『テラー・トレイン』発売と、爆走!トレイン・ホラー映画たち!

トレイン・ホラーの代表的一作『テラー・トレイン』のブルーレイが5/29に出る。
そして発売日は未定ながら、トレイン・ホラーの奇奇怪作『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急”地獄”行き』ブルーレイもスティングレイより年内発売予定。
北陸新幹線が開通したせいか(?)、今年はトレイン・ホラー・イヤーです。

ということでトレイン・ホラーをたくさん観たんで感想書く。ドア閉まります! 発車進行! そして死ね!

『テラー・トレイン』(1980)

『ハロウィン』(1978)の元祖スクリーミング・クイーン、ジェイミー・リー・カーティスが列車に乗ってしまったので殺人鬼もやってきたという映画。ジェイミー・リーを祝い事に呼ぶと殺人鬼も来る。ついでにデヴィッド・カッパーフィールドも来る。

映画の公開された1980年は『13日の金曜日』の一作目が公開された年で、それこそ『ハロウィン』(1978)とか『悪魔のいけにえ』(1974)みたいな先駆的な映画はありますがまだ殺人鬼のキャラでドライブさせるって意味でのスラッシャー映画は確立されてなかった。
なので『テラー・トレイン』もスラッシャーとミステリーの橋渡しみたいな映画になっていて、ココでは犯人探しが映画の主眼。車掌のベン・ジョンソン(味わい深いキャラクター)がいつ殺人に気付くか、次々と仮面を変える殺人鬼が今なんの仮面を被って誰に化けてんのか、というあたりが映画の面白ポイント。

血とかはあまり出てくれないのでそのへん期待するとつまらないかもしれませんが中々どうして丁寧に作られた格調高いトレインホラーです。

『テラートレイン』(2008)

東欧に遠征にやってきたメリケン学生レスリング部の面々。夜遊び? 違う違う、レスリングの練習さ! ベッドの上でな! ってな具合にどうせ東欧だからとハメを外しまくり列車に乗り遅れてしまう。
言葉も分かんないしケータイの電波も入らないしで困り果てるレスリング部の面々だったが、そこに鶴の一声。優しい地元の人が乗るべき列車を教えてくれたのだ。バカな旅行客を餌食にする殺人列車に決まってるがね。

リメイクとか言ってますが列車内で殺される以外共通点とか無いんで完全に別物。こうなると『テラー・トレイン』っていうか『ホステル』(2005)。ちょっとはオリジナルのアイディア出せよと思うぐらい似ているのでたぶん便乗じゃないすかね列車だけに(言ってしまった)

この映画タイトルバックがかっこよかった。死体があるでしょ? 人間の死体が。それをこう、職人さんが熟練の手つきでズルーって皮ひん剥いてんですよ。キレイに剥くんだ。皮剥ぎ系スラッシャー映画史上最もキレイに丁寧に剥いてんじゃなかろか。
一切の躊躇いもないし一切の感情も無い。その淡々としたプロのお仕事っぷりに惚れ惚れしますね。

俺の中ではそこが面白さのピークだったのでほかはあまり覚えていませんが、オリジナルがそうだったようにこちらもバンバン人が殺されてく感じの映画ではなかった気がする。
『ホステル』のシリアスなところを引き継いで悪趣味な見せ場を薄めた感じか。車内の不穏なムードとか、職人の技が光る死体処理シーンとか、コミュニケーションの断絶とか、スッキリしないラストとか、そういうの気持ち悪くて良かったんじゃないすかね。

『ザ・トレイン』(1989)

騙されて邪教の村に連れてこられた学生たち。命からがら逃げ出して列車に飛び乗ったはいいが悪魔も憑いてきちゃったから大変なことになる。ブオー(汽笛の音)

ブリコラージュなる美術用語があるそうであり合わせの素材から何かを作り上げる、設計図とか概念に基づいてモノを作るんじゃなく素材自体に即してモノを作るようなことを言うらしいですが。
香港とイタリアはブリコラージュ映画帝国なので手に入る素材からどんな映画が出来るか考える。結果、トレイン・パニックとオカルト・ホラーが融合してしまったのが悪魔の一本が誕生。イタリア映画人は後先を考えない。

