『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の感想

《推定睡眠時間:0分》

幸福の絶頂から突如『コンスタンティン』の魔界みたいなあるいは『スキャナー・ダークリー』のアリマキ地獄に突き落とされてしまった土屋太鳳に本人はもちろん婚約者の佐藤健も大困惑しかないし見ている俺もなにがなんだかわからない。
医師の堀部圭亮も抗体の異常反応ですみたいなざっくり説明をするだけで病名は言ってくれなかったがこれは実話原作でそちらでは抗NMDA受容体抗体脳炎という病気だそうですがまぁ言われても結局わからないんだが。

ウィキにはいわゆる悪魔憑き扱いされてきた心身の異常は実はこの病気だったんじゃないかとか書いてある。
悪魔憑きの正体は統合失調症だったんだろう説は世界まる見え系のテレビとかでよくやる気がするので広く巷間に流布しているが、パっと見で統合失調症とはよく似ているらしい抗NMDA受容体抗体脳炎の症状は。
となると、土屋太鳳の妄想シーンが『コンスタンティン』のようだというのも故なきことではなかったな。太鳳は奇病という名の悪魔と戦うよ! 『震える舌』のように!

病名を出さないのはどういった脚本的判断かわからないが、そのへんなんとなくどことなく象徴的な気がしないでもなく、病の特殊性を考慮すればもう少しそれに即した展開なり描写なり葛藤なりがありそうなところだが(いやだって原作が当事者の闘病記なんだから)かなり結構、この映画版は標準的難病映画の枠組みに収まったお話になっているのかもしれないとおもった。あるいは寓話的というか。

加えてもちろん地域振興映画。相変わらず路面電車が出ずっぱり、伝統芸能と地域まつりで客寄せ、あとこれは本当に謎だが地域振興映画に必ずある橋の大プッシュ。
和歌山ロケもので、わざわざ「京橋」のプレートまで出るがそれなんなんだよ橋に観光促進効果あんのかよ、つか和歌山に路面電車あんのかよ。知らなかったありがとう。じゃねぇわ。

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要するにお話として映画の枠組みとして明らかにつまらないしまた最近見る原作ものメジャー映画はこういう一般性に寄せることを至上命題とした脚色ばかりだからもう感覚も麻痺してきているが不誠実だろこういうやりかた不誠実だろう、とは言っておくがちょっと泣いたぐらいは感情入った。おもしろかった。

土屋太鳳と佐藤健のカップルっぷりが良いんです。家クリスマスして、そこでたぶん初チューするんですけど、緊張からかズルッとテーブルクロスひっくり返して卓上のケーキとかチキンとかがどんがらがっしゃんになる。
そこだよねその時の佐藤健のヘッヘッヘっていう自然体の笑いがすごい良かったな。同棲までは行ってない地味カップルのリアルな家の中っぽいなーみたいな。

あとプロポーズするところとか。わりとカメラ据え置きって感じでとーっとカット割らないで撮ってくんですけど出来上がってるよな土屋太鳳と佐藤健。
段取り感のないエチュードみたいな空気がしあわせ。家族になることに気負いがない。良いじゃないですか。良いじゃないですか! 泣いたよ。
っていうところがおもしろいディティール偏重映画だから進行的な場面になると急にあんまりおもしろくなくなるし芝居も鈍くなる、本筋とは全然関係ない北村一輝のダブルピースがこころのベストショットというような映画だったようにおもう。

つまんねぇ話だなとか言っておいてどうかと思うが終盤の一気呵成の伏線回収は予想外にエモーショナルで韓国映画かと思った。
淡泊なというか抑制されたタッチの映画だったが静かに苦しい8年間が一気に報われるのはずるい。興奮するし泣く。
そこが映画の頂点ぽかったのでラストのラストシーンは付け加えたくなかったんだろうな監督の人。最後にタイトル出る系映画だが、なーんと最高に盛り上がってバーンとタイトル出た後に真のラストシーンが。明らかに、適当。

急にスプリット・スクリーンになったり過去と未来がえらい抽象的に交錯する幻想シーンになったりなかなか意図の汲み取りにくいアマチュア臭の実験的映像が不意に入り込むがなんだろうと思えばクロニクル映画監督・瀬々敬久の作。
『ストレイヤーズ・クロニクル』とか『64 ロクヨン』はなんだったんだみたいなこれは良いクロニクル。ぜぜぜ! 時機を逸してもはや意味不明。

【ママー!これ買ってー!】


オールド・ボーイ (字幕版)

良い話だなぁ! って感動しながら思い浮かんだのは『オールドボーイ』でした。失われた数年間を取り戻す話というのが共通したから…。

↓その他のヤツ

8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら
8年越しの花嫁 奇跡の実話 (小学館ジュニア文庫)
※原作のほかにノベライズがあり紛らわしい。

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遠藤蘭

くそすぎ

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