感想書きにくいよ映画『ベイビーわるきゅーれ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

いや感想書きにくいよ。なんかこういうJインディーズ周辺の低予算映画って作り手と客の距離が近いから作ってる方とか熱烈なファンとかが読むじゃんこういう泡沫感想でも。そしたら悪く書いた場合に僻みとか逆張りとか思われそうで嫌じゃないですか、俺も脚本賞とかよく応募してるわけだから。あともう一つ嫌だったのは、みんなこういうの考えるんだろうなっていうさ。それでちょっとだけだけど落ち込みましたよ。

率直に言って俺はこの映画の脚本はそんな面白いと思わなかったんですけど、これってなんか女子高生がバイト感覚で殺し屋稼業をやるお話じゃないですか。あーうぜーめんどくせー早く死んでくれないかなーみたいなトーンで。殺しっていう重い行為をオフビートに軽々しく描くタランティーノとか三池崇史とかのあの系統のっていうか。ありふれた殺し屋のイメージは『復讐 運命の訪問者』がかなり決定的な影響を今の若い映画好き監督に与えてたりするからこれもまぁその範疇だろうと思うんですけど。

だからさ、そういう脚本を書くんだよ若い映画好きは。これ面白いだろうって思って。青年誌漫画とかでも殺しをあえて軽く扱う劇画的な復讐系漫画のジャンルはいつでも人気ありますし…俺も夜勤のオッサン派遣殺し屋っていう設定の公募脚本二年ぐらい書いてたんだよ、これ面白いだろうって思って。今読んでもそれは俺にとってはそれなりに面白いし生意気にも社会批判入れたろって感じで失踪技能実習生とか電通過労自殺とかの時事ネタを絡めたりしてさ、自分で言うのもあれですが真面目にやってるなぁとか思いますけれども、まぁでもそれはどこの脚本賞の一次選考も通過しなかったよね。

その理由というのは今ではある程度わかってて作者たる俺の世界観とか言いたいことが前に出すぎていて娯楽映画の脚本としてどうなのっていったらそれは全然ダメだったんですよ。だからそれ以降はちゃんと他人に見せるもの、あくまで設計図に過ぎないものっていうのを意識して、それからはわりと入選ぐらいまで持ってけるようになったんですけど、えー、『ベイビーわるきゅーれ』から既にして非常に離れた地点まで来てしまっておりますが、あのねだからそういうのがあるから感想書きにくいんだって!

なんか色々と脳裏に去来するんだよ! なんとなくの恥ずかしさもあって、懐かしさもあって、こうやれば良かったのかもなぁっていうのもあれば、俺だったらここはこうしないけどなっていうのもあって、俺がそれなりに斬新(恥)だと思っていたアイディアをみんな書いてたんだなっていうのもあって…だから俺はこの映画を単純な娯楽映画としては観れないし、で作ってる方とかこの映画の熱狂的なファンの人とかだって俺の感想を単なる一観客の感想としては読めないじゃないですか、ちょっとノイズ入るじゃん「嫉妬かな?」みたいな。いや嫉妬じゃねぇよって言うけど言ったところでさ。うーん。

書きにくいわー。感想が書きにくい映画だよこれはー。

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まぁでも観た映画の感想は可能な限り書かないといけないという迷惑な俺ルールがあるんで感想書きますけどそうだなもう悪い感想の予感しかしてないので先にね先に良かったところを書いておきますけど殺し屋女子高生の片割れ伊澤彩織のキャラクターとアクションがすごく良くて、意外やアクションシーンがそんなに多い映画ではなかったんですけど最後のバトルで見せるガンアクションと近接格闘をくっつけたある種ガン=カタ的な動きとかコミュ障的なキャラクターとのギャップもあってめっちゃカッコよかったですよ。ちょっとブレイクダンスっぽい動きも混ぜたりしてね。

俺にとってはそこに至るまでの過程がそんなに面白くなかったものだからこれは伊澤彩織にとってのブルース・リー映画(ストーリーは限りなくCに近いB級だがアクションは尋常ではないという意味で)みたいなものだなってぐらい思って、でスタッフロールを見たらアクション監督は『ハード・リベンジ・ミリー』とか『東京無国籍少女』みたいな低予算女性アクションで超本格的な擬斗を作り上げた園村健介という人。びっくりしたからなー『東京無国籍少女』は。そりゃあすごいアクションシーンになるわけです。そこだけでも観る価値は多いにある映画だと思うな『ベイビーわるきゅーれ』は。

