漫☆画太郎 in USA映画『ファイナル・デッドブラッド』感想文

《推定睡眠時間:0分》

だっはっは! いやもうまったくこんなもん大爆笑である! 奇想系の真面目なホラーだった初代『ファイナル・デスティネーション』は遠い空の彼方、現代のウィリアム・ガードラーと俺によって呼ばれたジャンル映画職人デヴィッド・R・エリス(事故によって夭逝というのもガードラーと同じだ)が手掛けた2作目『デッドコースター』もダイナミックな演出が突き抜けて笑えるところもないでもなかったが目指すところはちゃんとしたホラーだったのに、そのうち若造どもの無残死を笑いながら楽しむ人でなしブラックコメディと化してしまったシリーズのこれは何作目かわからない続編、というかリブート版? なのだが、これはもう完全にギャグですね!

冒頭、今回は1950年代ぐらいから話が始まるのだが、一組のカップルがスカイタワーという当時としては最先端の高層展望レストランを訪れる。この東京タワーの半分くらいの高さはありそうだが灯台型の構造上展望レストラン以外にテナントは何も入っていないという完全に無駄な建造物のエレベーターにカップルが乗るとエレベーターボーイが「すごいでしょ! このレストランはなんと予定より5ヶ月も早く完成したんですよ!」と死亡フラグでしかない死亡フラグ発言、この時点でもう可笑しいが展望レストランに入るとそこは床がガラス張りという割ってくれと言わんばかりの無茶振り建築、しかもそこにはバンドが来ていてこう歌っているのだ。「ジャンプジャンプジャンプ! さぁみんなでジャンプ!」もちろん案の定なことになるので説明は不要だろう。

さて案の定なことになったらもう大パニック、泣きっ面にハチ的にレストランの火が引火して火だるまになる客もいれば、レストランが傾いて落ちる~と思ったら落ちなくてホッとしていたらグランドピアノが落下してきて顔面粉砕死する客もいる、これは大変だということで仕事熱心なエレベーターボーイは満を持してでっけぇ声で叫ぶのであった。「みなさんこちらです! 階段で避難してください!」おめーそれはもう意図的な死への誘導だろ! 見事に烏合の衆となって階段に殺到した客たちの運命は言うまでも無いですね! ひぃぃぃ! 高所恐怖症の俺は顔を歪めてしまったが歪めながら爆笑。

ということで今回はホラーなんて形ばかりでほぼほぼ漫☆画太郎の世界、死の運命から逃れるためにリブート版『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティスみたいに家を要塞化したご老体が出てくるが、その要塞ハウスときたらアチラコチラにトゲトゲしたものや錆びたものなどが無駄にあってこんなもん逆に死の危険を自分から作ってるだろ! と笑い、今回の目玉であろう殺人MRIマシンによる惨死シーンでは全身にピアスを開けた危機管理能力マイナス500のアホアホ兄ちゃんのピアスが耳、鼻、乳首、なら次は…と上から下にブッチィィィ引き裂かれるバカ下ネタ炸裂、先に書いた階段に殺到した客たちが一斉に崩落死するギャグも階段に避難、からの全員死亡ということで漫☆画太郎のいつものアレを連想せずにはいられなかった。そういえば漫☆画太郎も『地獄甲子園』で家の中のいろんなもので死ぬみたいなのやってたもんな。

ちょっと触るだけで崩壊する豆腐人体とちょっとミスが重なるだけで1000人死ぬ豆腐建築しか存在しない恐怖大国アメリカ。とりあえず家族愛入れとけばなんでもいいだろ的なヤケクソ感だがラストは家族愛すら面倒臭くなったのかどうでもよくなってしまう。サイコーにテキトーだ。あまりにも世界観がテキトーなので邦題も『ファイナルデッド・ブラッド』とテキトーに付けられてしまい意味不明なのもまた可笑し(原題は『FINAL DESTINATION: BLOODLINES』で血脈とか血筋の意)

この映画、当初劇場公開されず配信スルーの予定だったのがネットでの反響を受けて急遽公開が決まったという経緯により、東京では二館しかブッキングできなかったようだが、俺が観た劇場では三連休の全回が満席だったから、こういうふざけていて血の気の多い楽しいホラー映画を日本の映画観客はちゃんと求めていたらしい。どうしたことか近年の日本では配給側が萎縮して(?)エクストリームなど一部の尖った会社以外は血の気の多いホラーの配給に及び腰になっていた観があるのだが、大丈夫です、ちゃんと客入るからこういうの普通に配給してください。そして製作する側も『犬鳴村 恐怖回避ばーじょん』とかふざけたことやってないで普通にコワい映画を作ってくれ。いや、『ファイナルデッド・ブラッド』は全然コワい映画じゃないけどね!

※初代『ファイナル・デスティネーション』に出演した『キャンディマン』ことトニー・トッドも初代とだいたい同じ役柄で再登板。トニー・トッドはこの映画の撮影後に亡くなったのでエンドロールで追悼されていた。死の運命から逃げまくる映画に出て辞世の句のような台詞まで残して遺作にしたのだから、ホラー役者冥利に尽きるカッコいい去り際である。

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