わんわん恐怖映画『犬鳴村』感想文(途中から微ネタバレあり)

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , ,

《推定睡眠時間:15分》

村こえー。冒頭のヤングカップルが犬鳴トンネルを抜けて犬鳴村に行くところ、POV的に撮ってるので画質は粗いし背景は暗い、ちょこちょこと忙しなく動くカメラに何かが映り込んでいる気がするが、それが何だったのか、本当に映り込んでいたのかもよくわからない。という心霊動画的な演出だけでも怖いのに場所が村です。山奥の村。村っていうか集落。照明ゼロの完全廃墟。

家々と木々が密集して見通しが悪いし湿り気を帯びた古い日本家屋は見ているだけで人間性が死んでいく。中に座敷牢とかあるしこんなものは住居じゃなくて人間の圧迫装置だ。絶対こんなところ行きたくない。廃村じゃなくても行きたくない。あまり言い過ぎるとロケ地の人に失礼だから村ホラーの感想はなかなかたいへん。ガチ廃墟だったらいいけどどうなんでしょう。

で、このヤングカップルは案の定、村で何かを見てしまいます。そしてカップル女家帰っても様子がおかしい、狂ってしまった。ガックリくるカップル男の実家は地元田舎のでっかい屋敷。壁には代々の当主の肖像写真が飾ってあってなにやら因縁感がある。
縁台で途方に暮れているカップル男の下に次男がやってくる。ねぇお兄ちゃん犬鳴村行ったの? いま自由研究で犬鳴村を調べてるんだけど…どんな自由研究だよ! だがこちらがツッコむ間もなくすごい剣幕で葬式ムードの当主・高嶋政伸が次男に吠える。犬鳴村なんて存在しない!

…確実に何かがある。もう、確実にこの家と犬鳴村の間に何かがあるし、この家自体がどよ~んと湿ってすごい嫌。犬鳴村は怖いし犬鳴村の外の村も怖い。いやだなぁもう、村。
ま怖いのが村だけなら救いもあろうというものですが、怪異は村の外まで広がる。この因縁家族の長女・三吉彩花はおもに児童担当の臨床心理士ですが村に臨床心理士の居場所はないので県の総合病院みたいなところで働いている。

そこに奇妙なガキ患者到来。怖い夢を見るの。どんな夢? それはママが言っちゃいけないって。ママがお話してって言ったでしょ? ううん、違うママ。
違うママとは一体…よくわからないがやばそうな気配を感じた三吉医師は奇妙なガキ患者の担当から外してもらうものの、夜半の急なパニック発作でこのガキ患者が搬送され、対応を余儀なくされる。

その夜、三吉医師は見た。院内に蠢くあやしい影を、響き渡る呪詛の声を。そして死にかけ患者・寺田農の不可解な警告を…。
なんだか知らないが大変なことになっている。残念なことになったカップル女の復讐のためカップル男は犬鳴村に向かい、消える。カップル男に関わった地元の微ヤンキーもまた怪異に襲われる。そして三吉医師の母親は…村に行くしかねぇ。三吉医師は意を決して犬鳴村に向かうのだったが、そこで目にしたものは観客もびっくりもそっち系かい! な恐怖であった。

ここから若干ネタバレありますからネタバレ嫌! 死んじゃう! むしろお前を殺す! っていう人はすぐ離脱してね!

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そのそっち系かい! でだいぶ村恐怖が薄らいでしまうのはなんだかもったいないような気もしたのだがまぁサービス精神の表れってことなんですかねこれは。犬鳴村っつってんだからこれぐらいはネタバレにならないと思って書いてしまうが犬神筋ネタを絡めてくるわけですよ、犬鳴村の都市伝説に。

いいっすね。犬鳴村の都市伝説って村に続く道に「ココヨリ先、日本国憲法通用セズ」みたいな看板があるっていう話じゃないですか。都市伝説村でいったらこちらは東北とされる杉沢村は村の入り口にドクロ型の石があって…と随分ひねりがない村シンボルですが、それにひきかえ犬鳴村の「ココヨリ先、日本国憲法通用セズ」の強さですよ。これはシンプルで馬鹿馬鹿しいけれどもきわめて効果的な都市伝説創意。

だって想像してしまいます。誰がそんな看板立てたんでしょう。村の人かもしれないし、村の人を忌み嫌い接触を恐れる村の外の人かもしれない。忌み嫌われるとすればそれは何故か? 彼らは彼女らは社会に同化しない山の民、サンカだったのかもしれない。とすればそこに犬神筋が絡んでくるのは悲劇的な必然であったのかもしれない。地図に載らず日本国憲法の通用しない犬鳴村は戦後の高度経済成長の中で取り残されていった者の存在を想起させるし、表面的な平和の追求の中で握りつぶされた下層民の書かれなかった差別の歴史が浮かび上がってくる…。

日本は森林大国だからこういう村、現代文明から取り残された村がもしかしたら全国のどこかにまだ残っているかもしれない…村ホラーの精髄がありますよね、そこには。地図にない山奥の村はオカルト的な意味でも怖いが、現代の価値観とか倫理が一切通用しない地域が実はすぐそこにあって、ちょっとしたキッカケで紛れ込んでしまうかもしれない、という現実の不条理が怖い。そしてその恐怖は実は、村の外で繁栄を享受しているわれわれこそが作り出したもので、犬神筋の恐怖はわれわれの中にある恐怖なのだ…というのが更に怖い。村の怖さってこういうことなんだと思いますね。

ただね! その設定すごくいいと思うし、あとブレブレ表現のオバケもそこそこ怖くてゾゾーってなるんですけど、全年齢対象だからなんすかねぇ、ギリギリのところで村恐怖の本質からあえて逸らしちゃったような感じがあって。俺これサンカ差別とか部落差別ネタのホラーとして見た目の派手さに逃げないでもっとジトーっと『リング』みたいに作っとけば相当こわかったと思うんですけど、化け猫ならぬ化け犬出てきちゃうからね最終的に。それはなんか、違くない!? いや完成品に違うも違わないもないんですけど…もっとこう、えげつない差別と差別された者の怨念の底知れなさに向かうのかなって途中ちょっと思ったので、化け犬かぁ~そっちか~っていう、そういう感じにはなりましたね。

あと、偶然にも『ドクタースリープ』とネタ被りっていうね。そうか、サイキック妖怪スリラー的に見れば良かったのかもしれない。序盤は『食人族』で中盤『リング』で終盤『犬神の悪霊』と『ジャンク/死霊狩り』でコンテンツ盛りだくさん、ロケーションも幽霊表現も怖かったしお話も面白かったですけど、見方次第でだいぶ印象が変わるタイプの映画かもしれないすねぇ。

※あと地元のズッコケ三人組がなんかよかったです。イイ感じの地元的関係性。

【ママー!これ買ってー!】


犬神の悪霊

犬神といえば一族ではなく悪霊。まさかのアニマルパニック映画要素あり。

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