キラキラ映画完全粉砕コント映画『ロマンティック・キラー』感想文

《推定睡眠時間:0分》

もう何年も前の話になってしまうがこの映画の監督・英勉の映画『トリガール!』を観た時にこれは鳥人間コンテストの映画なのだが鳥人間コンテストの屋台骨である技術屋の学生たちが完全モブとして扱われている上に全員メガネというそりゃメガネは別に悪いことではないがその描き方はねーだろと観ながら静かにブチキレていたので(あのころ俺は若かった)この『ロマンティック・キラー』の冒頭で主人公のゲームとチョコとねこが大好きで友達は一人しかおらず恋人は当然いないが別にそれで困ることもなく毎日ゲームとチョコとねこを浴びて超エンジョイという上白石萌歌に「悪」の妖精がおまえが恋愛をしないせいで妖精界はめちゃくちゃだテメェはいいから恋愛しろとあたかもセッ○クスしなければ出られない部屋の如く強制恋愛に駆り立てるのを見てうわ~いかにも英勉っぽい体育会系テレビ屋の無神経さとインドア人間に対する無理解さ~と原作付き映画とはいえ思ったのであった。

しかしそこは『あさひなぐ』などエネルギッシュなバトル女子を数多く描いてきた英勉、それならばと主人公をまぁ原作もそうなのかもしれないが徹底したバトル女子として造型してここに激烈なアンチ・キラキラ映画が誕生した。絶対に主人公に異性恋愛をさせたい悪の妖精(高橋ひかる)と絶対に異性恋愛をせずゲームとチョコとねこの毎日を取り戻したい主人公のバトルが勃発するのだがそのテンションが尋常ではない。すわ『ケンタッキー・フライド・ムービー』かと思うほどもう世の恋愛(系)コンテンツのパロディ絨毯攻撃。『愛の不時着』、『刀剣乱舞』、『君の名は。』『ビューティフルライフ』(!)、更には『名探偵コナン』までパロディ化され……って『コナン』は恋愛でもなんでもないだろ!

しかしそんな些細なことを気にする英勉ではないので映画の終盤には『妖怪ウォッチ』からこれはパロディではなく本家ジバニャンが実名で登場しその役を演じるのは矢本悠馬とおい! ふざけてるだろお前! こんなのもう映画でもなく『とんねるずのみなさんのおかげでした』じゃねぇか! 『仮面ノリダー』とかだろこれ! 発情した一山いくらのイケメン男子群団推定100人のゾンビ映画的集団求愛を上白石萌歌が全員ぶん殴って蹴散らしていくヤンキー映画の如しアクションシーンとかもうめちゃくちゃだよ!

こんなめちゃくちゃをされたらセンスが合おうが合わなかろうが笑ってしまうのでしょうがない。良い意味でも悪い意味でも英勉のテレビバラエティ感性が大爆発、良い意味でも悪い意味でもテレビバラエティ人脈により無駄に豪華なカメオ出演陣を引っ張ってきたりもしてその使い方が心底くだらなくて大の大人たちがなんてしょうもないことをしているのだろうと……完敗だなこれは。何と戦っているのかはよくわからないが完敗だよ。強制恋愛がテーマのわりに同性の求愛者がモブにも一人も存在しないあたりはこの監督というよりは邦画ティーン向け娯楽作の限界だとは思うが、あまり深い考えもおそらくなくひたすらふざけにふざけた結果として人間は恋愛によって成長する生き物なのです的なキラキラ映画の保守性を瓦礫の山に帰すそんじょそこらのリベラル社会派映画じゃ太刀打ちできないラディカルさを獲得しているのだから、これは完敗というほかない。

それに上白石萌歌がずっと最高。どうせ100人ぐらいインパール作戦みたいに雑投入されるからこの際イケメンどもなんかどうでもよく、オーバーなオーバーアクションで恋愛脳のイケメンどもをなぎ倒していく上白石萌歌のパワフルなコメディエンヌっぷりは実に痛快、実に愉快。最後の方じゃ竹林のコスプレまでしちゃったりしてね。一説によるとお笑いの世界では衣装モノはもっとも安易で低俗なウケ狙い手法として軽蔑されているというが(※要出典)とにかく笑いが取れればなんでもいいんだという英勉の仁義なきお笑い演出により竹林となって暴れる上白石萌歌! なんなんだこの映画。良い意味で作ってる人たち全員バカなんだとおもいます。

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