ネタバレなし感想『クワイエット・プレイス』

《推定睡眠時間:15分》

なんか世間に曲がらない耳を傾けるとネタバレ厳禁案件っぽいのですが15分寝たとはいえ15分寝たとはいえぶっちゃけどこがネタバレ厳禁案件なのかよくわからずネタバレするほどのネタも別になかったろうっていうかネタほとんどなかったろうっていう渋面感想を易々と飛び越えてそんなことよりも衝撃的だった準主役ミリセント・シモンズの70年代的男前な面構え。

横から見た時のブロック感というかマインクラフト的なアナログ立体感がすごい。肖像写真を白黒にしてこれがアーネスト・ボーグナイン小学生の頃ですとか嘘ネットで拡散されたらたぶん信じてしまう。

直近の映画だと『ワンダーストラック』とか主役クラスで出てるらしい。見てないけど何度も見た予告編にこんな感じの人出てたかなぁ? って気がしたので作品に合わせて相貌を変える演技派の人なのかもしれない。
今回はプリティなブリック版アーネスト・ボーグナインです。アーネスト・ボーグナインに相貌変えてました。衝撃。

そのボーグナイン・ブリックの家族がアメリカのどこかの農場に秘密基地を築いてひっそりと暮らしていた。
なぜなら文明世界は音を(発した者を)食うなにものかによって崩壊してしまったから。他に生き残りもいるかもしれないが一縷の望みを託して毎日続けている無線に反応はない。

というわけで農場に引きこもって音を立てないようにしているボーグナイン家。崩壊からもう一年ぐらい経って『世界崩壊の序曲』(出:アーネスト・ボーグナイン)ならぬそろそろ終曲の観。
だが実はある出来事のせいでそれ以前からこの一家のオヤジこと監督兼主演兼製作総指揮のジョン・クラシンスキーにとって世界は終わったも同然になっていた。

終わった世界の中で表面上は再生を信じるそぶりをしているが、その実ぶっちゃけもう無理っしょと感じてるっぽいクラシンスキーの諦メンタルを嗅ぎ取ったか、子どもたちには聞かせられない弱音を聴き取ったか、ついにヤツらは秘密基地に攻め入ってくるんであった。すごいもうなんか最悪なタイミングで。

ちなみにこのボーグナイン家は夫ジョン・クラシンスキー妻エミリー・ブラントにボーグナイン含む子ども三人だったのですがクラシンスキーとブラントは実の夫婦っておい。
妙に親密な雰囲気の映画だなあと思ったらそういう理由があったのかと納得したが監督主演製作総指揮で実生活の妻が妻役って自主映画みたいな布置だなクラシンスキーの。

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その親密さがよいところでもわるいところでもたぶんあり、森の中の鉄道橋とか農場の実り豊かなトウモロコシ畑とかノスタルジックなアメリカ風景をバックに黙して語らぬ家族の姿が描かれるとその親密と相まってなんだか宗教画のような厳粛ささえ帯びてくる。

これは別に神がどうとかそういうストーリーではないのですが『インターステラー』とか『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』とかシャマランの諸作(めちゃくちゃシャマランっぽい映画だった)なんかと通ずるような、みたいな意味で沈黙と勤労と忍苦の中で神の奇跡的な顕現を待ち望む一種のアメリカ流プロテスタント映画だったかもしれないなぁとかおもう。
そういえば『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で主人公の石油王の息子は耳が聴こえなかったが、こっちの主人公の娘ミリセント・シモンズも耳が聴こえないのだった。

音が聞こえる聞こえないは映画のテーマを成すところでもあろうから自然音がとても強調されたちょっと変わった、なんとなくタルコフスキーみたいな作り。
それも映画の親密の一端で、トウモロコシ畑のざわめき、渓流のせせらぎ、音を立てないように移動路に敷かれた白砂を歩くときのギュッギュという音、なんかを聴いているともう心地よく寝るしかない感じになる。

そうです寝ます。ねむい。そして眠ることはまったく悪いことではないとおもうがこの場合はなんていうか親密とエキサイティンッの振り幅が結構小さいしかも実夫婦が夫婦として出ていたりするかなり親密寄りの映画なのであんまこうあんまこう、ホラーとしておもしろくなかったっていうか肩透かし感が。結果、ねむい。ねむかった印象ばかり残ったりした。

いや俺は結構エキサイティンッな映画のつもりで見に行ったんで予想外の真面目テイストには驚きもあったし反面のガッカリもあったよな。
いやだってジャンル的考証とかいい加減だし。音を食うなにかが聞きつける「音」とかすげぇご都合主義ですよ。その音は聞こえてそっちの音は聞こえないんだみたいな。これはもう冒頭のドラッグストアの場面から最後までずっと思ってたことで。

あとうっかり大声を出しちゃって大ピンチ的なお約束場面が多発するんですけどじゃあ声帯とか取っちゃえばいいのに別にそれで音が出なくなるわけではないにしても、とか。
そんな簡単に取れるかよって言われたらいやまぁそうなんですけど取る取らないの葛藤は家族ドラマに大きなうねりを生んで面白いと思うんだけどなぁ。

そういうなんか、気の利いた感じの展開とかアイディアはマジですげぇ全然なくて単調で場当たり的で、だからネタバレも糞もねぇよって話なんですけど音、自然音もよかったし聴覚障害者の音世界をイメージしたっぽいマルコ・ベルトラミのスコアもよかったし顔、顔はもうミリセント・シモンズの原アメリカ的な力強さ一択だし画、これはちょっとだけテレンス・マリックの世界を思わせるような叙情とリアリズムの同居する撮影クリストファー・テレフセンの自然風景がたいへんよかったのでようするに、俺にはホラー感が物足らんかったけどおもしろかったし良い快眠映画だった。

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スクリーンに現れたのはこういう映画だったのだ。

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