隙なしキラキラ映画『交換ウソ日記』感想文

《推定睡眠時間:0分》

ツイッターで普段こういう映画を観ないような人がこれはキラキラ映画なのに良かったとかキラキラ映画だからと思わないで観て欲しいとかツイートしているのを何件か見て、俺が観た日曜レイトショーの回はざっと数えて客が8人ぐらいだったからああよかったちゃんとキラキラ観客層以外にも少しかもしれないが観られてるな、とか思ったんですが、でもあれだよねキラキラ映画なのにとかって言うけどこれはとくにレベルの高いキラキラ映画ではありますがわりとどのキラキラ映画もこういうことやってるよね。

こういうことっていうのは高校生の光も影もある地に足の付いた青春群像と成長物語とかなんですけど、キラキラ映画ってなんかほらポスターとか予告編がキラキラキュンキュンしてるからリア充パリピの映画だととくに男から思われてるフシがどうもある。でもキラキラ映画観てる人ならわかってると思いますがそれ全然違うよね。確かに主演を張るのは売り出し中の若手アイドルとかアイドル役者だから美男美女の世界ではありますけど、でもそれは見た目だけの話で、キラキラ映画の女子高校生主人公って基本的にはリア充じゃなくてむしろクラスに打ち解けられなかったり自分に自信がなさすぎたりっていう陰キャ。

その人がひょんなことから仲良くなったイケメンとの交流を通じて人間的に成長していきながら、同時に完璧に見えたイケメンにも実はみんなには見せない弱さとか悩みがあってっていうのが見えてくる、そしてそのイケメンも主人公によって救われるっていう、そういうのがキラキラ映画の基本プロットじゃないですか。そこに些細なことでさざ波立つ思春期特有の不安定な友人関係が入ってきたり。程度の差はありますけどキラキラ映画ってそういう青春群像なんですよね。『ブレックファスト・クラブ』みたいなことを今の日本で真剣にやってるジャンルっていうのがキラキラ映画なんですよ。直接的には『君に届け』の影響なんでしょうけど。

でこれがそういうキラキラ映画の中でとくに良かったっていうのは役者のアンサンブルがまず良かった。イケメン枠は高橋文哉ね。見た目は佐藤健系統のクール系イケメン、でも佐藤健よりもうちょっとぼけっとして天然的な可愛げがある。それでそのイケメンが生徒会長の茅島みずきに恋をしてラブレターを出すんですけど、茅島みずきっていうのがこの人はモデルさんだから背が高くスタイル良し、眼差しは強く日本人形みたいな前髪ぱっつんの黒髪ロングで実に凜としとる。これ演出が良いってことなのかもしれないですけど言葉の一つ一つを明瞭に区切ってハッキリ話すところがあって、すごいね、頼りがいのある姉御肌の人なんですよこの人は。こんなもん惚れてまうやろっていう説得力がすごい。

さてそんな茅島みずきへの高橋文哉のラブレターを間違って受け取ってしまったのが主人公の桜田ひより、この人はもう説明不要のキラキラ映画(※だけではない)定番アクターですけれどももちもちっとした肌に異様にでけぇ目の赤ちゃんフェイスが強烈で、親友である茅島みずきと並んだときのコントラストがすばらしい。もうそれ見ただけでこの二人がどんな関係にあるのかとか、学校内での立ち位置の違いが一目でわかるし、高橋文哉を横に置けばそれだけで「青春!」っていう感じのドラマが言外に立ち上がってくるよね。ちょい天然クール系スポーツイケメンの高橋文哉、優等生姉御肌の茅島みずき、そして内気で幼いが心の中には情熱と強さを秘めた桜田ひより…実際にはもう三人ぐらいまた違った個性を役者さんが絡んでくるんですが、この三者三様の役者をメインに据えた時点でこの映画はもう勝ちなんだと思う。この三人の芝居を観ているだけで次どうなるかな次どうなるかなってドキドキするんですよ。

それから脚本も良かったなこれは。脚本を書いた吉川菜美という人はキラキラ映画ファンならお馴染みの人で女子高生の悩みとイケメンの悩みを等価で描いた『ハニーレモンソーダ』、女子高生と成人警官の恋愛を描いた『PとJK』、腐女子の友情を軸にした『私がモテてどうすんだ』なんかのちょっと野心的なキラキラ映画を手掛けてきたわけですけど、今回は王道ながら細かな伏線や捻りのある小道具(マキシマムザホルモンのCDとか)の選択、あくまでもキラキラ映画的でありつつリアルな高校生の心情をしっかり盛り込んだ空々しくない台詞がスパイスとして効いていて、展開はわかっても飽きさせるところがない。

と、よいところは多々あるのですが、俺のキラキラ映画評価基準は毎度書いていることですがクラスメートのエキストラ的役者をどれだけちゃんと演出できているか、というところにあり、これができているキラキラ映画はちゃんと画面の隅々まで気を配って撮っているということなので他のところもしっかりと面白いのです。じゃあ『交換ウソ日記』はどうか。これはこれからこの映画を観に行く人にはぜひとも見逃さないでもらいたいのだが、昼飯時にクラスメート環視のもとの行われるクライマックスの告白シーン(誰の誰への告白かはお楽しみだ)、告白側が「付き合ってください!」と叫ぶとクラスメート連中キャーだのギャーだの黄色かもしくは茶色い声で大騒ぎ、しかしそのときただ一人だけ世紀の告白をとくに気にすることなくクラスメートの騒ぎっぷりをぼーっと眺めながら弁当を食い続ける窓際の席に座った男子がいるのである。

合格。キラキラ品質検査、合格です。そのほか教師役でひっそり出ているダンディ坂野の決して押しつけがましくないちょっとした笑いなど心憎い演出多し、いやはやこれはよいキラキラ映画でしたなぁ。

【ママー!これ買ってー!】


ハニーレモンソーダ[DVD]

キャラ設定やファンタジーとリアルの中間な高校生の日常描写など『交換ウソ日記』と通じるところが少なくない、キラキラ映画の佳作。

Subscribe
Notify of
guest

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments