スマホ教育映画『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

コカイン中毒者だっておめぇ台所にブツを取りに行くぐらいはするんだよ。な? 中毒者同士で挨拶だってするじゃねぇか。翻ってお前はどうなんだよ。毎日毎日ベッドから動かず一人でスマホばっかいじってNetflixだHuluだFacebookだなんだってお前。え? お前ジャンキー以下じゃねぇか。お前はジャンキー以下の人間だよこのスマホ野郎!

泣いてしまう。スマホ中毒主人公のアダム・ディヴァインが天に召されたスマホを直してもらいにスマホショップに行くと当たりが強すぎる店員に圧倒的正論で殴られるのだが、なんで客を愚かなスマホ中毒者にして盲目的にスマホを買わせ続けるために存在するはずの店員にこんな正論で殴られなければならないのだろうか。ある意味良い店員かもしれないがオブラートってものがあるんじゃないのか。その後、毒舌AIジェクシーの正論的暴論によって死の淵を見ることになるアダム・ディヴァインと俺であったが、ジェクシーに出会う前からわりと残りHP的にはレッドゾーンであった。

朝起きてもスマホ、通勤中もスマホ、帰宅中もスマホで家に帰ったらもちろんスマホ。たまに仕事仲間に遊びに誘われても「ごめん、今日は予定が…」そう答えながら見ているスマホのリマインダーに予定はゼロ。綺麗な景色を見れば頭に浮かぶのは「Facebookに投稿してイイねをもらわなきゃ!」もちろん画像はキッチリ加工してバズるまではいかなくともウケる感じにすることを忘れない。メインSNSがTwitterであることを除けばこの主人公、完璧に俺である。いや、たぶんあなただってそうでしょ! あなただって端から見たらこんな感じのダメ人間ですよきっと! え、違うの!? 違うなら店員の圧倒的正論に一人で泣くしかないじゃん…助けてジェクシー!

とこういうわけで22世紀の未来から来たとしか思えない人間志向型超高性能パーソナル・アシスタントのジェクシーが中国の貧困キッズたちが組み立てたスマホに載って主人公の下にやってくるのですがスマホを初回起動したその瞬間から容赦ない正論の暴力、「使用許諾書を読みあげ」「同意同意、同意します!」「使用許諾書をダウンロードしま」「しませーん」「このクソバカが!」

わかってる。ぼくジェクシーさんが間違ってないの知ってる。でもオブラートってものがあるじゃないか。これを言うのは二度目だよ? 確かにこの主人公はアホだ。暗証番号を面倒臭いから全部123456789にしているぐらいアホであるが、だからって「このフェラ野郎が!」とか言わないでいいよ。泣くじゃん。まぁでも暗証番号は泣かせてでももうちょっとセキュアな感じのものに変更させた方がいいと思います。

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ざっくりそんな感じの、言ってみればR15版『ドラえもん』、もしくはコメディになったリメイク版『チャイルド・プレイ』、あるいはAI化に加えて女体化を施した戸塚ヨットスクールのような映画であった。このアメリカののび太くんを超AIジェクシーが言葉の暴力と時には自動運転車をハックして襲いかかるなどのダイレクト暴力を駆使してスマホなどに依存しなくてよい一人前の人間に育て上げていくという筋立ての一種のビルドゥングスロマンである。

ジェクシーの言うことは正論ばかり。UberEats的なアプリを使って栄養バランスの崩壊したジャンクフードばっか食ってる主人公にはケールサラダを食わせ、パワポで適当に作ったでけぇ画像をでけぇ声で部下に見せることで仕事やってる感を出す無能上司マイケル・ペーニャにはパワポでなんかプレゼンした気になってる奴なんてクソなんだよと歯に衣着せぬストレート批判。そいつ童貞だろ? 童貞だろ? いやそれも正論ていうか正確な情報だけどそれは言わなくていいから!

少々だいぶかなり相当やばいジェクシーではあったがそのおかげで主人公ののび太くんには友達が出来て恋人まで出来た。ワオ! 前は一目惚れした彼女の働くサイクル・ショップに話しかけ目的で立ち寄ろうとして入口のドアに手を掛けようとしたところで自分からドアに激突しあっぶつかっちゃった! イタタ! ダメだこれ帰ろう! あー残念だけど仕方がないな偶然の事故だし! 事故だし! 万事がこんな調子であったアメリカンのび太くんに彼女が出来るなんてジェクシー様々である。が、そこから彼女にうつつを抜かしてスマホを放置しがちになった主人公に対するジェクシーの逆襲が始まるのであった。

こんなしょうもないバカ下ネタ映画でもカーアクション&クラッシュを入れてくるアメリカ映画はすごい。映画のオモシロポイントは確実にそこではないのだがなんだか感心してしまった。主人公はニュース系のウェブサイトかなんかのバラエティ記事担当ってわけで毎日毎日「絶対に面白い○○10選」みたいなバズり記事タイトル案を10個案出させられているとか、この主人公がスマホ中毒になったのは喧嘩ばかりしていた両親がとりあえず子供時代の主人公を黙らせるためにゲームのできるケータイを渡していたからとか、風刺が効いてますよね。そこも感心させられるところ。

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どうせバカ映画だからと適当にやっていいわけじゃないっていうのは福田雄一の映画とは違うアメリカン・バカ映画の作り手たちの矜持。なんで急に福田雄一出てきたの今!? いやこれは俺が書いたんじゃなくて正論的暴論しか言わないジェクシーが勝手に書いたことなので…まとにかくですね、暇を見つければ通勤中だろうが仕事中だろうがデート中だろうがツイッターを開くお前! それからラーメンでもスイーツでもなんでもかんでも食う前にスマホで写真撮ってフィルターかけてインスタとかに投下するお前!! そして暗証番号を分かりやすい数字並びとか小文字の単語とかで済ませているお前!!!

そういう人たちは観て存分にジェクシーに叱られたらよいのですというバカだけれども啓蒙的社会風刺映画、それが『ジェクシー!』でありました。こういうのは学校とかで教材として流せばいいね! まぁハッパ吸うしスマホで生チンポ撮ったりする映画だから無理だと思いますが!

※ジェクシーが「私の弱点は人間の感情を持ってしまったことですね」って言うホロリ感のあるシーンがあるが、その後の展開で人間の感情を持ってしまったことが本当に弱点すぎる弱点であったことが判明し、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』の原体験によりロボットが人間的感情を持つことを半ば無条件的に肯定する日本人に対して一石を投じるところであった。一石どころか岩石ぐらいは投げてる感じでしたが。

※※マイケル・ペーニャのエキセントリック上司っぷりも安定の面白さですがアダム・ディヴァインが当たりの強すぎるスマホショップ店員に散々罵られた後に(スマホを)下さい…と言う時の顔、「ぷるぷる」の擬音が聞こえるようで最高。この人はネッフリ配信のみになってしまった『ダイ・ハード』オマージュのアクション・コメディ『ゲームオーバー!』でも出演に加えて製作・原案を兼任、たいへん良い仕事をしていたので次のセス・ローゲンとして期待したい。

【ママー!これ買ってー!】


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逆に、人死にの出る『ジェクシー!』がリメイク版『チャイルド・プレイ』とも言える。

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