしてもらわないと。身体の内からダンスが~って言うんなら動物実験とかやってみればいいじゃないですか、ラットにEDM聞かせたら踊るかみたいな。踊らないとしたらそれは踊らない身体と踊る身体があるということなわけだから単に身体機能の問題でしかないだろ。そこになにか精神性を持たせようとするのはおかしいし、そうした偽の普遍性の称揚は差別とも直結するやさしい劇薬なのである。

…などとは寝ながら映画を観ている間は少しも考えず素直にダウン症の人が飯食ってる場面のやさしい光いいなーとか最後に出てくる足の悪い老女の鎮魂ダンスには沁みるなーとか思ったりしていたので、まぁ全編覚醒状態で観ていたらおそらくこうはならず上のような反論を活発なニューロンたちが脳内で練り上げていたに違いないので、寝ながら観た方が平和に観れる映画というのもあるのです。

【ママー!これ買ってー!】


ホース・マネー ペドロ・コスタ監督 Blu-ray 国内未公開短編『O NOSSO HOMEM(わたしたちの男)』収録

今まで観た映画の中で一番寝たんじゃないかと思うぐらいとにかく寝た記憶しかない。

2 Comments
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booby
2020年10月9日 11:10 AM

すいません、この映画の話ではないのですが、私も映画の内容にかかわらず、よく寝ます。私の場合、来る時は開始10分ごろから眠気がやってきて1時間ごろまで続きます。良く詰まらなくて寝た、と言う話をする人がいますが、私は詰まらないと腹が立って逆に寝るどころではないです。実は私も「プライベート・ライアン」の冒頭で寝ました。同様の体験をされたという話に「そうそう!俺も」と膝を打ってしまいましたよ(映画の出来は関係ないです)。