真・クリスマスホラー映画10本見た(その3)

3回目のクリスマス映画セルフ特集鑑賞記なので今まで計30本クリスマスホラーの感想を書いている。
結構見た。他にすることがないのかと思われるかもしれないがない。来年もやろう。クリスマスはたのしいなぁ。

↓前のやつ
これでクリスマスも寂しくない! クリスマス・ホラー映画集めたぞ10本+1!
続・クリスマス・ホラー映画集めたぞ10本+1!

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『ナイトメア・オブ・クリスマス』(2006)

DVDジャケットにリビング骸骨が載ってたからホラーと思ったが少しだけ悪趣味悪意地の英国的諧謔ファンタジーで、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』+『ハリー・ポッター』のダグラス・アダムス風味という感じ。
原作はテリー・プラチェットという人で知らないが、イングランドの大ベストセラーファンタジー/SF作家だそうで。『ハリー・ポッター』とかもじゃあ影響下にあるのかもしれない。

ディスクワールドという人間世界とよく似ているがもっとファンタジー寄りの世界の話。クリスマスはホグワッチ、サンタクロースはホグファーザーと呼ばれる。でホグファーザーが何者かの策謀によって姿を消したので死神がホグファーザーを演じるのだが。

前後編合わせて194分のテレビ映画。長いがたぶんこれでも全然原作追いきれてないだろうなぁっていう想像力の野放し戯れっぷり。
どうせ194分だからと死神のサンタ行脚にホグファーザーを捜索する魔女に魔法科学研究所(?)にサンタ誘拐犯だか暗殺犯などなどと視点ザッピングしまくりキャラ投入しまくり展開うねりまくりで実に忙しく途中からなんかよくわかんなくなっちゃった。まぁ本当は最初っからよくわかってなかったが。

トゥース・フェアリー宮殿のチープでバカバカしい壮麗美術とかすこしだけモンティ・パイソン映画みたいでよろし。よくわからんがともかく闇鍋的世界観が目に楽しい。

『ナイトメア・オブ・サンタクロース』(2010)

ナオミ・ワッツが悪霊エレベーターと戦う『ダウン』の、という方が通りが良さそうな気もするが俺としては運河殺人鬼が素敵な『アムステルダム無情』を撮った人と言いたいオランダのラリー・コーエンと今その通り名を思いついた奇抜派アクション職人ディック・マースのサンタものは『ザ・フォッグ』とか『エル・ゾンビ』っぽい感じのサンタというかゾンビものだがいやディック・マースって! めっちゃ久々に名前聞いたんじゃないか。

どういうお話かというとむかし聖ニコラウスという後世になってサンタ(本当はシンタというオランダでのサンタのアナザー的な存在らしい)変異したえらい人がいたが伝承はだいたい都合良く美化されてしまうのでその実態はホラー的にドラマチック。
サンタさんは煙突から勝手に入ってきてプレゼントを置いていってくれるがこのバイキングみたいな聖ニコラウス軍団は煙突から入って略奪とかしていた。案の定、平民の恨みを買って軍団もろとも大虐殺。
ホラーだから恨み帯同で黄泉返りした聖ニコラウス軍団(腐)が現代で大狼藉を働くわけだがそれにしてもすごいとばっちりだ。

『34丁目の奇蹟』に象徴されるようにサンタの実体を人と考えるのが米サンタホラーだから畢竟スラッシャー映画に閉じてしまう。これは想像力の点でおもしろくない。
ヨーロピアン・サンタホラーはもう少し宗教色とか民間伝承が入る余地があるらしくつまり異界とファンタジーに開かれていておもしろいがディック・マースの映画だからファンタジーって『エル・ゾンビ』のテンプル騎士団ゾンビよろしくゾンビ馬を駆った聖ニコラスが城塞的に連なったあの集合住宅の屋根から屋根へと飛び移っていくのをポリカーが銃撃込みで追うとかそういうやつです。

たしかにこんなカーチェイスは見たことないからファンタジー。港に浮上した幽霊船とゾンビ群団VS警官隊もおおいに見物。振り切れたパワフルがユーモアに転ずる素っ頓狂スペクタクル炸裂のディック・マース節は健在。おもしろかったです。
あと『マニアック・コップ』にも似ている気がしたが『アムステルダム無情』も殺人鬼がユラァと水中から現れるところとか似ていたな、『マニアック・コップ』と。

『Santa Claws』(1996)