なにはともあれ暴走機関車の造形がマジ素晴らしく吐き出した白煙を切り裂きながら爆走する姿は大迫力。圧倒されるが、ついにはデモニッシュ・パワーで自ら脱線し草木をなぎ倒しながら原野を走り出してしまい驚愕&呆れる。
いい加減にも程があるやっつけ展開には笑うしかなかったりしますが『ペンデュラム/悪魔のふりこ』(1991)のアドルフォ・バルトーリによる撮影はさすがブリコラ帝国イタリアという感じ。いかにも安っぽいが邪教の村の陰鬱でいかがわしいゴシックムードは素晴らしいとおもう。

決め台詞は「処女じゃない!」。ちなみに宣伝惹句は「実話の映画化!」だそうですが相手にしたら負けな気がします。

『恐怖列車』(2004)

女子高生の目玉がびろーん! ゾンビが内臓食ってでろーん! ジャイアント女子高生がどかーん! というスカムな映画。女子高生たちが遊園地に行こうと電車に乗ったら間違って悪夢の世界に行ってしまった。

『日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場』の一編で、タイトル通り日野日出志の腐臭漂う原作の映像化。日野日出志とか読んだコト無いんで原作との比較とか出来ませんが他に何本か観たこのシリーズの中じゃ面白い方だった。
唐突に目玉が出たりゾンビが出たりしてみんなで大騒ぎするお化け屋敷的カーニバル感。一応どんでん返しとかあるが見せ方が下手なんで誰でも冒頭5分みりゃ展開が分かってしまう。
そのあたりは、まぁ、どうでもいいじゃないですかカーニバルなので。つまりカーニバルなので。ネタバレじゃないようでネタバレなのですがカーニバル。

ちなみに列車はあんま関係ない。

『幽霊列車』(1949)

クラシカルな日本映画とかあんま観ないんで金語樓にエンタツ・アチャコにと言われても全くピンと来ませんがその顔ぶれなんで怪談じゃなくて怪談風味のコミカルミステリー。タイトルバック、ジャズ・ソング調のテーマ曲がかかる。「ア・ナ・タもオッバケ~♪ ワ・タ・シもオッバケ~♪」早くもコワい感じゼロ。

とはいえ意外に怪奇映画的ムードがあったりするんで侮れなかったりする。幽霊出没情報の囁かれる山奥の列車駅に故あって投宿する羽目になった旅行客etcを恐怖が襲うといういわゆるオールド・ダーク・ハウスもので、降りしきる雨、曰くありげな男たちの背中、暗い照明が人々に影を投げかける。で、どっからともなく幽霊列車の無気味な警笛が鳴り響くわけです。

幽霊列車と言いながらも肝心の列車が全然出てこないなぁと思ったら最後に出てきた。しかも金語樓のトレイン・アクションありエンタツ・アチャコのスタントありとあれこれ見せ場を盛り込む。トレイン特撮が円谷英二。ちゃんと脱線&破壊してくれるんでなんか溜飲下がります。

原作はアーノルド・リドリーの戯曲『The Ghost Train』らしく、これサイレント時代に何度もイギリスで映画化された人気作だそう。27年版の映画では幽霊列車のミニチュア撮影が話題になったそうでこの日本版もそれに準拠してんのかもしんない。

『暴行列車』(1975)

かの中原昌也をして「厭な気分にしかならない」とかなんとか言わしめたクソ悪趣味トレイン・ジャーロ。少女二人のたのしい旅行に暴漢ズ乱入、夜行列車の中で狼藉を働く。
『新幹線大爆破』(1975)の撮影にあたってはその内容とタイトルから国鉄に協力を拒否されたというエピソードが残っているそうですが『暴行列車』はそれどころではない内容なのでよく裁判沙汰にならなかったなとおもう。

とにかくイヤな映画で夜行列車のコンパートメントでネチネチネチネチと暴漢どもが少女をいたぶる様だけを延々と見せる。その暴漢、ちょっと頭が弱い感じでそれもとても厭なんですが途中から有閑夫人が乱入。暴漢の行為に欲情してセックスを要求すると今度は一緒になって少女をいたぶり始める。自分じゃ手を下さず暴漢に命令して。不快。
当たり前だがなにも少女と暴漢と有閑夫人だけが乗客ではない。たまたま廊下を紳士が通りかかって犯行を目撃。助けるかなと思いきや陰から覗くだけでなんなら苦痛に喘ぐ少女の姿にちょっと興奮してやがんのだった。…不快!

