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2000年以降のアメリカ映画の大きな変化といったらアメコミ映画の席巻などが挙げられるだろうがその陰に隠れて忘れられがちなような気がするのがパロディ映画とバカ映画のほぼほぼ壊滅であった。思えばかつてのアメリカは世界でいちばんパロディ映画とバカ映画を作っていた脳みそドブ捨て映画先進国、おそらくその起源は1970年代の『アニマルハウス』などナショナル・ランプーン系映画やコメディ映画ユニットZAZの『ケンタッキー・フライド・ムービー』あたりだと思われるが、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』、『裸の銃を持つ男』、『ポリスアカデミー』、『オースティン・パワーズ』、『メリーに首ったけ』と、綺羅星の如し脳みそドブ捨て映画が1970年代以降のアメリカを彩ったもので、2000年に公開された『最終絶叫計画』もその系譜に連なるクソバカパロディ映画である(なぜかこういう映画を撮る人はザッカー兄弟、ファレリー兄弟、そして『最終絶叫計画』のウェイアンズ兄弟など兄弟監督が多い)
だが、時代は変わった。それから数十年、かつてはジャリガキ向けのおとぎ話だと思われていたアメコミ映画はそうだな『ウォッチメン』ぐらいからですか、なにやら社会問題や政治問題を積極的に取り入れて大人の批評家も高く評価する真面目な映画となってしまい、かつてはジャリガキ向けの殺人見世物だと思われていたホラー映画もジョーダン・ピールの『ゲット・アウト』などを筆頭にやはり社会問題や政治問題を取り入れてアカデミー賞にノミネートされるまでになり、そしてコメディはといえば、ゼロ年代にはウィル・フェレルの『俺たち○○』シリーズなどのバカ映画が量産されていたものの2010年代には……と何かたとえを出そうとして脳内をまさぐったがパッと出てこないぐらい2010年代のアメリカではコメディが下火になっていたようで、かろうじて『ハングオーバー!』シリーズなどが話題になった気がするが、それにしたってシリーズ一作目は2009年の映画なのであった。
ようするに、1970年以降基本的にバカでふざけていたアメリカ映画は21世紀になるとどんどんお利口になってしまい、それに伴って大卒インテリは完全無風だが中卒の土木作業員は大爆笑みたいな頭の悪いパロディ映画とバカ映画は姿を消していった、とひとまずは言えるだろう。だが本当にアメリカはお利口になったのだろうか? アメリカ映画はたしかにお利口になったかもしれず学歴も高くなったかもしれないが、アメリカ人全体でいえば別に20世紀に比べてお利口になっていなかったことは某トランプ大統領の二選によって疑いない。映画館の外には学歴の高い映画は難しくてよくわかんないしあとなんか無駄に長いから観られない低学歴者がたくさんいる。現代のアメリカは政治分断が問題視されているが、分断されているのは政治だけではなく映画の観客もなのだ。ならばその分断を埋めるため、今こそ偉大なるアメリカにパロディ映画とバカ映画を取り戻そうではないか! そのような高邁な理念があったかどうかは知らないが、あの『最終絶叫計画』がなんと13年ぶりに復活してしまったというのだから、面白いかどうかはさておき快挙であろう。だって2026年の映画なのにちっちゃいチンコネタを何度も擦りヴァギナをクンニでマリファナみたいに巻くというシーンを映像化していたから(よくモザイクなしで日本公開できたな)
