金曜ロードショー的SF映画『トゥモロー・ウォー』感想文

《推定ながら見時間:40分》

いやめっちゃ面白かったよ。未来行ったり過去行ったりノンストップでぐわんぐわんしてさ、もうバババーって銃とか撃ちまくってな、エイリアンがダダダーっと大群で襲ってきてそれで航空支援がドカーンてなって、伏線そう来たかーってなってうわーでもそうなるのかーってなって最終的にJ・K・シモンズ。いいじゃないですか。これが映画だ! とか別に言うつもりはないですけれども全然期待してなかったから喜びも大きい。金曜ロードショーとかで子供の頃に観てたら映画好きになるキッカケの一本になってたかもしれん。

Amazonオリジナルはクセの強い映画が多いがこれは王道のジャンル映画、Netflixのジャンル映画がヒューマンドラマ要素を過剰に前に出したり無駄にアーティスティックに寄せたりしてつまらなくなりがちなことを思えばこの洗練された王道っぷりは立派です。金曜ロードショー的なこういうのが見たかったのよーにちゃんと応えてくれる動画配信サイトのオリジナル映画はそれだけで貴重なものだ。これなんかは配信というよりも新コロ禍が落ち着いていれば劇場公開もあったのかもしれませんが。くそーコロナめ! あちなみにストーリーもなんとなぁく新コロ禍の影響を感じさせたりしました。まそれはいいとして。

俺の能力はこんなもんじゃねぇんだよと思いつつも実務経験がないがためになかなか科学者への転職が叶わない高校科学教師のクリス・プラットは娘の誕生日パーティだというのに機嫌が悪い。妻のベティ・ギルピン(『ザ・ハント』のあの人だ)との仲も悪化の一途を辿りいよいよ離婚秒読みか、と思われたその時、ぼーっと見ていたサッカー中継にまさかの光景が。なんというかこうぐにゃあっと空間が歪んでその亜空間の中から正体不明の武装勢力が現れたのである。とりあえず手近な選手を拘束した武装集団のリーダーは中継カメラに向かって告げる。我々は未来人だ。あと30年後にエイリアンの侵略で地球は崩壊の危機に瀕する。君たち自身の未来を守るためにも君たちに一緒に戦ってもらいたい!

未来から戦士として召集命令がかかるなんて右翼的ロマンがあるな~と一瞬だけ思ってしまうが実際の戦争がそうであるようにこの戦争も夢はなかった。意外なことにも各国政府は一致団結して次々未来へと兵士を送り込むのだが戦況は芳しくない。どれぐらい芳しくないかといえば送り込まれるのは戦闘のプロとかではなく基礎訓練すらしていないそこらへんの普通の人というぐらいの芳しくなさ。現在人的にはある意味で戦わずして既に敗色超濃厚ということでかなり悲惨である。そんな中でついにクリプラにも召集令状が。果たしてクリプラは恐竜に続いてエイリアンもいなすことができるのだろうか。っていうかどうしてクリプラのところに召集令状が来たのだろうか。いやいやそれを言うならエイリアンとはそもそも何者なのか? まぁ、観ればわかるさ! 観よう! ステイホーム!

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SF映画の対エイリアン戦なんかもう今更怖がりたくても怖がるの無理だろと思っていたがこの映画の対エイリアン戦はぶっちゃけ結構怖かった。その手があったかという感じなのだがこれTPSシューターっぽい要素を多く取り入れていて、ホラー系のTPSでよくあるバチバチ点滅する蛍光灯でエイリアン登場前の不穏なムードを醸し出す演出に始まり、ステージごとに研究サンプルを回収しろとかボスを捕獲しろとか異なるミッションをこなしていくのも、軍用車両の荷台に設置されたガトリングガンで車両に追いすがるエイリアンを掃射するのもそれっぽい。

なのでエイリアンの見せ方とか出し方もTPSシューターに準拠したものになっていて映画的な文法ではやってないんですよね。エイリアンには明確に弱点が設定されていてそこを撃てば死んでくれるんですけどそれ以外の部位に当てても完全ノーダメージ。そういうのが屋内ステージなんかではちょうどいい数(※諸説あり)襲ってくるから危ないところでよっしゃ一匹倒せたぜと思ったらその屍を乗り越えて次のエイリアンがグワァっと迫ってきたりして恐怖感と爽快感がしっかり同期、映画だとこういうのって恐怖・恐怖・恐怖そして爽快感みたいな感情の起承転結を作りがちですけど、これはゲーム的に起と結をその場その場で重ねてやっていくから臨場感がすごかった。

でそれに加えてこれはやっぱSF映画としてのストーリーが面白くて序盤はもういきなりサッカー中継に未来人が紛れ込んでくるぐらいだから超展開&ノンストップバトル、なんですけど一段落すると未来と過去の時間差で何ができるか、何をすべきかっていう話になってくんですよね。もちろんそこにはクリプラの家庭問題も絡んできてSFイイ話に軽くホロリとさせられたりするし、完全に舐めてた脇役がお前そんな重要な役だったのっていう感じで再登場して驚きながら心の中でサムズアップしてしまうし、超展開&ノンストップバトルに気を取られてあまり意識してしなかった伏線がキレイに…かどうかは微妙だがしかしストンと腑に落ちる形で回収されてたいへんスッキリする。時間SF観てるなーって感じで。

あとやっぱこれは飛ばせないなと思ったのがさ、先にも書きましたけどこのストーリーって新コロ禍の影響はたぶんある。直接的にはそう描かないですけどエイリアンの正体とかその退治法とか、あるいは退治法を必死に模索する科学者たちへのリスペクトとかね。そこにはリアルタイムで進行中のウイルスとの戦いが(おそらく)投影されてて、でしかも希望がある形で締めくくられていて、娯楽映画の役割を云々と偉そうにのたまうつもりは別にないんですけど、こういうことができるのが娯楽映画の良さだし、SF的な想像力だよなって思って、それはなんかジーンときた。

めちゃくちゃ物語に関係しそうな感じで出てきたベティ・ギルピンがあんまり活躍しなかったことだけは多少残念ではあるが、他のキャラはみんな立って見せ場だってちゃんとあるし、ダイナミックな時間移動シーンはセンス・オブ・ちょっとだけワンダーがあるし、ゲーム的にステージを転々としていく構成だから最後までダレがない。おもしろいじゃないですか~。これを面白くないって言ったらじゃあ面白いってなんだよっていう哲学問答を思わずふっかけてしまいそうになるぐらい、おもしろいおもしろいSF映画でしたねぇ。

【ママー!これ買ってー!】


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当時の水準でもかなりCGのクオリティが低いところは難点といえば難点かもしれないが、そこに目をつむれば良質な時間SF映画。それもそうだ監督ピーター・ハイアムズ、原作レイ・ブラッドベリだもの。

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