あとヤクザの理不尽な暴力とかも怖くてよかったですね。もう本当に理不尽で。うん。そうだなそこよかった。そこはよくて…後はわりと全部ノレなかったな俺は! 温度差の面白さを狙ったと思しき躁的演技は騒々しいだけに思えたし、それを含めたコメディ要素はヤクザ系の暴力ギャグを除けばほぼほぼ全てが(俺にとっては)ぎこちなくてスベっていたし、あとこれは殺し屋映画っていうか青春映画的な側面の方がシナリオ面では強いので、女子高生殺し屋コンビの友情とすれ違いがドラマの中心になるんですけど、そこは俺の感覚じゃなくても普通に描写が全然足りないと思う。

一応流れとしては仲良し二人の片方が社交性があってもう片方が社交性皆無っていう『まんが道』的なアレで、それが殺し屋会社(いや俺はここももうちょっと突っ込んで描いてよかったと思うんだよ)の命令でバイトデビューを余儀なくされると二人の住む世界が離れてしまって、でそこにヤクザが絡んできて云々なんですけど、その離れていく過程と社交性のある方が殺し屋ではない新たな居場所を見出す過程を一つ二つのシークエンスで記号的に処理してしまっているので、それが招き寄せるラストの戦いがドラマティックに盛り上がらないんですよね。

そういう記号処理的なところは結構多い映画で…たとえばヤクザ側に「主人公たちはこいつと戦うんだろうな~」っていう強そうな感じの人がいて、でもその強そうな感じの見せ方がずいぶん雑だなぁと思った。一例として強そうな感じのやつの実力を一切見せないっていう手があるじゃないですか。ただ不気味だったりヤバそうな空気だけ醸してて実際どれぐらい強いのかわからないけど、いざ主人公たちとのバトルに突入するとめちゃくちゃ強いことが判明するっていうパターン。あるいはまた別のパターンとして強そうな噛ませキャラを用意しておいて、そいつと一戦交えてボッコボコにすることで観客に強そうな感じのキャラの強さを印象付けるっていうのもありますよね。

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この映画その間を取ってて強そうな感じの人が喧嘩をするシーンがあるんですけどその相手が普通に弱いからそうすると単に好戦的なだけの普通の人にしか見えなくて、なんか「もっと強い奴と戦わせろ!」みたいなことを言うんですけどいやそんなこと言われてもお前の強さわかんねぇしな…って感じで主人公たちとの戦いに向けて盛り上がっていく感じがここにもないんですよね。でなんでそんなことになってるのっていうこれは俺の想像ですけど、この強そうな感じの人が腕試しをしてボコす相手が暴力邦画が好きな人にはお馴染みの人なので、あの人がボコされるっていう内輪ウケ的な面白さを取った結果なんじゃないですかね。

なんか、そういう印象をそこかしこで受ける映画だったんですよ。記号処理的なドラマ展開で良しとしてしまうのもジャンル映画のファンならそんなの知ってるだろみたいな内輪っぽさっていうか、すげー生意気な言い方になりますけど観客に対する甘えみたいのがあったと思うんですよね。台詞とかもネットあるある的なやつを結構入れてきたりして…野原ひろしの偽名言を言おうとするやつはクソとか…それはまぁクソには違いないだろうけれども野原ひろしの偽名言を言おうとするやつはクソっていうコピペ台詞をドヤ顔で言う奴もそれなりクソっていう感じもあるじゃん。

そこはもう少し距離感っつーか批判的な視座があって欲しかった。こういうの好きでしょ? わかるでしょ? って上映中ずっと言われてるみたいでキツかったんだよな。まぁでも難しいですよ、好きでしょとわかるでしょがないと観客喜んでくれないし。今の邦画インディーズ周辺ってどれだけ固定客を作れるかみたいな商売になってるじゃないですか。それなぁ、短期的な商売としては正しいのかもしれないですけどそこに発展性とか映画監督としての誠実さはあるのかなぁ。全然関係ない映画ですけど邦画インディーズ界隈で大いに話題を呼んだ『花に嵐』とかも俺はすごい嫌だったし全然面白くなかったですからね。あれは本当に好きでしょ? わかるでしょ? だけで構成された映画で…まぁいいんだ違う映画の悪口は!

っていう感じです俺の『ベイビーわるきゅーれ』感想。あぁ書きにくかった!

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