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』撮影以前のジョージ・A・ロメロの仕事上のよきパートナー兼よき友人で『ナイト~』では脚本を書いたジョン・A・ルッソの、または『ナイト~』で得た名声を売って全ホラー映画ファンのヘイトを買ったジョン・A・ルッソのクリスマスホラー。監督も脚本もやった。

見てないがルッソの『ナイト~』以外の仕事というと悪評以外に聞いたことがない『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版』とかトム・サビーニのコネ出演以外になにも覚えてない『チルドレン・オブ・ザ・デッド』とか似たようなタイトルとビデオジャケットがありすぎてどれのことだか分からない『ゾンビ・サーガ/死霊のいけにえ 』ぐらいしか知らないのでろくなものではないとおもいます。

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『クランプス 魔物の儀式』(2015)

当初凄惨なクリスマスホラーとして構想されていた『グレムリン』は製作総指揮スピルバーグの鶴の一声でかわいいたのしいクリスマスファンタジーになってしまったという本当かどうかよくわからない逸話もありホラーとして脚本書いてたクリス・コロンバスは『エイリアン』の素案がズッタ切りにされたためこんなものは脚本が交通事故に遭ったようなものだと憤るダン・オバノンのような心境だったのかもしれないがその後『ホーム・アローン』とか『ハリー・ポッター』撮ったりするんだから童心開眼といったほうが正しいんだろうな、とフィルモグラフィーを眺めていたら2017年最ダークホラー筆頭候補『ウィッチ』の製作総指揮にクリス・コロンバスが名を連ねていた。この男は確実に黒いなにかを秘めている…。

脱線したが、バーグが介入せずホラーのまま『グレムリン』が撮られていたらこんな感じだろうみたいな映画がこれだったな、『クランプス 魔物の儀式』。
映画サイトのジャンル欄のホラー/コメディとか書いてあるからそういうつもりで見始めたがふざけんなよめっちゃ怖ぇよ。屋根裏めっちゃ怖かったよ!

こういうの大抵、どんなに怖くてもお子様を安心させてくれるオチがつくから大丈夫と自分に言い聞かせながら最後までクリスマス大虐殺を見続けたがこの場合、結末の寓話的な処理が逆に不気味さを増していたように思う。そのへんでも『グレムリン』の真逆だった。

『クランプス クリスマスの悪魔』(2013)

見てはいけない方のクランプス。プロレスラーみたいな警官たちがナマハゲ的な怪物を殺そうとするが予想外に強かった。武装してナマハゲの巣を襲撃した過去に傷を持つ主役の刑事の人は仲間が返り討ちに遭って大混乱。署に帰ってプロレスラーみたいな上司と「お風呂に入る! お風呂に入る!」「そうだな!」みたいな会話をする。

タイトルバックが編集ソフトのプリインストールエフェクトっていう時点でおそらく飲み仲間で作ったご近所自主映画であると忖度しなければいけない。なんか映像を重ねている。たぶん編集してたらおもしろい機能を見つけたので使ってみたんだろう。タイトルバックを作っているときが一番たのしい自主映画(その後、挫折と反省)

ストーリー的にはナマハゲとトラウマ刑事のバトルにトラウマ刑事がかつて逮捕したため逆恨みしている悪党と謎のサンタクロースが絡んでくるというものでちゃんとおもしろいお話にしよう的な意気は伝わってくるが遊ぶ子供たちの声の環境音をループ再生してたりするぐらいなので映像面は極めて雑くお話どころではない。オートフォーカスなので俳優がフレームから出たらピントがズレてしまった。

いや酷いは酷いが素人撮影の無造作演出はなんかやたらこわいというケースがあり…わりとそのケースだよなこの映画っていう感じで…ナマハゲの超々単純なポジネガ反転とかまったく意味の見いだせない早送りとか…妙にこわいかったよね。ていうか気持ち悪いんだよ。
VHS的というかこういう種類のこわさに時代の最先端を行くNetflix上で遭遇してしまい衝撃を受ける。のち、エンディングのご近所NGシーン集に感涙。しょうもねぇ自主映画ではしゃぐ大のおっさんたちに乾杯いや完敗。

『パペットマスターと悪魔のオモチャ工場』(2004)

単品に思えたがどうも『パペットマスター 悪魔の人形伝説』と直に繋がる続編テレビ映画らしいという不満は一応あるがいやそんなことよりもあの人形恐怖はどこへ行ったのっていうその後まったく見ていなかったが一作目の恐怖記憶が残っていたための不満。
いつのまにか殺人人形善玉化。テレビ映画だからかリーチ・ウーマンがベンチ落ち(トネラーも)。シックス・シューターが魔改造によりレーザー銃を撃つとかふざけるなと言いたいがレーザー銃に関してはエンパイアっぽいからしょうがねぇ。でも人はちゃんと殺してほしかった…。

