レベルファイブ完全移植映画『二ノ国』感想文

《推定睡眠時間:20分》

企画に困った映画屋がアプローチをかけてくるほど『二ノ国』って人気のあるゲームなんだなぁと思って観ていたら製作にレベルファイブが入っていて製作総指揮と原案に留まらず親玉の日野晃博が脚本まで書いていたことがエンドロールで発覚、レベルファイブのバブルっぷりにおどろきの一切ないおどろきのオチよりもおどろいてしまった。

90年代ならまだわかるが日本に軸足を置いた現代のゲーム会社でこんな無駄な金の使い方ができるところがあったんですね。レベルファイブと日野晃博が業界の寵児的な扱いを受けていたのもせいぜい3DS版『妖怪ウォッチ』ぐらいまでだろうとざっくり思っていたがどっこい続いていたよ日野フィーバー。どんな錬金術を使っているんだ。

ゲームの方の『二ノ国』はやったことがないのでわかりませんが個人的にレベルファイブゲーといえば! 始めはやたら盛り上がるがわりと途中で飽きる。最初に触れたレベルファイブゲーはシリーズ初の3D作品となったPS2の『ドラゴンクエストⅧ』で、なにせ今のようにオープンワールドが一般的でない時代のことだからPSでもドット絵スタイルを貫いた前作『Ⅶ』からのグラフィック面の急激進化もあり、3Dで自由に歩けるドラクエ世界にたいへんな感動と興奮を覚えたものだった。

でも序盤だけでしたよねぶっちゃけ。結局途中で飽きて投げてしまったのは確かに、確かにつまらないゲームでは全然ないが、ないのですが、広大な3Dワールドとか、アイテム合成システムとか、『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズの流れを汲んだようなモンスター闘技場とか、できることは色々あるがどれも中途半端なので一通り遊べるようになった頃にはもうなんかゲーム終わったような感じになっちゃったから。最初はあんなに魅力的に見えた3D世界も慣れてしまえばたまに宝箱か野良モンスターが落ちてるだけの虚無い世界であった。

レベルファイブゲーだいたいこんなイメージで『妖怪ウォッチ』とかも出来ることがどんどん増えていく序盤は楽しいけれどもそれ以降は作業感が強くなって子供って忙しいなとか思ってしまう。俺なりにその虚しさを分析してみるとレベルファイブというのはようするに、小手先の賑やかしに注力し過ぎてそのゲームの面白さのコアを見失ってしまいがちな傾向にあるのではないかと思う。

『ファイナルファンタジーⅦ』のミニゲーム場ゴールドソーサーは確かに面白いがあくまでプレイヤーにちょっとした息抜きをもたらすサブ要素であって、『FF』の面白さのコアであるところのストーリーとか演出よりもそこを充実させようとしたら本末転倒、で『ドラゴンクエストⅦ』とか『妖怪ウォッチ』は俺にはそんなゲームに見えて、『二ノ国』もやっぱそんな映画に見えたんである。うん、ダメだこりゃあ。

でもレベルファイブゲーのダメなところをちゃんと踏襲してるんだから原作再現度はある意味高いですよね。原作がどうの原作がどうのと原作ものジャンル映画が公開される度に騒ぐ原作厨もこれなら文句ないだろ。いいかね、君らが金科玉条にしている原作再現というのはこういうことだからな。いくら原作を尊重したってそれが必ずしも面白さに直結するわけじゃないんだよ映画は! …この『二ノ国』はオリジナルストーリーだそうですが。

そのオリジナルストーリーがどういうものかというと車椅子の頭脳派高校生男子とその親友の体育会系男子高校生が仲良し女子の突然の通り魔被害を契機にファンタジーな異世界「二ノ国」に飛ばされてしまう。このファンタジー世界とリアル世界はパラレルな感じで繋がっていて微妙に影響を与え合ったりしているらしい。二ノ国には通り魔に刺された仲良し女子そっくりの王女がいたので…まぁなんかそれで色々あるわけである。色々ありすぎて逆につまらなくなってきたりするわけである。

そこが逆におもしろいというとまた捻くれた逆張り感想になってしまうが、とはいえ実際そうだったんだから仕方がない。おもしろいっていうか興味深かったですよなんか。日野晃博がシナリオ書いてるからゲームの文法なんですよね、映画の文法じゃなくて。だから映画としてはイベントの入り方が唐突で困惑させられたりベタな説明調の台詞が聞くに堪えなかったり物語の軸が定まらなくて散漫だったりして違和感バリバリなんですけど、JRPGのシナリオと考えると特に違和感はなくてむしろよくある感じ。

じゃあその違和感はどうして生まれてしまうんだろうと考えるとたぶんそれは視点の問題で、JRPGだとプレイヤーはゲーム世界の外に存在する自分の視点からゲーム内世界を見るじゃないですか、メニュー画面とか戦闘画面とか切り替えたりしながら。自分の視点でゲーム内世界を能動的に見て遊ぶっていう前提があるからシナリオが散漫だったり断片的だったりしてもプレイヤーが自分で繋ぎ合わせて補完してしまえる。ゲームのシナリオはすごい省略が利くわけですよ他のメディアのシナリオと違って。

でも映画はそうじゃないじゃないですか。JRPGをプレイしてる時みたいにいま俺は映画を観てるんだなぁって観客が常時自分の存在を意識する必要はなくて、誰かの視点から捉えられた画面に自分の視点を同化させればいいし、感情移入とか没入感とか表現されたりするそういう視点の同化体験を映画に求める人っていっぱいいる。だからその視点がズレないように省略にはテクニックがいるし説明台詞は説明っぽくないように(一般的には)気を使わないといけない。JRPGのシナリオだったらプレイヤーの想像にかなりの部分を委ねることができる登場人物の心情も一本筋の通ったものとしてシナリオで表現しないといけない。

そういうところがこの映画にはない。なのでなんだかものすごくドライな印象。これが新鮮で興味深い。ゲームと映画の視点の違いというのは圧倒的に否に傾いているっぽい賛否両論のラストにも絡んでくる話だと思いますがそこはまぁ、ネタバレ回避で触れないでおくとして、こういうシナリオ文法は映画とかアニメを普段から作ってる人からはあまり出てこないので、そうかぁゲームを映画にベタ移植するとこういうことになるのかぁと、なんというかそういう映画でした『二ノ国』。はい。

補足:
動きのあんまないシンプルな絵も物語次第では生きてくると思うがこういうシナリオなので無味乾燥。ザ・JRPGな異世界描写にも何一つおもしろいところがなかったがこのあたりはちょっとだけ、本当にちょっとだけゲーム作家の自己言及とジャンル批評を感じて、それもなんか興味深いところでした。

【ママー!これ買ってー!】


ボクと魔王

『二ノ国』とは少しも関係しないが名作なので映画化希望。

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りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
2019年9月14日 7:36 AM

監督が元ジブリなんですが、様々な元ジブリの監督の中では一番機会に恵まれてないかも?作画面も「メアリと魔女の花」のスタッフを少しでも呼べたらなぁ。(君の名は。以降、後追いのアニメ映画ブームで業界全体が人材不足らしいですが)

初稿では二ノ国だけでの話にするつもりが「現実世界との行き来がウリじゃなかったのか?」と劇伴の久石譲に指摘されて書き直したそうですが、結果的に良かったのか?

監督にも脚本をいじる権利が欲しかったし、個人的にはゲーム版ムービーの総集編映画が観たかったけど、新規作画のクオリティが下がりそうなも否めないです。