映画『クレイジー・フォー・マウンテン』の感想

《推定睡眠時間:5分》

とくにストーリーとかがあるわけでもないナレーションベースの山岳映像集だし上映時間も74分とかなので映画っていうかディスカバリーチャンネルの一番組みたいな感じと言うと身も蓋もないが、ディスカバリー・チャンネルの自然系ドキュメンタリーを映画館の大画面大音響で浴びる贅沢はそれはそれで映画の醍醐味かもしれないなぁというところもある。
ナレーションとかウィレム・デフォーだしね。さも知っていたかのように書いていますが今知りましたが。

内容的には俺がナビゲーション映画と呼ぶ類のものなので色んな点でそれなりにお勉強になりつつ目の保養。登山の歴史はいついつまで遡り…と霊験あらたかな威峰美峰奇峰のスーパー空撮映像を適宜差し挟みながら超ざっくりした(基本的には欧州の登山史だけっぽい)歴史講義があって、それから現代のエクストリーム登山模様のコラージュに移る。

まぁものすごいですよね。良くも悪くも人間の馬鹿は果てしないとおもいましたよ。絶壁ボルダリングとかはまだなんとなく許容範囲じゃないですか。でも横幅が30cmあるかないかぐらいの岩石剥き出しの尾根でマウンテンバイク走行とかはわりと意味わかんないよね。

なに山っていうのか知りませんがサグラダ・ファミリアみたいに切り立った連峰(500メートルぐらい離れているように見えますが…)にロープ張って綱渡りとか…最悪それは理解の範疇だとしてもですよ、極限綱渡りとかよく映画の題材にもなるから比較的世界が近いんですけど、スキーかスノボ勢の人が冠雪斜面を滑り出したところで上に待機してるチームメンバーだかの人がガッガッガってピッケルかなんかで足下叩いて小規模な人工雪崩を起こすやつとかどうかしてるよ完全に。

雪崩に追われるスリルとかそういう次元じゃないもんだって。雪崩に追いつかれて埋もれながら滑ってるんですもん。どういうことなんだそれは。でも気持ちよさそうな気はするよ確かに…死ぬけど。

こんな具合に行き着くところまで行ってしまった現代エクストリーム登山なのでそのコラージュはやがて事故死ーン集に。映画用に撮影されたものも混ざってるっぽいが見る限りではエクストリーマーたちが自前のアクションカメラで撮ったyoutube動画みたいのも多々。

なんだか懐かし惨死ドキュの『ジャンク』みたいな感じですが直接の死ーンはないので安心。結構、人工雪崩とかそれは本当に死ぬだろみたいなエクストリーム中のエクストリームはレッドブルとかの企業バックアップを得て臨んでいたので、死んでるようで意外と死んでないのかもしれない(何人かは死んでる前提で見ている)

山岳信仰に基づく巡礼としての登山からスポーツとしての登山へ。スポーツとしての登山から誰でも気軽に登れるレジャーとしての登山へ。レジャーとしての登山から危険とスリルを売りにした企業タイアップの商業エクストリーム登山へ、そしてただひたすらに過激と未踏を追求する個人エクストリーマーの時代へ、とだいたいこういう流れで映画は進む。

いったい登山とはなにかね。もう一度原点に戻って考え直してみないか。最後にはそのような取ってつけたような常識的な問題提起がなされるわけではあるがでも観てる側としてはやっぱりエクストリーム登山の極限映像を楽しんじゃうのでそういう意味でも「死とはなにか…」みたいな仰々しくも空々しいエクスキューズを一応冒頭につけていた『ジャンク』と被るよな。被るなよ。

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良い意味でも悪い意味でもドキュメンタリー映画史にその名を刻むエクストリーム・ドキュメンタリスト、レニ・リーフェンシュタールの女優としての姿が見れる山岳映画の巨匠ファンクの一作。
荘厳なアルプス景もすごいがレニ・リーフェンシュタールの持ち上げっぷりもすごい。山もレニも人を狂わせる(表に裏にと本人かなり介入したのではないか)

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