デビルに血を捧げるためクリスマスに悪魔のオモチャを売りまくってしまおうとする『ハロウィンⅢ』的オモチャ会社の陰謀を善玉殺人人形が叩き潰すだけの他愛のないストーリーだが、マニアの人によるとこの悪魔のオモチャというのはエイパイア・ピクチャーズもう一つの人形ホラー『ドールズ』の続編『デモニック・トイズ』の悪たれ人形たちだそうです。
クロスオーバーか。僅か時代を先取りしていたな。『グーリーズ』の小鬼とか『死霊のしたたり』のウェスト博士とか出てくるエンパイア・シネマティック・ユニバースは夢があるが絶対実現しないんだろう。絶対実現しないんだろうな!

『サイレント・ナイト 悪魔のサンタクロース』(2012)

エンパイアの名物プロデューサーといえばブライアン・ユズナだがそのブライアン・ユズナがシリーズのゴミ処理的後始末を引き受けた『悪魔のサンタクロース』こと『SILENT NIGHT, DEADLY NIGHT』のリメイク。
さすがに現代の技術で殺すと派手だよねー。サンタ殺人鬼、しまいにはなんか火炎放射器とか持ってきたぞ。『バーニング』! 『バーニング』!

ホワイトクリスマスに火炎放射は映えるので大興奮も警官視点のストーリーに改変されていたのでその点でまったくおもしろくないというのはアメリカンサンタホラーというものはいやスラッシャー映画というものは!
やっぱトラウマの人が犯人じゃん過去のイジメとか虐待で人間壊れた。『悪魔のサンタクロース』も『悪魔のサンタクロース2』も『サンタが殺しにやってくる』もその路線だったからなにかしら、殺人鬼への暗い共感があって俺はそれが好きだったが警官目線にしちゃったらモラル的安全地帯堅守って感じでおもしろくないじゃーん。やさしくもないぞ!

モラル的スリルとやさしさを捨てた代償に得たのはサンタで溢れる町にサンタ殺人鬼が混ざる『テラー・トレイン』『ハロウィン4』系のパニック&フーダニット要素だが、それでおもしろくなるかといえばこんな映画にまともなミステリーなんかたぶん作り手も含めて期待してないから別にそんなにおもしろくはならないのだった。もっと燃やせ!

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『ホリデーズ』(2016)

タランティーノ&ロドリゲスによる『グラインド・ハウス』中のフェイク予告編として『Thanksgiving Day(感謝祭)』というのがあったが監督を務めたイーライ・ロスの言によればアメリカでは祝日は必ずホラー映画の題材になるけど感謝祭はなかった(ので茶化した)。

『Thanksgiving Day』をそのまんま通年でやってみたような祝祭日ホラーオムニバスが『ホリデーズ』だったのでー、その一編にケヴィン・スミスが娘ハーレイ・クイン・スミス同伴(主演)で参加しているようにー、基本的にはジョーク的な色合いの濃いヨタ話数珠つなぎだなこれは。
一編たかだか10分程度なので基本1ストーリー1アイディア。スタイリッシュを狙いすぎて意味分からん場面も散見されるのはストーリーを語ることよりもサムネ的な1ショットの印象で勝負しようってことではないかとおもう。InstagramとYouTubeの時代のオムニバス映画という感じ。

クリスマスのエピソードは実はこの中では一番おもしろくなかったそれサイバーパンク全盛期にどれだけの作家が短編でリサイクルした話だと思ってんのみたいな陳腐なVRネタでしかもクリスマスと全然関係ねぇじゃんなんだよそれ。
良かったのは「聖パトリックデー」「母の日」「父の日」それからケヴィン・スミスの手になる「ハロウィン」。どれも祝祭の持つ非日常性と合理性からの逸脱に異なる切り口で迫っていて『ホリデーズ』の題にちゃんと正直。

『夢の中の恐怖』(1945)

『ホリデーズ』とかになると各話終了ごとにタイトルと監督のクレジットが出て即つぎのエピソードに行ってしまうので繋ぎも語り部も存在しないがむかしのオムニバスホラーっていうかオムニバス映画って繋ぎと語り部がいる。
あれはいつからなくなったのか知らないがともかく45年の『夢の中の恐怖』ぐらいになると今日的なオムニバスホラーがオミットしがちな繋ぎパートと語り部の存在がむしろ映画の核になるわけで、単体で見れば淡泊極まりない各エピソードがトータルで一つ意味を成すという近代的大仕掛けこそが見所なのだった。

