【未体験ゾーン2024】9週目の感想文(『タイムマシン2024』と『キック・ミー 怒りのカンザス』)

今年の未体験ゾーンもヒューマントラストシネマ渋谷ではついに最終週。まだ上映が続く劇場もあるかとは思いますが俺にとっての未体験はこれはひとまず終わりでございます。ひとまずというのは前はなんか人気投票やって人気上位の映画はアンコール上映してたからなんですが今年は人気投票やってないしアンコール上映ないんじゃないかな。まぁ、なんでもいいや。観たいやつはだいたい観たし。

未体験2024年を終えての感想をちょっと書くと、今年はあれだね、前にも書きましたけれども例年に比べて少数先鋭という感じで上映作品が少ない一方で作品の質は全体的に高かったんですが、とにかく三週目がツラかったっていうのが個々の作品の記憶をほぼ全部上塗りしてしまったな。この週一週間限定上映の映画が七本上映ですよ。いや無理だろ! 無理だから俺はこの週三本しか観てないので本当は別にツラくはなかったんですけど、未体験ゾーンといえばスタンプラリーが恒例なので全作コンプリートを目指した人は三週目で死んだと思います。えー、ぜひともですね、来年の未体験ゾーンはどうか、どうかどうか多くて週四本を上限にタイムスケジュールを調整していただいて…ね? とまぁそんな感じでラスト感想行きましょう!

『タイムマシン2024』

《推定睡眠時間:0分》

今年の未体験ゾーン作品でいうと『シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険』が近いジャンルになるかなというジュブナイルSF。両親が事故死したっぽいものの死体が見つかってないから気持ちの踏ん切りのつかないキッズ男子が両親を求めて森に入ったらそこには謎の宇宙人らしき人影と謎の宇宙船らしき物体があるではないか。中に入ってみたらキッズ男子よりちょっとお姉さんのキッズ女子がいてこの宇宙船らしきものはタイムマシンでもあることが判明、なんやかんやでふたりは白亜紀へ。キッズ男子は恐竜が好きだったので喜ぶが人跡未踏の白亜紀地球にはさまざまな危機が待ち受けているのであった。

完全に子供向けの映画なのだがタイムマシンで恐竜時代を冒険のプロットが往年のSF小説を思わせて、思わず童心に返って楽しんでしまった。無駄な台詞や説明などなくテンポ良くいろんな恐竜とか怪生物が出てきて80分できっちり終わる。変にヒューマンドラマに寄せたり教訓じみたものを含ませることもない。男女バディも藤子・F・不二雄先生のおそらく本人的には入魂作であったはずだが世間的にはさほど知られていない『T・Pぼん』みたいで良い。

こどもB級映画の鑑のような作品なのだが、ただ出てくる宇宙船兼タイムマシンとか恐竜・怪生物が全部そんなにクオリティの高くないCGなのは時代的に仕方の無いこととはいえちょっと寂しかった。案内ロボットなんかキャラも造型も良かったんだけどね。

『キック・ミー 怒りのカンザス』

《推定睡眠時間:0分》

これは去年のカナザワ映画祭で観て、そのときにおもしれーっていう感想をこのブログでもう書いちゃってるので、あんま付け加えることとかないんですが、ただカナザワ映画祭で観たときは35分くらいは少なくとも寝てたので俺の中ではこれが完全版という感じで、なるほどそういうことだったのか! 生徒てめー! みたいな、欠けてたピースが埋まったりはしました。あとその時の感想には主人公を高校の校長先生って書いちゃいましたけど正しくはスクールカウンセラーだね。なんか、ダメな生徒の相談役になってあれこれ力になってくれる人。

まぁ2度目を観て思いましたのは、これフィルマークスとかで感想見ると意外と評価が低いんですが、かなりオフビートな映画なんですよね。主人公は退学寸前の生徒の希望でカンザス州カンザスシティ、通称KCKにあるこの生徒の家に行って、そしたらなかなかのてんやわんやに巻き込まれるんですけど、そこで主人公が出会う人々とか光景って話の通じないヤバイ人ばかりと見えて実はKCK的には普通の人たちで普通の光景。そのカルチャーギャップが笑えるって映画で、だからアクションとかサスペンスと思って観ると、え、なんだ緊張感も迫力もないじゃんって感じになる。それでたぶんネットの評価があんまり芳しくないっぽい。

もったいないねぇこんなに面白い映画なのに。カナザワ映画祭のオンライン舞台挨拶ではKCK在住の監督ゲイリー・ハギンズが「みんなにKCKに来てもらいたいと思って」と笑顔で語っていたように、これはKCKってこんなに(頭がおかしい人ばかりだし死体がそこらへんに転がってるけど)のどかで楽しい町ですよというご当地映画、そして各方面からさまざまなストレスに晒される現代人のデトックス映画だ。あんまり関わりたくはないがどこか愛嬌のある変人奇人たちが歌って踊って人を殺し金を騙し取り屋外で糞便を垂れ小学生はマリファナをやりながらピックアップトラックを日常的に運転する無法だがゆるいこの映画の中のKCKを見れば、人生こんなに適当でもやってけるんだなと少しだけ気が楽になり、あなたもきっとKCKに行きたくなるに違いない。そんなわけあるか!

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