《推定睡眠時間:80分》
いやもうなんだか最近かなり本格的にハリウッド映画が観られなくなってきて寝てしまうとにかく寝てしまう。別に面白くないから寝ているわけじゃないんだといつも書いているが最近のハリウッド映画に関しては面白くないから寝てるんだと思う。そもそも俺は『ジョン・ウィック』シリーズにまるで興味がなくたしか観たのは『ジョン・ウィック:パラベラム』だけだと思うがそれもわりとすぐ眠ってしまって以降本格的な覚醒を遂げることはなかったし、この『バレリーナ:The World of John Wick』なんか配給のキノフィルムズのムービングロゴが終わった段階で寝ているので重症である。
なにがそんなにつまらないのかという話だがたぶん絵空事感が半端ないんじゃないすかね。そりゃハリウッド映画なんかとうの昔から絵空事ではあったかもしれないが、とくにアクション映画においてCGが本格導入されるようになってからその傾向は完全にヒドくなった。かつて伊藤計劃はハリウッドがバリバリにCGを使うようになってあぁよかったこれからはなんでも映画の中で作れるぞみたいなことをブログで書いたが、その点が問題なのだよな。なんでも作れちゃうと映画はどれも同じで退屈になってしまうのだ。
たとえば『ジョーズ』といえばあの背ビレとサメ主観カメラだが、なぜあれが生み出されたかというと予算がさほど潤沢な映画ではなかったので苦肉の策として背ビレだけ見せるとかサメ主観カメラで誤魔化す必要があったそうである。もし『ジョーズ』が超大作でサメスーツみたいなのが何十体でも作れる体制であったなら、きっとこうした節約術から半ば偶然生じた素晴らしいサスペンスは無かったんじゃないないだろうか。
ところが今のハリウッド映画ではCGですべてが(予算の許す限り)作れてしまう。とくに今回の監督レン・ワイズマンはCGアクションの名手としてそれなりに知られている人だが、そうやって全てがCGで作れてしまうと監督はカメラワークや構図や音楽の使い方などといった技巧で作れていないものを誤魔化す必要がなくなってしまう、そしてそのためにその映画独特の面白味も無くなってしまう。こうしたなんでも作れる映画で監督に求められるのは映画を独特の感性や思想でディレクションすることではなく、映画のために作られた様々なものを博覧会的に見せることでしかないんである。
そんなわけで昨今のハリウッド映画はどれを観ても同じようにつまらなく感じてしまう。映像面でもそうだがシナリオや音楽面でも概ね映画制作の各領域でのデジタル導入が本格的にはじまった1990年代以前のハリウッド映画と比べて本当に工夫がなくなったと思う。と全然『バレリーナ:The World of John Wick』の話をしていないわけだが、まぁ、でも、ねぇ。ずっと武器と場所変えて戦ってるだけだしな。こんなの感想も何もないじゃん。TPSシューターのデモ画面じゃんみたいな。ずっと戦ってるだけっつってもそりゃホンモノの武術の達人が腕を競う香港カンフー映画とかならめちゃくちゃ面白いけどさ…。
でしかも『ジョン・ウィック』の世界ってファンタジーだからみんな殺し屋じゃないですか。それがまた冷めるんよ。殺し屋と殺し屋が戦ってても警察も全然こないし一般市民が巻き添えを食らうこともないし終盤の舞台となるカルト村みたいなところは住民みんな殺し屋っぽかったからつまらないことこの上ないよ。そんな誰が死んでもどうでもいい設定で面白い迫真のバトルなんか描けるわけがないし、面白い意外性のあるシナリオも描けるわけもないのだから、なぜか人気シリーズになってしまっているが、『ジョン・ウィック』というのはそもそもその世界観がダメだと俺は思いますけどね。
こんなに興味の無い『ジョン・ウィック』の新作をそれでも観に行ったのは監督がレン・ワイズマンだからで、『アンダーワールド』や『ダイ・ハード4.0』、『トータル・リコール』など、ワイズマン監督作といえば①スタイリッシュな強い女の人が②CGを生かした縦横無尽のスピーディバトルを繰り広げがちなのが特色だが、今回①は一応クリアしていたとはいえかつてのスタイリッシュさは鳴りを潜めていたし、『ジョン・ウィック』は至近距離での銃撃戦や近接格闘が売りの作品ゆえ②はたぶん無かったと思う。ワイズマン映画は結構好きだがこれは面白くない。というか好きなので面白くなかったのであった。
同意。わかりすぎる・・・。6ポイントで見ればよかった。
概ね好評のようなので、映画というよりアトラクションとして楽しんでいる人が多い感じなのかもしれません。