新・クリスマスホラー映画10本集めたぞ!

個人的恒例行事になっているクリスマスホラー映画10番勝負を今年もやりました。3連休で暇な人は参考にしたりしなかったりしてください。

前の↓
これでクリスマスも寂しくない! クリスマスホラー映画集めたぞ10本+1!(その1)
続・クリスマスホラー映画集めたぞ10本+1!(その2)
真・クリスマスホラー映画10本集めたぞ!(その3)

『楳図かずお劇場 プレゼント』(2005)

俺調べによれば現在までにアメリカ、イギリス、フランス、スペイン、マケドニア、オランダでその存在が確認されているクリスマスホラー映画の代表選手・キラーサンタが日本にもやはりいた。
楳図かずお原作の実写化競作オムニバス『楳図かずお劇場』の一編は監督・山口雄大のグログロスプラッター編。クリスマスイヴの夜に丘の上のラブホテルを訪れたヤングレディ一行を正体不明の巨魁キラーサンタが血祭りに上げていく。

予算的なリミットをひしひしと感じるチープでケバケバしい画作りが良くも悪くも血みどろ描写の不快感に大貢献。
ファースト犠牲者カップルの凄惨な虐殺現場はイタリアン・ホラー的な趣の極彩色の悪夢。幼児のお人形遊びの如く乱暴に死体を弄ぶキラーサンタの人体解剖シーンはうっへぇって感じで見てられない。

絵面はひたすら汚いがお話はスプラッター的な見せ場を押さえつつの二転三転で最後は意外と綺麗にまとまった。
グロテスクの中の可憐さ、悪趣味の中のファンタジー、恐怖の中の滑稽、というのが楳図かずお的な要素なのかどうかは実は楳図かずお未読勢なので知りませんが、ともかく、そんなクリスマスホラーらしさがじくじく染み出した味わい深い好編。

『ベター・ウォッチ・アウト:クリスマスの侵略者』(2018)

『楳図かずお劇場 プレゼント』がフィジカル面で見ているのがつらい映画なら『ベター・ウォッチ・アウト』はもっぱらメンタル面で見ているのがつらい。
あまりにつらいのでもう嫌がらせなのではないかとすら思う。クリスマスだからホラー映画でも見ようぜっつって友達or恋人とニヤニヤしながら見始めた連中どものテンションをメルトダウンさせること間違いなしのブラクラみたいな映画である。

内容を一言で言い表すなら子ども版『ファニーゲーム』。内気で孤独な少年くんの下にベビーシッターの女子高生がやってきた。両親はクリスマスで不在。ベビーシッターにほんのり恋心を抱いた少年くんは彼女を振り向かせようと奮闘するが、そこに正体不明の闖入者が現れ…後はまぁ、口外不可なので適当に想像してほしい。たぶん想像の斜め下を行くブラック超えのダークユーモアにメンタルが死ぬ。

『ファイナル・デッド・コール』(2006)

ブラックユーモア系のクリスマスホラーといえば『X-ファイル』や『ファイナル・デスティネーション』シリーズで知られるグレン・モーガンの『ファイナル・デッド・コール』もそうだったのですが、見てびっくりの『暗闇にベルが鳴る』リメイク。
息抜きのユーモアもないわけではないが基本的にはずっと緊張が続く超シリアスホラーの『暗ベル』が、こんなに、ふざけた、脱力気味に…楽しくてイイね! いやイイんですけどオリジナルとのギャップすげぇ。

ホリデーシーズンの女子寮を狂気の殺人鬼が血に染めていくまではオリジナルと同様。違うのはこっちのリメイク版では聖夜の殺人鬼が殺人鬼になった背景を事細かに掘り下げていく。
オリジナル版の恐怖は少なからず殺人鬼の存在の不明瞭さに依っていたのでこの改変はいかにも興を削がれるが、そこは『X-ファイル』でもジャンル映画系の脚本を多数手掛けたジャンル職人グレン・モーガン。

確かにホラーとしては確実に弱くなったが、スラッシャー映画のパロディないし『スクリーム』的なメタホラーとして名作『暗ベル』を再構築した、一筋縄ではいかない映画になっていた。

『血の学寮』(1982)

『ファイナル・デッド・コール』と打って変わってこちらは超正統派の学園寮ものスラッシャー映画。
1974年の『暗闇にベルが鳴る』とは制作年が若干離れるが、うら寂しい雰囲気、地味な登場人物、主観カメラで描かれる殺人鬼の狂い方なんかに共通のものを感じるのでかなり影響されてるっぽい。