何故かデジャヴュ感のある屋敷のパーティに呼ばれた建築家。気持ち悪いなぁ、気持ち悪いなぁと言っていたら客人たちが自分たちもこんな奇妙で気持ち悪い経験が、と話し出す。
クリスマスのエピソードはその一編だがたぶんクリスマスホラー史上最高クラスの淡泊なのでいちばんびっくりしたのはエピソードが終わった時。いやそれで終わりなのかよみたいな。

腹話術人形のエピソードなんかは実に気味が悪いが全体的にホラーというか、ジャンル的には阿刀田高の「奇妙な味」ショートショート集みたいな感じ。
でもその先の怒濤のクライマックスはめっちゃ怖くこないだDVDで再見したらなんか前見たときより怖くなってました。みればみるほどこわくなる。

『デモンズ’95』(1994)

クリスマスのお話じゃないから厳密にはクリスマスホラーとは言わないかもしれないが、無降雪地帯の墓地でスノードームに降る雪を夢見る孤独墓守のゾンビ哀歌はやはりクリスマス映画ということにしたいアルジェントの後継者ミケーレ・ソアヴィ入魂の一作。90年代ゾンビ映画のベスト。泣けるゾンビ映画殿堂入り。
大好きなので褒めるためにはなりふり構わずなんでも言ってあげたい。

後々『ディラン・ドッグ:デッド・オブ・ナイト』としてスーパービジュアルで再映画化もされたホラコミ『Dylan Dog』を原作とする映画で、無気力墓守ルパート・エヴェレットの虚実ゆらゆら毎日をブラックユーモアとチープ幻想満載で描くシュール編。理由とか分からないし新聞にも載らないし誰も気にしないから夢なのか現実なのかも分からないけどなんか埋めたはずの死体が甦ったりしてきちゃった。頭を撃てばまた死ぬからまぁいいか。バイカーゾンビがバイクに乗って墓から飛び出したりしてくるがルパート・エヴェレットは面倒くさそうな顔をするだけなのでサスペンスとか皆無のシニカルなオフビート。

とそのようなゆる毎日が段々悲劇じみてくる。意思疎通の難しい相棒とゾンビ潰しを続けるだけの単調生活が嫌になってきちゃったルパート・エヴェレットのハリネズミ的孤独がなんだかもう痛い、とても痛い。
世の中を斜めに見ながらその実その輪に入りたくて仕方がないが入ったら入ったでやっぱり嫌になって自分から出て行ってしまうタイプの人ルパート・エヴェレットがどうしていいか分からなくなってぶっ壊れていくわけだがじゃあ壊れた先になにがあるかといえば凡人なので所詮壊れきることもできないしなにもないのであった。

カフカ的との評もあるにはあるらしいがカフカ的である以上にたぶんこれは、坂口安吾的というもの。幻惑美女への執着と幻滅と、エモい幻想ラストなど見ると篠田正浩の映画版ともども『桜の森満開の下』が思い出される。
腐乱派ゾンビ映画は数限りないが無頼派ゾンビ映画というのは珍しい。

埋めたはずの死体も彫像の死神も動き出すふざけたシュールゾン日和に幻想の向こう側にある殺しても殺されても誰からも相手になんかされない孤独人のリアルが透けて見えるこわさとせつなさの、その峻厳と人魂を眺めながらの墓場デートなんていう過剰なバカ耽美と恥ずかしいロマンティズムが交錯したりして云々と能書きを垂れるよりとにかく見ろ系の俺の中では超傑作クリスマスホラー。
いやもうクリスマスホラーってことにするから。あの雪降るラストシーンのなにも奇跡じゃないけど苦笑いしかないけど奇跡的な印象は! クリスマスとしか言いようがないだろ『シザーハンズ』的な意味で。

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イタリアロケを敢行したテリー・ギリアム『バロン』のセカンドユニット監督がミケーレ・ソアヴィのため、両作ともに見た目そっくりな死神が出てくるがたぶん流用しているというのがイタリア的で良い話。

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※『Santa Claws』は輸入盤で、『クランプス クリスマスの悪魔』はNetflixで見れる。『ナイトメア・オブ・サンタクロース』と『ホリデーズ』もネッフリにあった。

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メリークリスマス

待ってました! 今年もたのしく読みます。デモンズ’95見たくなりました。

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