クリスマス与太話映画『クリスマス・ウォーズ』感想文

《推定睡眠時間:10分》

メル・ギブソンがサンタ役のブラックユーモア映画とかいう浅い事前情報から脳内に形成される像は当然ながらビリー・ボブ・ソーントンが素行不良のアルバイトサンタ(デパートにいるやつ)をやってた『バッドサンタ』なのであったがそんなコスプレサンタではなくこの映画のメル・ギブソンは本物のサンタクロース、という予想の斜め上っぷり。そう来るのか…なんて夢のない夢のある話なんだろう!

かつては絵本とかに描いてあるみんなのサンタさんだったかもしれないメルギブも今ではすっかりやさぐれた半隠遁オッサンになってしまった。仕事だからプレゼントは一応配りに行くがもうやる気とか基本的にないし飲んでるしだいたいガキどもだってろくなやつがいないので年々くたびれていく一方だ。それでもオモチャ工場で働くエルフの雇用は維持しなければいけないのでサンタもつらい。サンタ稼業を廃業するわけにはいかないが経営は依然厳しく先の見通しは暗い…かくしてメルギブサンタは米軍と契約を結び軍用機の部品製造をサンタ工場で請け負うのであった。

一方、米国のどこかでは縮小版ドナルド・トランプみたいな極悪こどもプレジデントが石炭をプレゼントに贈って寄越したサンタにめっちゃキレていた。政敵(※同級生など)は金と計略と時には毒物などにより強引に排除することであらゆる分野で常時ナンバーワンの座に君臨している極悪こどもプレジデントであるからプレゼントが石炭とかいう屈辱などはもう耐え難い。これは殺すしかないので極悪こどもプレジデントはプレゼント・マニアの殺し屋にサンタ抹殺を依頼するのであった。

未就学児童がサンタからプレゼントされたオモチャで遊んでいるのを見かければ大枚を叩いて買い取ったりしつつ、サンタの居場所を知ってそうな郵便局員などを見かければ脅迫して始末しつつ、サンタを求めて米国を北上する殺し屋。どうやらサンタはアラスカに住んでるらしい…「おい! 進捗状況の連絡は! 定期的に連絡しろと言ったはずだ!」極悪こどもプレジデントがお絵描きなどをしながら寄越す電話にうんざりしながら殺し屋はサンタ抹殺へと突き進む。

果たしてプレゼント工場の経営はうまくいくのだろうか。極悪こどもプレジデントの邪な願いは叶うのだろうか。殺し屋がサンタさんのプレゼントに執着する理由とはなんなのか…うん、これは与太話! 全裸のオッサンエルフ軍団が雪原をダッシュしたりしているうちに『ダイ・ハード』みたいな展開になってくる怪作『レア・エクスポーツ』を彷彿とさせるクリスマス与太話だね! 大いにしょうもない!

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こっちも最終的になんかちょっとしたテイラー・シェリダン映画みたいになるからな。ちょっとした、なのでぶっちゃけ邦題みたいにウォーズ展開にはならないですけど人は結局10人弱ぐらいは死んでるからね。でも大丈夫これはお子様に配慮した映画なので若干のネタバレにはなりますが死ぬのは米兵とか可哀そうな郵便局員とかだけでエルフさんたちは無事です。まぁやっぱ軍用機の下請け工場とかになったらダメですよ。プレゼント工場は本業のオモチャ製造を優先すべき。クリスマスに向けて今もプレゼント工場は稼働中なのでお子様たちは安心してね! 配慮の方向が何かダイナミックに間違っている気がする映画だ。

こどもプレジデントとかプレゼント工場の経営難とか設定が人を食っていれば展開の方もバリバリにオフビートで人を食っている。とにかく、盛り上がりそうで盛り上がらない。盛り上がりそうになると急に真顔で方向を変えてきてむしろ盛り上がりを積極的に回避していくスタイル。諸々の説明も余裕で放棄するので腑に落ちる感とかまったくない。クライマックスの殺人雪合戦(※銃器使用)の顛末とか「それズルくない!?」って超思うのだがそうなった理由は語られないし、意味深に語られる前工場長エルフ6名の安否とかも最後まで謎のままだ。なんか教訓話っぽく終わるがこんな話からどんな教訓を得ればいいんだ。人にやさしく…とか? スナック感覚で人が死ぬ映画なのに!

なんか、モンティ・パイソンのスケッチを膨らませたような感じだったよな。ブラックで、シニカルで、ちょっとグロテスクで、ちょっとファンタジックで、でも奇想天外と言うには夢がなさすぎて、あと風刺精神に富んでいて。プレゼント工場のエルフ社員食堂のシーンとかおもしろかった。エルフだからバイキング形式で提供される食事は全部お菓子とジュースなんですけどその撮り方が中世ヨーロッパの祝宴みたいな照明と陰影をつけてるから気持ち悪くて全然かわいくない! テリー・ギリアムかテリー・ジョーンズなら喜びそうな絵面ですよね、こういうの。

与太話であるからそれ以上言うこともない。エンドロールに入っても「だからなんなんだ!」としか思えなかったがこの「だからなんなんだ!」は完璧に良い意味なのでつまりそういう映画だということです。殺し屋の境遇はちょっとだけ切なかったけどな。こどもプレジデント同様にこの人もまた望みのプレゼントをくれなかったサンタを憎んでいるが、憎しみは渇望の裏返しということで、この殺し屋ウォルトン・ゴギンズのサンタ殺しは手に入らなかったプレゼントを取り戻すための行為であり、その旅は子供の頃に叶わなかった楽しいクリスマス休暇の様相を呈してくる。そこから原題『FATMAN』の意味するものは読み取れるんじゃないだろうか。まぁ、与太話なんだけどさ。

【ママー!これ買ってー!】


レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース [DVD]

ふざけたことを無駄なほど大真面目にやるところがよく似ている。

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