この時期のスラッシャー映画にしては出血量が少なく殺し方も釜ゆで殺人を除けば総じて工夫がなくあんま面白くなかったりするが、そのぶん殺しの本気度で勝負。
この殺人鬼は本気だ。寮内で中年男を一人殺して車でその帰りを待つ妻の下にダッシュ、さっさと始末するとサっと後部座席に身を隠し、やがて車に戻ってきた娘が死体を発見して気を失うと、その隙を逃さずアクセルを踏み込んで娘を轢き殺す。

なんだその殺しのピタゴラマシーンっぷりは。どんだけ本気で殺したいんだ。引くわ。この殺人鬼は途中でおもしろ殺人鬼にシフトチェンジしないで最後まで単に本気で人を殺したいマンだったのでラストとかマジドン引きでした。
あと『デモンズ』に先駆けたダクトチェイスを含むボイラー室の死闘、意外と迫力あって面白かったです。

『悪霊のいけにえ』(2001)

これはこれでドン引き系スラッシャー映画だがドン引きの意味が違う。すごいですよ原題『THE CHRISTMAS SEASON MASSACRE』なんですけど草木の青々と茂るキャンプ場っていうか近くの森で撮ってるもん。
どこにクリスマス要素があるかっていうとドンキかハンズで売ってる海賊コスプレセットよりも安い海賊コスプレ(バンダナ巻いて眼帯を付けただけ)をした殺人鬼が現れる時にシャンシャンシャンっていう鈴の音SEが鳴ります。それで『THE CHRISTMAS SEASON MASSACRE』って言い張るんだから映画ってすげぇなって思いますね、百周ぐらいしてゲロ吐きながら。

どうも監督の学生時代の友達とか集めて撮ったいわゆる週末映画。誰も本気で怖いものを作るつもりなんてないのでゴア描写だけはジャーマン・スプラッター系のグログロ本格派も、内容は『ケンタッキー・フライド・ムービー』をゲロ吐くほど意識低くした激ぬるホラーコメディ。

色々と完璧に壊れているのでこんなにも単純なストーリー(キャンプ場に集ったいじめっ子が殺人鬼になったいじめられっ子に殺されていく)も意味がわからないシーンの連続。
線路脇に置かれたミキサー、手漕ぎボートに乗ろうとする殺人鬼が目の前に見えているしボートが揺れまくっているのに気付かない被害者、そして何故かボートに乗れない殺人鬼、とまるで実験映画の如し。

エンドロールのNGシーン集を見ていると車を急ストップさせる場面でシートベルトを付けていなかったキャストがフロントガラスに激突してガラスにヒビを入れていたので、なんていうかホラー映画的な怖さとは別の意味で怖い映画だったと思う。

『エルフ 悪魔の人形』(2017)

これも相当酷かった。いや別にここ酷い映画を集めるコーナーじゃないんですけどアマゾンビデオにいかにもクリスマスホラー然として並んでたからつい見ちゃったんで…。
お話はなんか呪いの人形というか、クリスマスになると人間を狩る魔物のようなものがいて、それでサンタさんは良い子リストと悪い子リストを持ってるとか持ってないとかいいますが、この魔物は良い子も悪い子もなくリストに載った子どもを狩る。

無駄に込み入っていてよくわからなかったがリストを書いた奴は狩られないで済むらしい。ていうんで、クリスマスの日に呪いの人形がガシガシ人間狩ってって、偶然リストを手にした主人公の若い男とその恋人の女は云々とこういう話…らしい。
らしいが、単に呪いの人形の恐怖にシナリオを絞ればいいのにあれやこれや独自ルールを色々ぶち込むもんだから段々と本筋がわからなくなってくるのだった。

その本筋たる呪いの人形の恐怖にしたって安CGで人形動かしてるから基本、怖くも面白くもなくどうしようもない感があるな…。

『デスロード 染血』(2007)

染血、という程に血が出るタイプの映画ではなく、どちらかと言えば都市伝説的な怪異譚。
ホリデーシーズンに帰省するため乗り合い相手を募集したクソ身勝手な女子大生。名乗りを上げたのは同じ学科の知らないオタク風男子。

ファーストインプレッションでこいつなんか気持ち悪ぃなと思う女子大生だったが、乗せてもらう身だからダイレクトな悪口は言えない。
不協和音を抱えたまま二人を乗せた車は女子大生の地元に向かって走り出す。で、近道だからと明らかに通行に難ありな冠雪道路にオタク風男子が舵を切ったことから女子大生のホリデーシーズンは地獄と化すんであった。

製作総指揮がジョージ・クルーニーとスティーヴン・ソダーバーグ、音楽は『レクイエム・フォー・ドリーム』や『月に囚われた男』、『ハイ・ライズ』等々エッジの効いた作品を多く手掛ける異才クリント・マンセル、監督のグレゴリー・ジェイコブズは長年ソダーバーグ作品で製作を務めてきた人物で主演はエミリー・ブラントと、メイン登場人物わずか2人+1人のほぼほぼ車内密室劇にも関わらずやたら豪華なスタッフ・キャスト。

