なんか盛り上がんない映画『聖闘士星矢 The Beginning』感想文

《推定睡眠時間:30分》

『聖闘士星矢』は読んだことがないしアニメも観たことがないのでなんか甲冑みたいの着てペガサス流星拳で戦うやつみたいな漠漠然然としたイメージしかなかったのだが聖闘士がコスモを発動させるシーンの演出を見たらゲームの『ペルソナ』っぽかったので『ペルソナ』に出てくるペルソナ(守護霊みたいなやつ)のあのデザインと設定は『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドがネタ元だよねとか今まで思っていたのだがデザインはともかく人間が内に秘めた神とか霊とかを解放して戦う的な設定は元を辿れば『ジョジョ』のスタンドが初登場する三部よりも何年か前に連載が始まった『聖闘士星矢』の影響なのだろうというわけでうわー『聖闘士星矢』の影響力すげーって思った。

俺にとっては『銃夢』をロバート・ロドリゲスが実写映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』を観たとき以来の「これだったのかー!」ですよ。『アリータ』では『ファイナルファンタジー7』序盤の舞台ミッドガルの設定と美術は『ブレードランナー』だけじゃなくて『銃夢』もモデルにしたのかってことを知ったね。世の中まだまだ知らないことだらけです。あと『聖闘士星矢』の影響といえば『美少女戦士セーラームーン』も『聖闘士星矢』の影響圏ですよね。『聖闘士星矢』すげー。

それでこの映画ですけどなんかよくわかんなかった。これが映画オリジナルの設定なのか原作に準拠したものかさえ俺にはわからないのだが最初高校の体育館かなと思ったら地下闘技場から話が始まって主人公の星矢が何者なのかもわからなければこれがどういう世界なのかもわからない。現代の話なのか、未来の話なのか、現実世界の話なのか、ファンタジー世界の話なのか…その後地下闘技場を出た星矢をすぐさまサイボーグ部隊が襲いすんでのところで謎の実業家ショーン・ビーンとそのお付きのマーク・ダカスコスに助けられた星矢はそのままショーン・ビーンが暮らす人里絶無の超僻地にある大邸宅に連れて行かれるので地下闘技場の外の世界がどうなっているのか、原作を読んでいない俺にはいまいちよくわからないのであった。

その段階で躓いてしまっているのでショーン・ビーンが新田真剣佑演じる星矢に君のハートにはアツいコスモがあるんやなどと熱弁してもへぇ…みたいな感じでどうもテンションが上がらない。どういう世界なのかはわからないがこの世界には実はたくさんの聖闘士がいてそれぞれの聖闘士は異なるコスモ=星座=神、これは星座の多くがギリシア神話にちなんで名付けられていることに由来するが、神の形象をとるコスモパワーを持っているらしい。ふぅん。ということはさんかくコスモを持つ聖闘士とかかみのけコスモを持つ聖闘士とかもいるんだろうか。どんなパワーかまったく想像がつかない(英語題『Knights Of The Zodiac』のゾディアックとは黄道十二宮のことであるからそんなのは出てこないのだろうが)

人間が宇宙(のエネルギー)を内包するという『AKIRA』とも共通するモナド的な発想は原作の連載が始まった80年代中期という時期を考えれば『AKIRA』ともどもニューエイジ・カルチャーの影響を多分に受けたものだろう。現代アメリカ映画界はニューエイジ・リバイバルの様相を呈しておりとは俺はこのブログで超かなりいつもいつも書いていることだがその流れの中でニューエイジの落とし子たる『聖闘士星矢』が東映出資でアメリカの製作会社によって実写映画化、ついでに言えば『AKIRA』のハリウッド実写化企画も進んでいるのかいないのか微妙だが一応企画としては生きているらしい、というのはなるほどと頷けるところで、三十年ぐらい遅れてやってきたニューエイジ興味津々っ子の俺としては面白く感じるところだが、それは映画の背景が面白いということであって映画が面白いということではなかった。

いや、別につまらなくはないっていうか、わりかし雰囲気とか美術とかは好きな感じだったんですけど、いかんせんふわっとした映画で諸々よくわからない。聖闘士は何がしたいの? 神々って何考えてんの? どうもキャラクターの対立構図が見えにくいのでいざバトルとなってもあんまりなんか燃える感じがしない。コスモパワーというのもたとえばこの人は火を放てるとかこの人は水を操れるとかならわかりやすいがなんかそういう感じでもなくキャラごとの能力の違いが判然としない。

それに加えて展開が遅いんだよなーこれ。今時の映画にしては星矢が秘めたる力を使いこなすためにしっかり修行を積むパートがあったりするのはその心意気や良しと思うが同じところで同じような修行ばかりしてるから見てて面白くないし(修行とはそういうものだと言われればそれもそうですが…)話が先に進まない、進んでもなんか会話ばかりしてる、あと強敵かと思われたやつがいざ星矢と戦ったら雑魚だったとかのあれっ感。原作はバトル漫画なんだから強い聖闘士同士のバトル中心にシナリオを作ってくれないか…いや読んだことないからバトル漫画なのかどうかも知らないのだが。

CG部分と実写部分が妙に乖離したコスモ発動演出、そう見えるのは実写部分とCG部分の境目をボカしたりしないからなのだが、なんだかこれが独特の質感があって人によっては安っぽく見えるだろうがというか俺にもそう見えたがなかなか良かった。あと岩山に住んでる聖闘士の修行場、なんか砕けた柱とかが宙に浮いている不思議な空間で背後に超巨大アテナ像の顔が見えるから元はギリシア・ローマの神殿とかだと思うが、このへんも見物。だから先に書いちゃったけどビジュアルとか雰囲気はいいんだよね。新田真剣佑も星矢っぽいのかどうかは知らないが愁いを帯びた眼差しが印象的でカッコいいしあとマーク・ダカスコスがかなり無駄にダンディ。でも肝心の聖闘士同士のバトルはなんかショボイ。そして展開がかったるい上によくわかんない。邦題にビギニングとあるようにシリーズの序章という位置づけだとしても、もうちょっと盛り上がる感じにできなかったんだろうか。

そのへん、なんか紀里谷和明の映画と似てた。紀里谷和明も絶対『聖闘士星矢』の影響受けてると思う。紀里谷和明監督引退作の『世界の終わりから』、微賛公開中ですのでみなさんもどうぞご覧下さい。紀里谷和明の宣伝になってしまった。

【ママー!これ買ってー!】


聖闘士星矢 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) Kindle版

こうやって見ると新田真剣佑ぜんぜん原作の星矢じゃないな。あんなエロい見た目してないだろ星矢。っていうかそういう漫画じゃないだろたぶん。

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りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
2023年5月4日 4:41 PM

原作のwikiにある原作あらすじのページ見たらわかると思いますが、
今回の映画、序盤中の序盤で話を終わらせちゃったのが残念でした。

バトルの試合に呼ばれて、戦いながら友情が生まれて仲間が出来たところで「暗黒聖闘士」(悪者が作った偽物集団)が現れるあたりまで進めて欲しかった…

りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
Reply to  さわだ
2023年5月9日 12:29 PM

るろうに剣心実写版シリーズがテンポ優先でサクサクバトルをするも、
人気キャラ何人かが尺の都合で「そこら辺のモブ」化されてるのと対照的ですね。