豚小屋発豚小屋行き映画『GUNDA/グンダ』感想文

《推定睡眠時間:20分》

一匹の大人家畜ブタがかなり狭い小屋の入り口で頭だけ陽に当てながらグースカグースカと寝ていてああ平和だなぁという光景で幕を開けるのだがしばらくするとピキピキいう手乗り子豚群団が小屋の奥から大人ブタの頭の横を通ってというか乗り越えるようにして外に出てきて小さっ! だいぶ驚く。やがて大人ブタがグガァと鼻を鳴らして起き上がりなにやら辛そう感を出しながら横になる位置を変えるのだがここでカメラが切り替わって小屋の中の映像になると大人ブタのおっぱいに手乗り子豚たちが群がる光景、ははぁそうだったのかこの大人ブタは母ブタで眠ってると思ったら授乳タイムだったんですねぇ。

それにしてもこの手乗り子豚たち、母ブタのおっぱいをまさに餓鬼の如く押し合いへし合い奪い合う。手乗り子豚の個体数分だけあるかはわからないがおっぱいの数はまぁ少なく見積もっても10とかそれなりにあるのだから奪い合ったりしないで空いたおっぱいを吸えばいいし手乗り子豚の吸える乳量なんかたかが知れているのだから仮におっぱいが満席でも一分かそこら待てば普通に吸えるものを…とそんなことは考える知恵のない手乗り子豚たちであるからしょうがない。一つのおっぱいに一匹また一匹と群がってそこにまだ表皮がぬらぬらとしているホヤホヤの手乗り子豚も…産んでるの!?

スペクタクルだね。最初はただ眠ってるのかと思った大人ブタが実は授乳中の母ブタであることがわかってしかもそれが出産中だったっていう開始早々の予想外に次ぐ予想外。その直後にも出産を終えたらしい母ブタが歩き出してさっき産んだばかりの可能性がある手乗り子豚の一匹をうっかりなのかどうぶつ的確信犯なのか踏んでしまう野生の厳しさショッキングシーンがあったりして気が抜けないことこの上ない。どっかの長閑な放牧農場の家畜の一日を家畜目線で追っているだけなのにすごいハラハラ冒険感。

ブタ家族の一日はこれで終わりではなくむしろこれからが本番というところだがここからは一旦場面変わってニワトリ部隊のシーンになる。どこかから車で運ばれ見知らぬ農場に放たれたニワトリ部隊が周囲を警戒しながら一歩一歩前進していく光景はまるで戦争映画のようで手に汗握る。そうだよなぁ。ニワトリ部隊にしたらプレデター星に連れて行かれたようなもんだもんなぁ…。やがて金網に突き当たるニワトリ部隊。ニワトリ部隊にそこまで考える脳はないだろうが表情に挫折の色が見えたね。三歩歩けば忘れるかもしれないとしても、それで挫折の体験がなかったことになるわけではない。切ない。

どうぶつたちに感情が見えるのはカメラを上からではなくどうぶつ目線かどうぶつよりも下におそらくこれ用に特化したカメラを置いているからっぽく、そのカメラから見た農場は広大なジャングルのように映ってニワトリやブタやあとウシはその一匹一匹がとにかく必死にジャングルをサバイバルしているように映る。いくら安全に見えても生き物の生はいつだって死と隣り合わせ。母ブタと手乗り子豚たちが草原で呑気に散歩しているだけのシーンでさえ一匹だけあらぬ方向に行ったりする手乗り子豚を母ブタが他の手乗り子豚の方に押し戻したりする緊迫のシーンがあるわけで、家畜の死なんか人間目線で見れば数の問題でしかないが、その目線に合わせて見ればたった一匹の生きた死んだも巨大なドラマになる。

人間的にはこれが単なる農場の一日でしかないとわかっていてもブタ一家の運命にはやるせない気持ちにさせられてしまった。それは家畜どうぶつに対する同情というよりは家畜どうぶつを通して人生の儚さを感じたからで、このブタたちみたいに豚小屋発豚小屋行きの毎日を俺もやってるんだよな、とかなる。でも不思議と前向きな気分にもさせられて、階段で足を踏み外せば死ぬ、横断歩道を赤信号で渡れば死ぬ、駅のホームで線路に近づきすぎれば死ぬ…そんな理不尽なハード環境で毎日ちゃんと生きてるんだから大したもんじゃないの、と人生の崇高が慎ましくも…なにこの感想? ごめんなんか疲れてます。疲れてますがつまりまぁあれだね、『GUNDA/グンダ』、疲れに効くサバイバルアクションどうぶつ映画でした!!!! だめだ今日ちゃんとした感想書けないわ疲れてて。

【ママー!これ買ってー!】


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これは面白いどうぶつ映画だったなー。どうぶつアクションがすごいんだよ。トカゲの赤ちゃんがダッシュ逃げをやるところとか。

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