映画感想『パーフェクト・ワールド 君といる奇跡』

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《推定睡眠時間:25分》

俺が観てないだけかもしれませんけどなんかすげー久々な気がしたなこういうゼロ年代に流行った感じの難病純愛映画。
もう王道も王道の超王道の難病純愛映画で。今風のティーン映画にありがちなギャグとか演出とか超展開(もしくは超設定)とか全然なくて。それで、とにかく爽やかで。

少女漫画原作ものだそうですが最近の少女漫画原作映画っぽい要素が本当出てこないからなこれ・・・岩田剛典と杉咲花の恋愛もマァジでチュウ一回するだけぐらいの古風なプラトニックラブですから、お話的にはそれ原作いらねぇだろオリジナルシナリオでも三日で初稿書けるだろみたいな手垢ベタベタのシンプル一直線ですが(別にシナリオがないから原作付けてるわけではないだろうが)、その抜けの良さ裏の無さがちょっとハートに響いてしまい・・・。

これはあれだな、それこそセカチューブームの頃に公開されていたらなんも記憶に残らん食傷映画の一本にしかなってなかったと思いますが、今こんなの映画館で観ちゃったら印象つよい。
純だなぁ。爽やかだなぁ。杉咲花はいつまで女子高生役やらされるのかなぁ・・・とか思ってしんみりしてしまいますね。

それでそのお話。鮎川樹(岩田剛典)は川奈つぐみ(杉咲花)の高校時代の憧れの先輩。その時は思いを打ち明けられなかったが社会人になってお仕事で偶然再会。
縁というのはあるものだなぁ。鮎川先輩もまんざらでもない様子で、内心ドッキドキのニッコニコの川奈さんであったが、卒業後の交通事故によって鮎川先輩が下半身不随になっていたことを知りニッコニコがイッコイッコぐらいに減少する。

微妙な感じである。何が微妙ってわりと純愛映画的に相思相愛な二人だったがなんとなく車椅子の存在が距離を作ってしまって高校時代の素朴な延長とはならない。そこらへんの店の入り口とかにあるちょっとした段差とか平均的な大人の身長に合わせた展望台の欄干とか行く先々の建築が(鮎川先輩は建築士なのだった)、否応なしに二人の見る世界の違いを意識させる。

数ある障害の中でも車椅子はかなり相当ポピュラーなものだから今更偏見もなにもないだろうとついつい思ってしまう俺は人付き合いのないシティボーイである。
職場では同僚が何気なく「ちょっと彼は恋愛対象じゃないかなぁ」とか言ってくるし実家に帰れば話を聞いた父親が怒ったりするわけではないが不機嫌になる。

誰も悪気とかはないっぽいが先輩大好き人間の川奈さんにはこういうのがいちいち癪に障る。
いいですよ! 私そういうの気にしないんで! 先輩マジめっちゃ好きなんで! マジめっちゃ普通に恋愛するんで! するんで!!!

だが今までとくに介助経験とかない川奈さんがいきなり車椅子パートナー生活を頑張ってしまっても長続きとかするはずがないんであった。

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それにしても生真面目な映画。悪意のない人間関係の中に生じる微妙な軋轢であるとか、不意に訪れる死の恐怖とか、そういうものに適度な角度をつけて向き合っていく。変に誤魔化したりとかしない(ちょっとだけする)。
いいっすね。エンドロールを見る限りとくにパラリンピック絡みの企画ものとかでもないっぽいが、ナチュラルに誠実な車椅子生活描写なんかとても良いかったですよ。

こういうところを疎かにしない映画はやっぱ好感度が高い。たとえば川奈さんは鮎川先輩とデートに行っても車椅子を押したりとか基本しないんである。
いやそらそうだろうと思われるかもしれませんが、映画の記号としての車椅子ときたら押す/押されるの関係性を表現するためにあるようなものなので、こういうのは意外と珍しい。

家に入る時はタイヤの泥を拭くので玄関に雑巾を置いておく。電車に乗る時には駅員さんを呼ぶ。補助具を使って車の運転はできるが殊更それを映像的に強調したりはしない。
初デートの時に車椅子の話題に一切触れない川奈さんに鮎川先輩の方から話を切り出すところ、その少しだけ諦観を感じさせる慣れた調子。

事故の回想映像の挿入も極めてスマートに処理され、いくらでもドラマティックにできそうなシーンをことごとくサラッと流す、というのはなにか作り手の強い意志を感じるところだ。
偶然の再会を果たした居酒屋で川奈さんが初めて鮎川先輩の下半身不随を知る下りとか、鮎川先輩の上司(マギー)の丁寧に何気ない介助しぐさにこの二人の間柄が垣間見えたりして地味に沁みる。わりと沁みのジャブ連発な映画であったな。

オーソドックスここに極まれりな説明的演出は車椅子生活者のディティールを見せるには最適なもの。
岩田剛典の雰囲気とまでは言わないがそれなりのイケメン感(でもバスケやってる姿はカッコ良かったです)とか杉咲花のちょっとおもしろい寄りの地味感はその現実的なキラキラがかえってキラキラ映画よりも眩しい。

良い映画と思いつつ邪な脳はこの役柄なら杉咲花の代わりに石井杏奈で見たかったなぁとのプチ不満を片隅に留めていたがエンディング曲がE-girlsだったのでそれも粉砕。さすがパーフェクトワールド、抜かりが無い。
あとマギーはなんとか助演男優賞みたいの誰かあげてほしい。助の徹し方が半端ないんですって本当。

【ママー!これ買ってー!】


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こないだ初めて見たら思いのほか良い映画で驚いた。ゼロ年代難病純愛映画最強説。

↓原作


パーフェクトワールド(1) (Kissコミックス)

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