超タイトル詐欺映画『わたしの幸せな結婚』感想文

《推定睡眠時間:15分》

さっき見たネットニュースの見出しによればなんでも韓国はこの10年で結婚率が4割下がったのだという。日本も結婚率は年々下がっているがこれはちょっと衝撃的な数字、確か韓国は出生率も1人割れに迫るぐらいとかめちゃくちゃ低かった気がするので、例外も多々あるとしても基本的には結婚をした男女が子供を産むのが人間社会の慣例なわけだから、少子化=非結婚化は当然の帰結なのだが、それにしても10年でそこまで下がるとは…韓国社会が良くも悪くもいかにダイナミックに変動しているかを示す一つの傍証だろう。

しかし不思議なのはそんな韓国のテレビドラマといえば恋愛ものがめっちゃ強いということである。恋愛ドラマを観る人が必ずしも結婚願望を持つわけではないにしても、なんとなくそういうものが流行っている国は結婚に対する社会的なイメージも悪いものではないという気がするので、なんだか結婚率の激減と恋愛ドラマの量産という二つの事実は相反することのように思えてしまう。それは日本にしても同じことで、なんだかんだ日本の娯楽産業において絶対的に強いのは恋愛もの、漫画もドラマも映画もとりあえず恋愛要素が投入され、これなんかタイトルからして『わたしの幸せな結婚』とまるで結婚相談所の広告のような…ってそんなことをぐだぐだと書いてる場合じゃないんだよ! 事件ですよこれは! 俺の中の高嶋政伸が姉さん事件ですと言ってるよ!

タイトルは『わたしの幸せな結婚』! 主演は現在ジャニさんのチンポしゃぶりまくり事件をBBCがめちゃくちゃ得意気に報道しているが日本の報道機関はもとよりネットユーザーでさえ大して食いつかないジャニーズ事務所の知らない若手っぽい人! とくれば! とくればだ! ジャニさんのチンポしゃぶりまくり事件のくだりはいらなかった気もするがとくれば! キラキラ映画とかかな知らんけど、って思うよね! びっくりしたよ。そのつもりで劇場入ったら実相寺昭雄みたいな映像世界が広がってたね。天井の高い室内での会話シーンではカメラポジションを高めに取って人物の上部に大きな余白を作る奇抜な構図を取り、日本家屋の暗さを強調するコントラスト強めな照明はあるときには人物の顔を真っ白に染め上げ、大正建築中心と思われる優雅なロケ撮影では魚眼レンズだって持ってくる。

実相寺昭雄監督による映画版『帝都物語』の精神的な続編ですよこれは。時代背景はぼやかしてあるっていうか架空の日本という設定だが舞台は帝都だしね。式神を送れたり透視能力があったりする超能力者がたくさん出てくるのも『帝都物語』はまぁ超能力者いっぱいという感じではないが様々なオカルト術はやはり主要な要素、『帝都物語』の中心人物である魔人・加藤保憲も続編『帝都大戦』ではきっちり念力を武器にバトルする。それになにより色んな立場の登場人物たちが交わることはあまりなくそれぞれの物語が並行進行するアルトマン・スタイルの群像劇という点が決定的に映画版『帝都物語』である。『わたしの幸せな結婚』のタイトルで中身は『帝都物語』ってタイトル詐欺どころじゃないしこれ続編あるとしたら『わたしの幸せな結婚』ではもう通用しないだろあんなに風呂敷広げて。

加えて更に驚かされるのが邦画としては法外なVFXの使い方の巧さ。映画に一家言のある面倒臭い人が最近の日本産娯楽映画を語るときに99%それにひきかえ日本映画ときたらと腐す目的で引き合いに出すのは韓国産娯楽映画である。俺はこれを観て韓国映画かと思った。韓国映画は当然VFX使いが巧い。これは描写の精度が高いとかそういうことではなくVFXをどこでどの程度使いどのように見せるか、というつまりはVFXの演出力のことなのだが、多くの日本産娯楽映画にはそのVFX演出力が致命的に欠けている中でこの映画にはハッキリとそれがあった。もう抜きん出てあった。だから画面が少しもチープにならず韓国のジャンル映画とか、多少大袈裟に言えばマーベル映画の中のVFX演出力のない作品よりもこっちのが画面がゴージャスにさえ見えた。

