レニー・ハーリン怒りの帰還映画『ブリックレイヤー』感想文!!!!

《推定睡眠時間:60分》

もはやレニー・ハーリン最新作と聞いても元からとくに胸躍らなかったとはいえ今はまったく胸躍らなくなってしまいこの人は既に才能を使い切った人というイメージだったのだが、なぜかといえばタイトルすら忘れていたが中国に招かれてジャッキー主演ジョニー・ノックスヴィル共演で撮った2016年の『スキップ・トレース』とかピアース・ブロスナン主演カート・ウィマー脚本の2021年作『ザ・ミスフィッツ』がその布陣でこれかよというつまらなさで、かつてのあの豪快でキレの良い演出は見る影もなかったからなのであった。

こうなれば逆にである。逆に観たくなる。レニー・ハーリン最新作『ブリックレイヤー』公開! の報を知ったのは二週間ぐらい前にたしか『ドッグマン』を観に行った時のことであった。レニー・ハーリンほどの巨匠(※諸説あります)の最新作の情報が公開二週間前になってやっと予告編という形で入ってくる! この高度情報化社会、誰もがネタバレだのリークだのを躍起になって防ぐこの現代なのにそこまで話題にならないなんてすごい! これはなんとしてでも俺が見届けてやらないとなの謎義務感と、『スキップ・トレース』と『ザ・ミスフィッツ』によりオモシロハードルを大幅に下げているためどんな出来でも楽しく観られるに違いないというマイナス方向にポジティブな判断により、レニー・ハーリン最新作『ブリックレイヤー』、二週間ぐらいの期間限定でいちばん楽しみにしていた映画であった。

ところが蓋を開けてみれば…いや面白ッ! 変な意味じゃなくて普通になにこれ面白ッ! はっきり言ってストーリーに関しては60分の大睡眠をかましているため詳しいことはよくわかっていない! まぁとにかくCIAに恨みを持つ死んだと思われた元CIA職員がCIAを潰すために暗躍しており、その仕事仲間であった元CIAの左官屋さんアーロン・エッカートが問題のCIA絶対に潰すマンをぶっ殺すために雇われて戦うとかそんな感じだろう! だがポイントはそこではない! CIAからウチらの尻拭いやってくれの無茶振り発注を受け当然断るエッカート、やれやれと現場に戻ってレンガ壁を組み始めたところ、突然の雷雨とサブマシンガン銃撃に襲われる! そこからのバトルときたらうおおおおおなのである!

丸腰のエッカートが日常アイテムを的確に使って暗殺部隊をひとりひとりやっつけていく某イコライザーを彷彿とさせるアクションはアイデアもさることながらそれらを切り取るショットも豊富で寄って引いて右から左から上から下からとショットの変化自在緩急自在な組み合わせで魅せる魅せる、それがもう石井隆がお彼岸で現世に帰ってきたのかというものすごい土砂降りの豪雨の中で繰り広げられるわけであり、どざああああああの雨音がダダダダダダダダのサブマシンガン銃声そして暗殺部隊のぐぎゃああああああああ悲鳴をかき消す、映像もすごいが音も一大スペクタクル、これが、こ、これがこのダイナミック・アクションが映画開始およそ6分とかで出てくる…!

この時点でだいたい満足しちゃったのでその後はだいたい寝ているわけだが、開始6分で満足させるなんて『マッドマックス 怒りのデスロード』でさえ成し得なかったことである。帰ってきた…『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリン、怒りの帰還! 不作続きだったここ数年の鬱憤を晴らすかのようにまぁ寝ているから大部分ちゃんと観ていないがダイナミック・アクションの連続! あっちこっちでエッカートが後期セガール映画みたいに人間と一緒に部屋中をぶっ壊しまくりバキバキバキキキキ、そっちこっちで銃撃戦が多発してバババババババそして爆発ドッゴォォォォンンン、車が走るとなれば必ずクラッシュ横転ガッシャガシャアアアアアアア! ドガアアアアアアアアンンンンン!!!!

バカのような映画だと思うがそのくせ国防国益の名目のもと他国の主権をガン無視して世界各国で悪さを働いているCIAの欺瞞を使い捨てにされる現場のCIA工作員の目線から告発するという点で社会派といえる内容であり、マンハッタンと思われるがアメリカをよく知らないのでたしかなことは言えないとにかくアメリカのどこかの摩天楼を空撮で捉えるラストシーンの映像はちょっと感動的でさえあった。このシーンの言わんとすることはこういうことである。CIAは俺たちがアメリカを作ってるんだぜと傲慢をかますが、違う。アメリカを本当に作って守っているのは毎日現場に出て地道に建物のレンガ壁を組んでるような、そんな各分野の職人さんたちなのである。

どうしたレニー・ハーリン…! 急にお前そんな…どうしたよ!? 逆に心配になるよ! レニー・ハーリンいかにもアメリカっぽい名前だけどなんかフィンランドの人らしいのでイラク戦争以降のアメリカを外国人の眼差しで見ていて思うところあったのかな…真相は不明だが、そうとすればこの映画が『スキップ・トレース』とかのあの無気力っぷりがウソのようなエネルギッシュ映画に仕上がったのも頷ける。いや、まぁそれはさておき、ともかくこれはレニー・ハーリン完全復活作といっていい映画だろう。クソッタレCIAに現場から怒りの一撃をぶちかます怒濤の反骨アクション…面白かったですッッッ!!!!!!!

※CIAのカスっぷりを現場から告発する爆破系アクション映画という点では昨年公開の本年度アカデミー爆破賞受賞(俺選出)の傑作『カンダハル 突破せよ』とも通じる。CIAの欺瞞に気付くと映画は面白くなるのだ。某イコライザーみたいにCIAを正義の執行人扱いしている場合ではない。

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