不快極まる凶行が小一時間ぐらい続いてもう限界ってところでようやくカメラは外に出る。そこから溜まりに溜まった観客のフラストレーションを解消してくれる展開になるのかと期待を持たせておいて全力で裏切ってくるので本当に酷い映画とおもう。

『0:34 レイジ34フン』(2004)

『チャド』(1984)とか『ミミック』(1997)とか『ハリウッド人肉通り』(2003)の、あの系統の地下鉄ホラー。ホームで寝過ごして地下鉄駅から出られなくなったOLを地下鉄殺人鬼が襲う。

鳥かごに囚われた犬とかドアを開けたら壁みたいなシュルレアリスティックなビジョンの数々が素晴らしく『ジェイコブス・ラダー』(1990)の影響なんかあるんだろうなという感じ。そこから直球の影響を受けた『サイレントヒル3』の地下鉄ステージとは質感がよく似ている。
酔ったフランカ・ポテンテがホームで眠ったことから惨劇が始まるので夢とも現実ともしれん地下鉄深部の謎世界が口を開けるわけで、不条理な導入とうまいこと繋がるオチにならないオチも無気味な余韻を残してたいへん怖い。

ザラついてブレまくるドキュメンタリータッチの映像にジ・インセクツの陰鬱な音楽が乗る。登場人物はホームレスと酔っぱらいと下水清掃員、だけ。なに一つ説明しない不条理劇のような作りは好みが分かれるところでしょうが、この不安と不快はなかなか体験できないものだと思うので個人的にはめっちゃ好き。

『ミッドナイト・ミートトレイン』(2008)

『ヘルレイザー』(1987)でお馴染みの小説家・映画監督のクライブ・バーカーの同名短編が原作。好奇心旺盛なカメラマンが深夜の地下鉄車内に出没する謎の精肉殺人鬼を追ううちにニューヨークの最深部に足を踏み入れてしまうというお話で、映画も小説も基本的な筋は同じだったりするが映画版の監督は『ヴァーサス』(2000)の北村龍平なんでなんかもう全然別物に見えてくる。

バーカーには異端とか異形の者への畏敬の念が根底にあると思うのですが北村龍平は「そんなもんはクソ喰らえ!俺を邪魔するヤツはみんなぶっ潰す!」みたいな闘争本能丸出しの肉食系。
日本刀を手に走行中の列車に飛び乗るブラッドリー・クーパーと聞いて琴線に振動を感じた人なら面白く観れるとおもいますがそういう話じゃねぇだろこれ。いやそういう話なんだけど。

スプラッター描写は清々しいほど容赦がなくこのへんバーカーも得意とするところだったりしますがバーカーがスプラッターを通して肉体を超えた精神を志向するのに対して北村龍平はただひたすら肉体そのものを志向する。
原作に忠実なのに原作レイプって言葉がよく似合う。コレはコレで潔くて良いんじゃないすかね。あとサム・ライミの不肖の弟テッド・ライミが出てる。

『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急”地獄”行き』(1972)

時は1902年。満州で謎ミイラ見つけて超舞い上がってしまった人類学者かなにかのクリストファー・リーがやらかしてしまった。シベリア横断鉄道に載せて運んでたらミイラ復活、惨劇が巻き起こるがクリストファー・リーは一切責任を取ろうとしないのだった…。

よく分からないがスゴイ感じだけはある雰囲気カルト。北京原人のミイラから始まってロシアの怪僧、ゾンビ群団、宇宙人、乱入コサック(テリー・サヴァラス)と風呂敷は広がるばかりで人類誕生の秘密に至ってついに風呂敷破れる。最後は漫☆画太郎的スペクタクルでなにも解決してないがDIE☆DAN☆EN!

ピーター・カッシング、クリストファー・リーのハマー・コンビが一応ダブル主演ということにはなっているがなにせ脚本を盛り過ぎているので最後には画面から完全に消えてしまった。
二大怪奇スタァの力をもってしても止められないシベリア怪特急。三回くらい観たのですがまだ捉えどころがない印象がありとにかく白目死体がこわいとか細部ばかり目に焼き付いて全体像は一向に掴めていない。

【ママー!これ買ってー!】


0:34 レイジ34フン [DVD]

もうほんとこわい。

↓その他のヤツ

テラー・トレイン perfect edition [Blu-ray]
テラー トレイン [DVD]
ミッドナイト・ミート・トレイン [DVD]
ミッドナイト・ミートトレイン (集英社文庫)
日野日出志の怪奇劇場 恐怖列車 [DVD]
暴行列車 HDリマスター版 [DVD]
ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行 Blu-ray

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