たぶんこの監督・塚原あゆ子という人は映画の様々な要素にまたがる基礎的な演出力が非常に高い人なんだろう。こういうのもアレなのだがこの映画、風呂敷をかなり広げてるわりには結構ショボイことしか起きない。基本的には異能者の血を受け継いでいるが父親の後妻とその超能力を持った娘とに虐げられている薄幸の少女が政略結婚で冷酷だがイケメンな軍人の家に嫁いでなんやかんや幸せになりましたという古典的なシンデレラ・ストーリーであり、伝奇アクション群像劇ではあるが映画の中心はあくまでもその結婚生活に置かれている。ところがこれが目を離せない…と言いつつ15分寝ているが、逆に言えば(?)15分しか寝ていないわけで、こんなバカっぽい話なのに家の都合で結婚させられた目黒蓮と今田美桜の主演二人の演技は安易にテンプレに乗ることなく、その会話のひとつひとつ、視線の交差のひとつひとつに迫真性と緊張感が宿っており、『ドライブ・マイ・カー』もかくやの演出力の高さを見せつけられるわけである(それでこそラストに見せる二人の笑顔が実に響くのだ)

だからバトルといっても比較的ショボイ規模のバトルしか起こらないわけだが、それにしたって見事なもの。これね、目黒蓮の演じる軍人が戦闘態勢を取るときに片足をグッと引くショットっていうのを超ローアングルで撮ってサッと一瞬差し挟んだりするんです。西部劇の映画でさ、まぁたとえば『ヴェラクルス』とか想像してもらえばいいと思うんですけどごめん逆にわかりにくいかだったらじゃあそういう人は「西部劇 ヴェラクルス」で画像検索して? …はい、みなさんとイメージの共有ができたと思われるところで話を続けますが、こう、二人のガンマンが向かい合って拳銃の入ったホルスターに今にも手をかけようとしてたりしますわな。

でそういうシーンでさ、何がシーンの緊張を高めるかってちょっとした手の動き、目の動き、あるいは群衆の動き、などの細かい部分のクロースアップとそのモンタージュ、そしてそれによって醸成されるまるで一秒が十分にも感じられるかのような「間」ですよ。どっちが先に拳銃を抜くか…どっちが先に拳銃を撃つか…そういう緊張が西部劇のアクションを面白いものにしている。実はアクションそのものじゃないんですよね。もちろんガチモンのカンフーの達人がやるアクションなんかはそれ自体ものすごい迫力がありますからカットを割ったりモンタージュしたりせずただワンカットでアクションそのものを撮っていればいい。でも大抵の映画で役者が演じるアクションって達人じゃないからそこまで迫力ない。そういう時に何がものを言うかって様々なショットのモンタージュと間。つまりはアクションの演出。それがねぇ、『わたしの幸せな結婚』のアクションシーンには抜かりなく施されていたわけですねぇ。

いやもちろんつまらないところっていうかダメっぽいところもあってさ、これを言ったら身も蓋もないけど、魔を封じる異能者たちが日夜戦いを繰り広げているらしい権謀術数渦巻く帝都のストーリーと幸せを求める薄幸少女のシンデレラ・ストーリーってどう考えても食い合わせ悪いよね。それはもう原作の問題だからどうしようもないけど、途中「早くオカルト合戦見たいのにまだ結婚生活の描写やってるの~?」とか思っちゃったよ。さっきは目が離せないと言ったのに! でもそれも上手いことやっとるんだよな、自分に自信がない薄幸少女が結婚生活の中で自信を取り戻すと同時に超能力戦争の渦中に…みたいなね。終盤の展開はちょっと性急だしなにせ名詞大量の情報過多映画なので誰が何を考えて何をしたいのかよくわからんというのもあるけど、まぁでもそれは『帝都物語』もそうだったから善し悪しというか、作品の個性の範疇。俺はこういう風呂敷をやたら広げる映画は好きですよ。このへん人によって許容度わりと差があると思いますが。

ダイナミックな展開と微に入り細を穿つ演出、ケレン味溢れる撮影照明が揃ってゲストポジションで出てくる役者も火野正平&石橋蓮司と実に渋い、主演二人もそこらの邦画でよくあるアイドル演技ではなくこれは完全に映画の芝居だ。そして巧みなVFXによって生み出されるワンダー! 確かにキラキラ映画かと思って映画館に入ったら『帝都物語』みたいの始まっちゃった! のショックで冷静な評価ができていない面はあるだろうか、しかしそれにしてもこれはちょっと現代日本のガキ向け原作付き娯楽映画としては規格外の出来なんじゃないだろうか。今後『鬼滅の刃』も『呪術廻戦』もどうせ実写化されるのだろうが、その場合はこの監督を抜擢してほしい。そしたらいやホント世界市場に売れる映画になると思いますよ、ちゃんと予算かければの前提ありきですけど(あ、その前にこの映画の続編お願いします。今回はビギニング編だったので)

【ママー!これ買ってー!】


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『帝都物語』の続編『帝都大戦』の方はあんまり面白くなかったので塚原監督にリメイク撮ってもらいたい。

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オレくんはご機嫌斜め
オレくんはご機嫌斜め
2023年3月26日 1:02 AM

すんごい面倒くっせぇメンタルをした人が書いた、すんごい面倒くっせぇ文章の羅列で、何一つとして頭に入って来なかった。以上。