前章よりも更に平和で退屈な日常映画『機動警察パトレイバー EZY File 2』感想文

《推定睡眠時間:0分》

いま映画サイトを見たらシリーズ完結編の『File 3』は2027年3月公開だそうで、元々配信用に制作された(と思われる)アニメなんだからそんな勿体ぶるようなものでもないと思うのだが、とにかく次が見られるのは半年先らしい。当然そうだろうと思うが最終章はパトレイバーがしっかり活躍するポリスアクションないしポリティカルサスペンスになる模様で、これがテレビなり配信シリーズだったらパトレイバーがほとんど活躍しないエピソード1~6までのゆる~い平和なエピソード(エピソード5だけは少しだけシリアス路線)でぼけーっとしていたところに急に本気の有事がやってきてシャンと背筋を正すところだが、さすがに半年空いてしまうとそのへんの急旋回の面白さは感じにくいかもしれない。

でこの『File 2』はまだ日常回、エピソード4『ワインと銃弾』は監査前に棚卸ししてたらリバルバーカノンの弾薬が一個足りないことを整備班が発見して……という室内会話劇、エピソード5『あさき夢みし』は再開発で取り壊される神社を巡る都市幻想譚で、もし押井守がEZYに参加していたらいかにも押井がやりそうな回なのだが、意外にも出渕裕が監督だけでなく脚本も書いた出渕さん肝いりの回。エピソード6『恋のサバイバル』は少しだけ非日常回で土砂災害で遭難した民間人の救助のために現場に向かった二課の二人(久我と桔平といっただろうか)が土砂崩れに巻き込まれて逆に自分たちが遭難してしまう、というお話。

『File 1』はさすがに導入編ということでエピソード1からウォーミングアップ的な形だとしてもしっかりパトレイバーのアクションシーンがあったものの、『File 2』はパトレイバーの活躍ほぼなし。『WⅩⅢ 機動警察パトレイバー』よりもパトレイバー動いてなかったんじゃないか。まぁ今回はキャラクターと社会背景を見せる回ですね。前者はシリーズアニメでは一般的なことかもしれないが後者は『パトレイバーEZY』の特徴的なところで、現代の延長線上の近未来日本を見せるというのはどうも『EZY』のサブテーマ(シリーズ構成・伊藤和典のカラーのような気がする)、エピソード6にはおそらく東日本大震災時の除染土が山中に投棄されている場面があるが、久我と桔平はそれが除染土であることに気がつかない。『EZY』の時代設定は2030年代なので、現・特車二課の若手警官たちは震災時にまだ生まれていない可能性もあり、現代の我々なら「あ、除染土だ」と気付くものがピンと来ないわけだ。

これまでのところ『EZY』には2030年代の近未来日本であることが効果的に生かされているエピソードはなかったように思うが、最終章『File 3』ではおそらく伊藤和典が脚本を書いているであろうから、パトレイバーシリーズの他にも『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『ガメラ2 レギオン襲来』など90年代以降の邦画SFを牽引したこの人のこと、近未来設定を生かしたSF的かつ社会風刺的な事件なり事故なり危機的状況が描かれるんじゃないだろうか。というわけでなにはともあれ最終章に期待である。

この『File 2』に関していえば事件らしい事件が起こらないこともあって前章よりもまったりしたながら見推奨アニメって感じ。お話自体はそれなりに面白いけど前章の時の感想にもたぶん書いたなこれ、やっぱり監督・出渕裕の資質があんまり映画的じゃないっていうか、室内会話劇のエピソード5とかは仮に押井守が監督だったらあの人は実写映画のカメラなり編集なりがしっかり頭に入ったシネフィルだからもう少し変化を付けて面白く見せたんじゃないとか思ってしまう。たぶんメカの全体像をしっかり見せるみたいなアニメ・特撮の発想が出渕裕という人の根底にはあって、それはメカが前面に出てくるエピソードなら映えるのかもしんないですけど、日常回だとちょっとケレン味を欠いたフラットな画面になっちゃうんですよね。現代日本の日常の中で巨大ロボットを活躍させるというパトレイバーシリーズのコンセプトはアニメ的な空想と実写映画的なリアリティが半々で、出渕裕はアニメ的な空想は得意でも実写映画的なリアリティの醸成はあんまり得意ではないように見えるから、それでちょっと締まらない感じになっているのかもしれない。

個人的な好みでいえばもう少しキャラを立てる回(合宿回みたいな)を作ってもよかったような気もするけれども、まぁでもこのそんなにキャラが濃くないしキャラ同士の絡みも多くない、というのも近未来日本のリアルなのかもしれないし、警察官の理想は事件ばかりの世界ではなく事件のない平和で退屈な世界なのだから、それを見せるアニメと思えば、これはこれで、という感じ。最終章ではパトレイバーが出動せざるを得ない大事件が起こるのでしょうが、その時にこれまで積み重ねてきた平和な日常エピソードが生きてくるってなわけで、なんだかんだ家でゆるっと見る分には悪くないアニメだし悪くないパトレイバー、面白かったですよ。一番よかったエピソードはエピソード5『ワインと銃弾』かなぁ。これはキャラを立てる回でしたね。とそんな感じで半年先の最終章を待ちましょ。

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