トム・ハーディいっぱい映画『レジェンド 狂気の美学』の美学なき感想(ネタバレなし)

《推定睡眠時間:20分》

うーむうーむ、これはなぁこれはうーむ、あんま面白くなかったなぁ。
うーん…どこがレジェンド? はぁトム・ハーディ一人二役のギャング・クレイ兄弟は実在の人、はぁ60年代ロンドンを牛耳っていた、はぁその伝記もの。すごく怖い人たちなのかもしれないがブラックユーモアをまぶしつつ細かいエピソードとか会話の間の面白さで見せるような映画で、かつクレイ(兄)とその情婦のラブストーリー仕立てというわけで…レジェンド感が全然ないぞ! ヤバみもなけりゃ狂気も美学もそんなにないぞ!

というそんな感想。

でもトム・ハーディ一人二役は面白く、あの予告編とかに入ってますけど冒頭のギャングカーの後部座席に座るクレイ兄弟。ちょっと、これふざけてるよな。クレイ(兄)とクレイ(弟)の対比っぷり。ギャグ漫画みたいな分かりやすい絵面。笑っちゃう。
理性をうっかり無くしてしまった超凶暴なクレイ(弟)と頭脳明晰でスマートなクレイ(兄)。そのよな触れ込みだったはずで、冒頭のこれとか見て更には邦題も鑑みいったいクレイ(弟)はどれだけ狂っててどんな風に暴れるんだろうなぁと期待が募ったのですが、あれそんなに狂ってないしそんなに暴れない。
空気の読めないちょっと変な人ぐらいな感じなので、視線鋭く口はいつも半開きと凶暴な見てくれのクレイ(弟)だったが、冒頭のギャグ漫画的印象はたぶん正しくこれはトム・ハーディのコメディ芝居なんであった。
突如として兄弟が根城にするナイトクラブのステージに乱入、全然面白くないし意味もわからない小話を始めて客をドン引きさせるクレイ(弟)のトム・ハーディ。おもしろかったです(頭の悪そうな恋人だけが一人大笑いの地獄絵図)

あとオシャレだよねなんか。クレイ(兄)、後に情婦となる手下の妹と運命の出会いを果たした時にキャンディ貰うんです。後日のこと、彼女が部屋でなんかしてると窓に石のよなものがピシピシ当たってる。なんじゃいなと思って外を見ると窓の下にクレイ(兄)がおる。やぁね石なんて投げたの? 石じゃないよキャンディさ、ほら君が好きなあのキャンディ。小粋ですね。

あのそれはええんですがやっぱライト過ぎるようなライト過ぎるっていうかギャング感があんま無いのはやはりやはり。もう兄弟がそれなりの立場に収まってるとこから話が始まんので成り上がりの高揚感とかそういうの無く…激しい抗争とかそんな無いので盛り上がる感じも別に無く…組の人たちのキャラが薄くて二人のトム・ハーディばかり出てくんのでギャングというか変人実業家コンビみたいに見えてしまい…。
対立してる組の人が裏切者だかを裁判に見立てて拷問してる。「真実を言え!」「だから俺は悪くないって!」「嘘つけ! はい死刑!」「そんな!」「静粛に! 静粛に! 勝手に殺すんじゃねぇよ裁判なんだから裁判官の判決待てっつーの!」
このギャングはゆるい…。

あれかそういうゆるさが面白いのかもしんないな結構寝てたから知らんけど。トム・ハーディいっぱい見れてお得だし。あぁ下らなかったなトム・ハーディの一人喧嘩! トム・ハーディとトム・ハーディが取っ組み合って「タマはやめろ! タマは反則!」とこう叫ぶ映画が果たして他にあるだろうかと!
あとは、ゆるラブコメでもなんでももっとクレイ(弟)が凶暴だったらなぁと…伝記ものというから実際のクレイ(弟)そんなに狂ってなかったすよと言われたら返す言葉もないのですがそこはほら映画じゃん映画なんだからもっともっと狂ったトム・ハーディ様が暴れる姿が見たかったのにぃぃぃ!

あたまがおかしいとその界隈で評判だったが実は子供たちが平和に暮らせるネバーランド建設を夢見てたりもするクレイ(弟)の狂い咲きドリーマーっぷり。その吸引力がもっとあればクレイ(兄)の悲劇が際立ったと思うのですが…。

(文・さわだきんたま)

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ジェレミー・アイアンズが二人いるというだけで既に恐ろしい一人二役映画ですがあれだな双子とギャングのキーワードからデヴィッド・クローネンバーグが『レジェンド』撮ってたらこんなもんじゃなかったよなと思ってしまうんだったとさ。

↓その他のヤツ

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