ホモソ恐怖大劇場映画『ぐらんぶる』感想文(途中から多少ネタバレあり)

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , , , , , ,

《推定睡眠時間:0分》

なにが起こっているのかわからない。離島でのスローキャンパスライフを夢見てその島にやってきた主人公であったがふと目覚めると早くも全裸。大学の敷地内でなぜ俺は全裸になっているのか…と、マジックで身体に書かれた文字に主人公は気付く。どうやら指令のようである。ひとまず書かれた場所に全裸で向かうとそこにあったのはトランポリンとその上に吊されたボクサーパンツ。飛べってことか…チンを振って!

ボクサーパンツを獲得したのでとりあえずは外を普通に(?)歩くことができる。記憶を整理してみよう。えーっと、まず島に降り立って…それから叔父さんの経営する海の家に行った。そしたら可愛い女の子がいて、いいなーって思いながら海の家に足を踏み入れると…そこから先の記憶がない。いったい海の家で何が起こったのだろう? ボクサーパンツ一丁で恐る恐る件の海の家を再訪した主人公が目にしたのは…青い空であった。青い空の下に最初と同じように、主人公は全裸で横たわっていたのだ。この島は一体…。

ポスター、なんか水泳の映画かなとか思うじゃないですか。主演のイケメン二人が水潜ってるので。原作漫画とかアニメ版を観た人はそうじゃないのかもしれないですけど俺はそう思ったんです。映画観て、今の俺はあのポスターから別のものを連想します。そうだなぁ、『幕張』。野球部の漫画なのに野球を一回もしないで全裸とパロディと下ネタと同業者イジリばかりやっていた木多康昭の『幕張』です。『幕張』のコミックスも表紙だけ見ると野球漫画かなって思いますからね。

いや~映画って、観るまでわからないものですね~。『幕張』、そして『稲中』。『ウィッカーマン』、そして『ハッピー・デス・デイ』。以上まとめますと実写映画版『グランブル』、『幕張』のキャラが『稲中』的なギャグをかましつつ『ウィッカーマン』みたいな島で『ハッピー・デス・デイ』をやる映画でした。そんな風に思わないよ~びっくりしちゃったな~。高嶋政宏が『ウィッカーマン』で言うところのクリストファー・リー! そんな風に思わないよね~。竜星涼が『幕張』で喩えるなら塩田で犬飼貴丈は叶親! そんな風に思わなかったですよ俺は俺は~。ダイビングの物語らしいけどダイビング、トータル15分もやってなかったですからね。あとはだいたい『幕張』的全裸と『稲中』的変顔。どんな映画だよ!

安易に怪作とか言いたくないのだがこれは怪作だ。怪作というより壊作といったほうがよいだろう。俺はいったい何を観ているんだ。今年観た映画の中でいちばんそう思った。俺はどれぐらいの間この映画を観ているんだ。こないだ観た上映時間8時間超の『死霊魂』よりもそう思った。なんであれインパクトがあるのは映画として良いことだ。それが面白いかどうかはまた別の話だとしても。

以降若干ネタバレ絡んで来ますんで何も知らずに映画を観て衝撃を受けたい人は絶対に読まないように!

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こんなわけのわからない映画をどこのどいつが撮ったんだよ大丈夫なのかよそいつと思いましたらコミカル系キラキラ映画を支えてきた英勉(「えいべん」ではなく「はなぶさ つとむ」と読みます)監督でした。あんなに謎だらけだった壊作映画も英勉が監督と知ればなぁんだと納得してしまう不思議。確かに題材そっちのけで昭和バラエティ的なギャグにはしる映画ばっか撮っている監督ではあった。『トリガール』とか『あさひなぐ』とか。

『あさひなぐ』はそれでもコメディとドラマの配分が絶妙でAKBグループが主演とかいう完全なるキャストありきの企画映画にも関わらずユニークな学園スポーツ映画として面白く観れたものだったが、『トリガール』なんかは大好きな土屋太鳳チャンが出ているのに俺がタイムコップだったら映画の撮影中に戻って命を賭して破壊工作を展開するであろうと思わずにはいられない最悪の糞であった。

何が嫌かってね、英勉テレビ畑の人だからすげぇ体育会系なんですよね。めちゃくちゃホモソーシャルに浸かってるの、男を描くときも女を描くときも。それが『あさひなぐ』では面白い方向に転んだし、だけど『トリガール』ではマイナス方向に転んでたんです。『トリガール』の冒頭なんか酷いもんだからね。土屋太鳳が進学した高専に初めて登校する時にバスに乗るんですけど、「高専だから」乗客の生徒が全員メガネかけてるんです。で、それを見て土屋太鳳、ぎゃ~全員メガネ~って叫んでバス降りちゃうんですよ。

