泉鏡花と思いきや赤川次郎ぽかった映画『わたしは異邦人』感想文

《推定睡眠時間:20分》

これ去年の東京国際映画祭で『昼のアポロン 夜のアテネ』の原題直訳タイトルで上映されてて俺それ観に行ったんですけど朝早くの回(※午前中はすべて早朝とみなします)だったからほとんど寝ちゃってちょっと楽しみにしてた映画だから残念だったんですけど、めでたい祝一般公開、新しく『わたしは異邦人』の邦題ももらいましてということでさぁ再び観に行きましたよ『昼のアポロン 夜のアテネ』! してその感想は! うん! …うん!!!

ぶっちゃけ期待外れであった。遺跡のたくさんあるトルコの古都を舞台にした幻想譚といえばいいのかな。主人公はどうも放浪の旅をしている風情の女の人でこの人が件のトルコ古都を歩いているとなんだか関係性がよくわからないが妙に距離感の近い人たちがよく寄ってくる。知り合いなのかなと思えばそうでもないし、それにしては込み入った話をしているし、で何かと言えばこれ実はオバケ、主人公は霊の見える体質で、この人は孤児であるから行く先々で霊たちのお願いを聞いてやったりする代わりに母親の居所を探してもらっているのであったというまぁそういうお話で。

おもしろそうな設定だし日常風景にぬるっと入ってくるオバケ(見た目は普通の生きた人間)にはおっと思わされるところもあるが、それが続くのはせいぜい最初の30分ぐらいだった。ストーリーや演出に起伏がないのはもとから雰囲気系の映画だと思って旅情を味わいに観に行ってるからいいとして、オバケたちの過去や未練がひたすら海辺での単調な会話シーンで明かされていくのはどうなの。そりゃオバケ一匹とかならそれでもいいけどトータル3人分ぜんぶそれで済ませてしまうじゃないの。そこは映画的には見せ場なのだからもっとこう映像で魅せる気とかはないんでしょうか。

そのあたりもそうだしシナリオも稚拙というか、トルコの古都を舞台に死者と生者の世界が交差するとでも書けばなにやら文学香るが、基本的に不憫なオバケたちのベタな泣ける話みたいな感じなので、お話のテイストはラノベとかアニメに近いんじゃないだろうか。そりゃラノベとかアニメが悪いってことじゃあないけれども演出的にはエンタメ系じゃあなくアート系、というかシリアス系? なので食い合わせが悪いんよ。なんですかたとえば『ナミヤ雑貨店の奇蹟』とかさ。このシナリオならああいう感じでもっと通俗的な娯楽作として演出しちゃえばよかったのに。

ってな感じで全体的にあんまり深く考えないで作ったんじゃないかっていう印象は拭えないなぁ。紀元前からずっと成仏できずにオバケやってるので名前も目的も忘れてしまったという古代オバケが観光客の写真撮影に紛れてピースしてるお茶目なシーンがあるけど、でもそれはそこだけでこの古代オバケはイタズラ好きな性格ってわけでもないからな。そういう安易さが横溢してる映画じゃないだろうかこれは。安易とはいえロケ地パワーでなんとなく良いムードに浸らせてもらえるのでまったくダメな映画ではないかもしれないが…。

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