ネタバレ厳禁案件のためスタッフ・キャストの名前でなんとなく誤魔化してしまったが、さすがでもやっぱ大物が集まってるだけあってかミニマムな作りも飽きさせないし、繊細な心理描写と主演二人の関係性の変化は怖くもありまたちょっとだけホロリ感もあるのだった。地味になかなか良い映画。

『-less』(2003)

これまた車で帰省途中に脇道に入ったら大変なことになっちゃったシリーズ。家族みんなで婆ハウスに向かっていたレイ・ワイズ率いる不仲一家。もう飽きるほど通った道なので迷うことなどないだろうと思ったが、なんとなく脇道に入ったら案の定迷子。
出口はないわ明かりはないわそのうえ赤ん坊を抱いた気味の悪い女まで現れるわの奇々怪々。果たして一家は怪道中から抜け出すことができるのだろうか。

それにしても父親が…レイ・ワイズ! 『ツインピークス』の…レイ・ワイズ!『ツイピ』を観た人なら映画開始即不穏スイッチが入ると思うが果たして不穏ムードに満ち満ちた一家の面々は次々と『ツイピ』ばりにユーモラスにぶっ壊れていくのだった。
圧の強いテロップや出口のない暗闇を延々走る車の図はさながら『ロスト・ハイウェイ』で、思おうと思えばデヴィッド・リンチ映画の番外編に思えなくもない。

じりじりとメンタルを蝕む閉塞感と恐怖の気配と崩壊家族のブラックユーモアは単体でも面白いが、そんな風にも見ることができる、これも地味に良い映画。

『狩人の夜』(1955)

クリスマスのホラーというよりはホラーの後にクリスマスが来るという映画。アメリカン・ノワール史上に屹立する暗黒童話で、『情婦』なんかの名優チャールズ・ロートン生涯唯一の監督作にして大カルト。
両の手にそれぞれLOVEとHATEの刺青を刻んだ殺人変態牧師ロバート・ミッチャムの勃ちすぎたキャラは永遠に映画内殺人鬼のレジェンドです。

大恐慌時代、食うに事欠く二人の子どもを養うために強盗に手を染めた男がいた。絶対に誰にも言わないよう念を押して男は手に入れた大金を子どもに譲渡、そして逮捕。これで子どもたちも安泰かと思われたが、女を殺しては聖書の教えを説くLOVE&HATEの殺人変態牧師が件の金の噂を聞きつけてしまい…なんかまぁホラーなことになるのだった。

光と影のコントラストが強烈なライティングや表現主義的なパースの狂ったセット、殺人変態牧師をオオカミに見立てた童話的・寓話的なストーリー展開に神秘的なカエルやフクロウ、映画史上最もかどうかは議論の余地があるが壮絶におぞましくもうつくしいことには変わりが無い女の水死体が幻想的な彩りを添える。

聖女リリアン・ギッシュVS殺人変態牧師ロバート・ミッチャムの善悪聖歌二重奏、その後に訪れる群衆恐怖とささやかなクリスマスパーティ、どこを取っても脳にこびりつく制作年を考えても考えなくてもまったくもって異常な映画。

『来る』(2018)

つい最近のっていうかこれ書いてる時点では絶賛公開中なので、一応俺の中ではレンタルとか配信とかで見れる旧作クリスマスホラーを紹介するつもりだったここに加えるのはどうかとも思ったが、とはいえ面白いクリスマスホラーだったので誘惑に負けて加える。俺のブログは俺がルールだ。

公開中の作品ゆえスト―リー的なことはあまり書けないが、なぜクリスマスホラーかというと映画の後半、松たか子演じる超級霊能力者が悪霊か悪鬼か知らないが、ともかくメンタルに隙を見せると「来る」強力な怨念パワーを持つ魔を鎮めるために大除霊祭を執り行うのだが、その日というのがクリスマスイブ。

西日本田舎のノイジー法事、妻夫木聡の結婚パーティ、子どもが出来たらホームパーティ、会社の同僚どもで集まってカラオケ大会…とにかく催事とか祝祭がやたら出てくる映画で、松たか子の大除霊祭とはつまりクリスマスパーティなんであった。
ヤツは鬱屈した人間を嗅ぎつけて「来る」。ハロウィンやクリスマスに代表される現代の形骸化した空虚な祝祭を、たとえ表面的にでも鬱屈を祓う除霊行為として祝福するという意味で、マコトにユニークかつ本質的なクリスマスホラーであったように思う。

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改めて見たらわりと普通かもしれないが、ゼロ期待で見たら思いのほか面白く感じたので。

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