映画版『銃』を見た感想(原作未読)

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淳の息子が『銃』主演、の完成度の酷い駄洒落を若干ほんとうに若干ではあるが頭の片隅に置いて鑑賞に臨むと舞台挨拶が付いていて質疑コーナー、やけに多い女性客から黄色い質問が飛ぶ。
「虹郎くんは(映画の中で虹郎くんが関係を持った)トースト女とヨシカワのどっちがタイプですか?」

虹郎くんって呼んでる。村上虹郎くんアイドル的人気だった。知らなかった。あと虹郎くん映画の中で結構ふたりとも乱暴に犯そうとしていたのでそんな質問されたら全然関係ない俺がなんとなく良心の咎めを感じてしまうな。俺はトースト女が好きです。

そのへんは上手いこと映画の内容と噛み合ってたのかもしれないなぁと思ったのは『銃』のタイトル、アバンタイトルは艶めかしい拳銃の超接写(キャスリン・ビグローのミリタリー趣味が全開のフェチ映画『ブルースチール』をちょっと思わせる…)、ついでにカラーはモノクロ、とくればなにか殺気立ったハードボイルド的なものをイメージしてしまうが、実際はハードボイルド世界を夢見ながらもハードボイルド人間には決してなれないヘタレ学生のお話。

そのヘタレ学生の人間的弱さとか未熟さに虹郎くんのアイドル感がちょうどフィットして、虹郎くんカッコカワイイ~って感じになってたようにおもうので、父・村上淳との共演も含めてキャスティング勝ちの観。
それにしてもえらい親子共演であったよ。その場面で来るの!? みたいな。その場面で来るんです(どこだ)。

おもしろかったのはメタリックなモノクロ映像と虹郎くん演じる銃拾っちゃった学生トオルくんのモノローグで進行する作りが糞だせぇ、隙あらばサックス流しちゃったり厨二メンタル圏内から一歩も出ないガワだけハードボイルド糞だせぇ…って見ていてずっと思ってたんですが渾身のオチに辿り着いてこの糞ダサさ、ガワだけなんちゃってハードボイルドの世界は強さに憧れる系学生トオルくんの主観が作り出したハリボテ構築物だったのだ、というのが判明するところ。

ある意味どんでん返し系のびっくりオチ映画。なるほどなるほど、ダセェダセェとしか思わなかったトオルくんのモノローグもそれを踏まえると結構切ないものがあるな。
俺は孤児だぜ。たった一人でハードボイルドに生き抜いてきたぜ。女には超強くてみんなメロメロのヤリヤリだぜ。みたいな。
しかし外から見た虹郎くんは友達のいない単なる孤独な学生で、セフレを探してた年上の女にハントされたことを自分がハントしたと思い込む、思い込みたい、そんな人なんである。

モノクロ映像と普通人が銃を手にしたらの発想から『斬、』公開を控える塚本晋也の『バレット・バレエ』が頭に浮かび『銃』のタイトルも『斬、』ならぬガン、と呼びたくなったがこの銃は塚本晋也の殺意の込められた銃ではなくて、『鉄砲玉の美学』の渡瀬恒彦や石井總亙の『シャッフル』で中島陽典が持っていた、何者にもなりきれない人間の強さへの憧れの込められた銃なのだった。かなしい。

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鉄砲玉の美学[Amazonビデオ]

美学なんてどこにもなかったニューシネマ風の東映ちんぴら映画。渡瀬恒彦が拳銃とうさぎを飼います。

↓原作


銃 (河出文庫)

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