父娘で撮ったぞ映画『ローグ』感想文

《推定睡眠時間:15分》

ローグ(Rogue)デッキといえば一昔前のマジック:ザ・ギャザリングでは環境のメタゲーム外にあるチャレンジデッキ、つまりいくつか勝てるデッキのタイプというのが固まっている中でそれらのタイプとはまったく設計思想の異なる独創的なデッキを指していたが、最近ではクリーチャー・タイプがならず者(Rogues)のクリーチャーが大半を占めるフラッシュ&ライブラリー・アウト戦術の青黒デッキをローグと呼んでいて、このローグが手軽に組めるくせにかなり強くしかも対戦時間が結構かかるのでめんどくせぇ、動きは決まっているので対処法もまた決まっているがその対策カード自体がカニの掘りでライブラリーから落ちたりすると心の中で対戦相手にボガーダンの鎚を投げずにはいられないのだが…と映画とは一切マジで一切関係ないのだが最近MTGアリーナというマジック:ザ・ギャザリングのオンライン版にどっぷり浸かってしまっているので今の状態でローグと聞けば思い浮かぶのはあのローグ、あの憎たらしいローグ、でも自分が使ったら楽しいんだろうなぁ…のローグ!

というわけでこのように最初から脱線しているのでむしろ脱線ではなく本線という超脱線ぷりなのであったがここはミーガン・フォックス主演の映画『ローグ』の感想コーナーです。ローグデッキへの怨嗟はひとまず置いておくことができなかったが脇にどけて(そういえば昔のマジックで「カードを脇にどける」って表現ありましたけどあれいつからか無くなりましたよね)『ローグ』観てきましたから感想書きます。でも言っときますけど俺はディミーアローグとか呼ばれたりする方のローグデッキにはムカつきますけど独創デッキの方のローグデッキは大好きですからね。昨日もライブラリー・アウト戦術のノンクリーチャー・デッキと当たったんですけどそのデッキの勝ち筋が「真夜中の時計」でのデッキ修復っていう…いいよもうマジックの話は! やってない人わかんないし! あと映画関係ないし!

えー、映画の方の『ローグ』はミーガン・フォックスが傭兵部隊のリーダーになってどこか知りませんがアフリカのサバンナにひっそり佇むIS的な悪者軍団のアジト的なところを強襲、その目的は身代金もしくは人身売買用もしくは性奴隷などなど用に拉致られた市長の娘を奪還することでしたが一緒に囚われていた他の少女たちも「いやボス! こいつら助けないとか人道的にどうなんすか!」という部隊の男の鶴の一声で本来救出予定ではなかったが救出することになります。そこまでは良かったがIS的な悪者軍団の追撃が結構本気だったためフォックス部隊は近くの謎屋敷に退却、籠城戦に持ち込もうとするのだったがそこには凶暴な雌ライオンが徘徊しており…とまぁそんな感じのお話です。

監督はマイケル・J・バセットという俺の中ではゲーム映画の傑作『サイレントヒル』の続編『サイレントヒル:リベレーション』をゲームのエッセンスをまるでわかってないクソ続編に仕上げたガッカリ映画人ですがこの人は本来はB級職人的なポジションなのでこれに関しては監督に起用した人が悪いと思います。『ローグ』みたいなビデオ屋直行のB級映画でこそバセットの本領発揮。今回は娘のイザベル・バセットと一緒に脚本を書いてIS的な悪者軍団に拉致られた少女の一人として出演もしてもらい…っていやそれ本領発揮とはちょっと違くないか!?

なんかIMDb見たらバセットの監督・脚本作『ソロモン・ケーン』にも出てるらしいよイザベルさん。娘と一緒に映画作ってきて今回は脚本もってことはたぶんイザベルさんのやりたいこと言いたいことが『ローグ』には詰まっているのだろう。すなわちアニマルライツとフェミニズム。白人向けの狩りターゲットとして飼育されていたライオンが檻から飛び出して大暴れの図とIS的な悪者軍団によって檻に閉じ込められた拉致られ少女が大逆襲の図が重なるシナリオになってるわけですねぇ。

白人向けの猛獣ハントとISとかボコ・ハラムとかの宗教過激派による少女誘拐はどちらもたしかに深刻な問題なので題材的には意欲作で、悪役のイギリス人(ジハーディン・ジョン的な)が「市長だって象牙売買で稼いでるぜ!」とか言ったりして単純な勧善懲悪になってない社会派っぷりは面白いところなのだが、ただそこはシナリオのひねりのなさもあるだろうがB級職人マイケル・J・バセットの映画なので粘りが足りないっていうか題材のわりにはアクションにしてもサスペンスにしても人間ドラマにしてもわりとアッサリ諸々済ませてしまう。

気楽に見られるという意味では良いがいやでもそこはほら娘バセットもリサーチとかして頑張って書いたっぽいメッセージ性の高い社会派シナリオなんだからもうちょっとアクションとかサスペンスとか重く演出してもらっても…とか思わないでもないのだがそういうちゃんとした映画を期待するなら娘バセットは親父バセットに脚本渡してないと思うのでこれでいいんだろう。出演シーンも結構多くて役柄の上では完全脇役なのにストーリーが進むといつの間にか準主役級の扱いになっているので娘バセットも乗り気だったはずである…いいのかそれで。

そこも含めてなのだが、面白く見られたのはどちらかといえばゆるいアクションとかサスペンスの部分よりも細かい部分のオフビート感覚だったりした。なんかですね、微妙に変。微妙に可笑しい。汗ダラダラの戦場でメイクバッチリなミーガン・フォックスとか、今どき合成丸出しな崖落下シーンとか、唐突に出現して一撃で人を食い殺す必殺ワニとか。そういうちょっとずつの変がなまじ真面目な題材なものだから目に付く。狩り用ライオンの巨漢飼育員の頭皮がインパクト絶大な形状だったりとか。CGライオンの動きが速すぎるとか。あとあそこ笑ったんだよ、モルヒネ打たれた死にかけの傭兵が「女の隊長なんか認めねぇぞ!」ってクスリ酔いしてミーガン・フォックスに絡むと傭兵仲間が「まぁまぁ、こいつモルヒネで朦朧としてるんだよ。な?」みたいに言うところ。この言い訳は明日から使っていきたいよな。

拉致られ少女とIS的な悪者軍団の直接対決を長回しで撮ったりとかそういうところも良い。荒野でのカーチェイスは珍しくないが背の低い樹木の間を縫ってのサバンナ・カーチェイスというのもスピード感は全然ないが物珍しくて良い。シーン自体は短いが散乱した木片が暗闇の中で燃える地獄めいた光景は素直にカッコイイ(でもその使い方が雑でもったいない)

だからそういう、トータルではビデオ屋直行のクオリティなんだけれども部分部分が光る映画って感じだったなこれは。ミーガン・フォックス主演のミリタリー・アクション編みたいなのを期待しなければ(するに決まっているが…)楽しく観られるんじゃないでしょーか。

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アニマルライツ擁護映画として製作された壮絶な事故映像集。監督権主演のどうぶつおじさんが可愛がってるライオンにじゃれ突進されて吹っ飛んだりライオンけんかに素手で仲裁に入って腕をえぐられたりして笑顔を浮かべます。白人のアニマルライツにかける熱意は尊敬に値するが狂気。

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