武田梨奈の連続蹴り76分勝負映画『By 6 am 夜が明ける前に』感想文

《推定睡眠時間:8分》

2009年に『ハイキックガール』で武田梨奈がデビューした時は俺の記憶では主に映画秘宝界隈でアクション冷遇のこの時代についに日本から本格派のアクション女優が誕生した! と大いに盛り上がったのだが、変に秘宝つまりサブカル界隈で持て囃された結果として仕事の幅が狭まってしまったのか武田梨奈が本邦では貴重なアクション女優としてメインストリームに躍り出ることはなかった…とそのような武田梨奈基礎情報があったので武田梨奈主演のアクション映画がついに公開と知った時には欣喜雀躍といえばそれは大袈裟だろうがヨカッタナァァァァである。それがこの『By 6 am 夜が明ける前に』だが、でもよく考えたら今年は既に『室町無頼』というメジャーなアクション時代劇で武田梨奈ちゃんとアクションやってたから待望の武田梨奈アクションという感じでもなかった。まぁでもこちらは主演作だから、主演作。

さて主人公の武田梨奈だが専業主婦である。元SATという設定がほんの一言二言セリフで説明されるかされないかするだけというあたり予算の限界(限界が低いよ!)を感じるところだが、ともかく結婚と出産を機に武田梨奈は警官ではない第二の人生を邁進、していたものの、アクションのできる元警察官ということでかつての同僚が武田梨奈を頼ってくる。なんでもその同僚の仲良し弟が失踪してしまい半グレ連中と関わっているかもしれないということらしい。協力してやる武田梨奈だが主婦業はおそろかにはできないってんで活動時間は娘と夫の寝静まった0時から6時まで。はたして武田梨奈は半グレの魔の手から同僚の弟を救い出すことはできるのであろうか。そして、睡眠時間は大丈夫なのであろうか…?

こんなようなあらすじであるから最初は一夜の出来事を描く『ラン・オールナイト』のような映画だと思っていたのだが、なんかそうじゃなくて何日かに分けて事件をちょっとずつ捜査していくという展開。一夜の徹夜ならまだしも数日にまたがる徹夜捜査はさすがに心配になるが寝不足描写はなかったし明らかに夜間のバトルで骨折級の怪我をしているのに朝になればケロッと娘のお弁当を作っているし夫も妻の異変に気付いていなかったので武田梨奈は人間ではなかったのかもしれない。なんでこういう脚本になったんすかね。一夜の物語とした方がドライブ感があって盛り上がるような気がするんですが。

まぁ内容的には深夜ドラマかVシネの域は出ない。基本的に予算がないのですべての面で安っぽいし上映時間が80分を切っているわりにはキャラ紹介にしっかり時間を取ってしまうのでテンポが悪い。続編匂わせオチになってたからもしかしてこれシリーズ化前提で今回は導入編だったのか。だとしたらキャラ紹介を重視する妙なテンポの悪さも一夜だけでなく何日かに渡って深夜捜査するシナリオも頷けるところがある。たぶん武田梨奈が深夜の間だけシンデレラのごとく凄腕のパニッシャー捜査官に変身して元警官仲間たちと共に毎回いろんな事件を解決するパターンにしたかったんだろう。

しかし見所はもちろんそんなところではなく武田梨奈のアクションに尽きる。ちょっと見せ方に工夫が足りずもっさりと見えてしまうところもあるとはいえハイスピードかつ正確な連続蹴りは迫力いっぱい、武田梨奈が半グレどもをバッタバッタとなぎ倒していく姿はやはり予算の都合上地下道とか地下駐車場とか映えないバトルグラウンドばかりだがそれでも爽快痛快。武田梨奈のアクション力(アクションぢから)でいろんな弱点をカバーした映画と思えば、まぁ上映時間76分とかだしそれなりに満足。それなりに満足という日本語はおかしいがそれなりに満足なんだ。そうと言うほかない。

仮にこの映画が劇場公開は難しくて配信用ドラマとかでシリーズ化されれば武田梨奈の見事な蹴りをこれから何度も見られるわけか。それはちょっと楽しみなのでシリーズ化よろしくな!

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