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シェルビー・オークスというのは映画の舞台となる町の名前なのだがその町が廃墟、そしてその町で失踪した妹を探しに姉が単身その地に足を踏み入れて恐怖体験を……というわけでどうも来月に続編が公開予定の映画版『サイレントヒル』に影響を受けた気配が濃厚、ラスボスもゲーム版『サイレントヒル』の初代と同じだしな。しかしそれがわかってくるのは結構中盤からで最初の二十分くらいは心霊スポット突撃系ユーチューバーチームの失踪事件を題材にしたドキュメンタリー番組の体。こ、これは『ジャージーデビル・プロジェクト』ではないか! とおもった。
『ジャージーデビル・プロジェクト』というのはかの有名な『ブレアウィッチ・プロジェクト』の少し前に公開されたマイナー映画だが、心霊スポット突撃系ポッドキャスターチーム(お前らもかよ!)がUMAジャージーデビルの生息すると噂される森の調査中に不可解にして凄惨な死を遂げた怪事件を検証するドキュメンタリー番組、という体のフェイクドキュメンタリーで、内容の類似点の多さから『ブレアウィッチ・プロジェクト』この映画パクったんじゃない……? と当時ちょっとした話題となった作品である。
とそんな具合に妙にあの映画っぽいあの映画っぽいが頭に浮かぶ『シェルビー・オークス』、どのへんが盛り上がっているのかよくわからなかったがなんとなく日本のネット空間では待ち望んだあの映画的な受け止められ方をされているみたいで? たしかに白飛びして真っ白けな女の人が映っているポスターは心霊写真みたいで不気味なのでおぉこれは怖そうだな、観たいな、と俺も思っていたのだが、まぁ、観たらあの映画っぽいあの映画っぽいなのであった。製作総指揮の一人に名を連ねるのはマイク・フラナガンだが、失踪した家族の謎を云々というストーリーと立ちこめる不気味ムードはフラナガンの初期作『人喰いトンネル』を思わせたりもする(日本のサイトにはフラナガンの名前が載ってなかったので確認のためにIMDbを見たらプロデューサーが50人ぐらいいてのけぞった)
オリジナリティこそないがオリジナリティがないということはいろんな映画の面白いところを取ってきてるということでもある。なんでもこの映画の監督クリス・スタックマンはアメリカの映画評論系ユーチューバーだそうで、ファウンドフッテージと廃墟探索ホラーと心霊ものと悪魔ものとアーサー・マッケンものと……といろんなホラーサブジャンルをミックスした作りはなるほど映画マニアっぽい、けっこう楽しい。いろいろ混ぜているがために統一感がなくて怖さはそんなでもないのだが、それでも絶望的なラストはホラーとして俺が個人的にやってほしいと思っていることをちゃんとやってくれていたのでよかったです。
まぁ言いたいことはそれぐらいなので、薄味のホラーではあるかもしれない。