ある? こんなの。なんでもかんでもポリコレ守ってりゃいいってもんじゃないとは思いますけど、いくらなんでも無くない? メガネかけてるやつがキモイとかいつの時代っていうかどの年頃の感性だよって思うし…だけど、英勉そこに疑問は感じないんですよね。っていうのはこの人がホモソーシャルな関係を通して人間を見る人で、メガネがキモイっていうのは2020年現在全世代的にあまり一般的な感覚ではないと思うんですけど、まぁ大学の飲みサーとか非常に狭い、ホモソーシャルなグループの中では共有されうるし、英勉はそこで通じるものなら世間でも通じるだろうって考える。

まぁ、非常に危うい。要は差別を差別だとわからない人なので、『ぐらんぶる』の中にもいつの時代だよっていうゲイネタ、主人公が相棒とくっついてるところを意中の女の子に見られて「そんな人だと思わなかった!」「ち、違うんだ!」っていうのをやるんですけど、もうさすがにそれじゃあ笑えないよね。だけど、脚本も書いた英勉はまだそれが笑えるって思ってるんですよ、それが笑えるホモソーシャルな世界でしか生きていないから。

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そういう意味では英勉らしさが非常に色濃く出た映画で…ダイビングサークルってのが出てくるんですけど、そいつらがみんな常時半裸。で、そいつらがとにかく無個性で全員で一緒に酒飲んで踊ることしかしない。『あさひなぐ』はAKBグループが主演なのでキャラクターを立たせる演出を結構やってたんですけど、英勉の描くサークルって『トリガール』とかそうなんですが個人の集まりじゃなくて個の存在しない全体で一つの集団で、集団であるためにずっとみんなで共通の作業をやってるんです。この映画の場合だと半裸と酒とダンスがそう。

だからパワハラとかそんな概念はこいつらに一切無くて、まぁ漫画の映画化だからギリ笑える感じで済んでますけど、リアルに考えたらこのサークルめっちゃ恐怖。だって毎日記憶なくなるまで主人公に酒飲ませて意識失ったら全裸にして学校の敷地内に放置してますからね。やばいっしょ。普通に犯罪じゃん。そこらへんが『ウィッカーマン』感で…またそれを英勉は異常なこととして理解しないで当たり前のこととして描くから、そのへんの図太すぎる無神経が本当にねぇ…良くも悪くもこの映画をとんでもない領域に持ってったなと思いますよ。

そういう思想の持ち主だからあんま現場で意見できる人もいなかったんじゃないの。どう考えてもおかしいんですよこんなの。ストーリーが狂ってるもん。意味わからないよマジで。途中でなんか急にミスコンの話になってさ、そこで悪いイケメンみたいなのが急に出てきて急に主人公たちに成敗されるんですけど、お前は誰なんだよっていう。でその後に急に主人公の恋路を邪魔する非モテ男二人組が絡んできて急にブラジャー被ったりする昭和ギャグをやるんですけど、そいつらそのシークエンスで結構セリフもある役だったのに以降出てこなくなっちゃうんですよ。

もうね、全部行き当たりばったり。無意味に長いギャグパートと本気のダイビングパートが乖離し過ぎ。壊れっぷりが『ロスト・ハイウェイ』レベル。そもそも最初のリピートパートで30分ぐらい尺使ってる時点で正気ではないんですよ。いやその尺あるんだったらキャラクター描写とかダイビング描写とかに使えやってなるもん。だけど! 英勉のホモソーシャルな世界ではこれがおかしくないわけです。結果としてインパクト絶大な映画になったわけだから俺それで良かったとは思いますけど…とにかくね、やばいよこれは。映画もやばいし、英勉もやばい。

※笑顔&谷間見せ要員のグラドル小倉優香は可愛いが英勉演出によって部族感が出てしまいその笑顔が少しだけ怖くなる。

※※一応ホモソーシャルの良さも描かれており、陸では酒飲んで踊って後輩を全裸にすることしかしないろくでなしサークラーたちも海に入れば優しくて頼りになる先輩。ダイビングは命がけのスポーツだ。他人に同調を強要する分、この人たちはいざとなれば(そこまで映画では描かれていないが)自分の命も他人のために捨てるんである。なんだか日本神話の荒ぶる神々のようだ。

【ママー!これ買ってー!】


幕張 1 (highstone comic)

英勉なら『幕張』の実写映画化も可能なのではないか!? と一瞬だけ期待を抱かせるがそれめっちゃ嫌だなって思い直す。

↓原作


ぐらんぶる(1) (アフタヌーンコミックス)

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