だがその復活作は相も変わらずメインが『スクリーム』のパロディである。識者によると『最終絶叫計画』シリーズは途中から『スクリーム』が関係なくなったらしいのだが、13年振りの新作となる今回は『スクリーム』回帰(奇しくも『スクリーム』シリーズ最新作も先日公開されたばかりである)。そもそも一作目の時点で思っていたのだがスラッシャー映画のパロディ映画である『スクリーム』のパロディ映画というのはパロディのパロディになるわけでそれはパロディとして成立するのだろうか? 普通パロディというのは真面目なものとか笑えないものをパロディにするから面白いのであって、最初から笑えるパロディだったものをパロディにしても……とか思うのだが、それに加えて当たり前のようにゴーストフェイスが「お前の好きなホラー映画は何だ?」と被害者に電話をかけてくる展開には、これ今の若者なんか『スクリーム』リアルタイムで観てないからパロディだとわからんだろというところもあり、今回アメリカローカルの社会風刺ネタとか政治ネタが多いこともあってなかなかパロディ映画としてゲラゲラ笑いにくい。パロられている作品の一つに『ゲット・アウト』があるのだが、これなんか典型で最近のホラー映画はギャグやパロディを最初から含んでいることが多いのも向かい風、この2026年にホラー映画のパロディ映画を作るのはどうも大変だったようである。
パロ作品は多岐にわたり、『マイケル』、『スクリーム』、『ゲット・アウト』、『テリファー 聖夜の悪夢』、『サブスタンス』、『ミーガン』、『ジョン・ウィック』、『バレリーナ』、『罪人たち』、『ハロウィン』(2018)、『ウェポンズ』、『ロングレッグス』、『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』、『ファイナル・デッドブラッド』、エトセトラエトセトラであるが、そのパロディときたらまぁこのシリーズは昔からそうだったかもしれないが雑の一言、たとえば主人公が母親の家に行ったら『ハロウィン』(2018)のローリー風のカツラをつけて家にブービートラップを仕掛けてた、とか、クリスマスのデパートで『テリファー 聖夜の悪夢』の時のアート・ザ・クラウンが子供たちにバラバラになった人体を配ってる(だけ)とか、新作映画が『マイケル』じゃなくて『ジャーメイン』、ヒドいものになると電車に乗ったらいろんな殺人鬼に混じって乗車していたミーガンが意味もなく踊るとか、もはやパロディにもなっていないんじゃないかというレベルである。
しかし、けれども、ながら……こんなのね完全に質より量ですからこの量で来られたら強制的に思考力を吸い取られて笑っちゃうし、雑すぎるがために奇跡的に生じた爆笑パロディだって中にはあるのだ。そうたとえば『サブスタンス』のパロディとかね。登場人物が『サブスタンス』の薬を打ったら背中が割れて、本家だとここからキレイになった自分か異形の怪物が出てくるが、『最終絶叫計画 令和!』では割れた背中からエプスタイン・ファイルが出てくるのである。あまりにも雑なパロディであり雑な時事ネタでありそして完全に意味不明である。意味不明すぎてめっちゃ笑うよこんなの。社会風刺ネタの方だとゴーストフェイスが黒人被害者の前にムチを持って現れたから被害者が「奴隷制度を彷彿とさせて不謹慎だろ!」と言うとゴーストフェイスが「違うよ! たまたま納屋に置いてあったんだよ!」と弁解、ムチがダメならとゴーストフェイスが被害者を殺すために近くの木に縛り首の縄を作ったので被害者「もっと不謹慎じゃねぇか!」。これとかも笑ったわ。
まぁこういう映画は考えるだけ無駄ですし考えれば考えるだけみなさんの負けなのでスクリーンに脳みそを吸われるが吉です。くだらない、本当にくだらない! 観た後には間違いなく知能指数が下がってると思われますが、もしかすると本当にもしかするとの仮説ですが、世の中の分断はみんなが自分は賢いんだと覆った結果生じている可能性も否定できませんので、こういう映画を観て知能指数を下げることは世の広がる分断の処方箋かもしれません。賢い映画なら「うむ、我々はもう年寄り、若い人たちの新しい価値観を尊重しよう」などと若者に好かれようとしてやったりするものですが、この映画ときたら開き直って若いヤツはバカだからてめーらの言うことなんか知るか全員死ねと中年たちがやるわけですから笑っちゃいますし、なんか逆にそこまでやられると平和だよね。