微妙リブート映画『チャーリーズ・エンジェル』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

金曜の仕事帰りに観る映画は高確率で寝てしまうのであえて寝ても別に大丈夫そうなアクション映画をチョイスする俺ルールに従って観たわけですがなんと118分もあるのに一睡もできませんでした。もう、むしろ、なんなら、疲れてるし映画を観ながら寝ることにはそれなりに心地よさもあるので寝たかったというところもあるのだが、眠れなかった。なんだろうな。そんなに別にめちゃくちゃ面白いわけでもないのにね。

そんなに別にめちゃくちゃ面白いわけでもないのに金曜夜の118分を寝かせないアクション映画、観た直後はなんて微妙な映画なんだと思っていたが、そう考えると案外立派な仕事帰りムービーだったのかもしれない。このね、バランスが難しいんですよ。すごくエキサイティングなアクションシーンがあると疲れてるから寝てしまうし、シナリオが適度に頭使う感じで面白いと疲れてるから寝てしまうし、アクションがまったりしていると寝てしまうし、シナリオが大雑把で全然頭を使わないと寝てしまうし…どれだけ寝るんだと自分で思うが、これ即ち新生『チャリエン』はそのすべての面でエキサイティンにもマッタリンにも振れない、したがってそのニュートラル加減によって逆に仕事帰りの客を寝かさないという実に絶妙な映画であったということです。

ポストモダン思想家のジャン・ボードリヤールは著書の中で中国の肉屋の話を引いている。その肉屋は肉切り名人でどんな肉でもスルッと切ってしまうのだという。いったいどうして。肉屋曰く、みなさんは牛の筋なんかの配置を考慮しないで叩き切るように刃を入れますがそれではうまくいきません、わたしは牛の肉の構造を熟知してますからスルスルスルっと筋の間に刃を入れていくわけですな。流れを的確に把握し決してその流れず逆らわずむしろ積極的に乗る。それこそ肉切りの極意なのです。
こういう映画だったね、新生『チャリエン』。そんなことはないとは言わせない。仮に肉屋もポストモダンも一切作品の内容とは関係しないとしてもだ。

ちなみに元のテレビシリーズも前の映画版も実は全然観ないで今回『チャリエン』初鑑賞だったので俺にとっては新生でもなんでもなかったが、内容的にはこれまでのシリーズ作を踏まえたもので、それが観てない俺でも思わずガッテンボタンを押したくなるなるほど感があったというか、女優のエリザベス・バンクスが監督・脚本・製作・出演…と八面六臂の大活躍な肝いり企画な今回の『チャリエン』なわけですが、あぁそれがやりたかったわけですねとその展開とかコンセプトの腑に落ち方が半端ない。

このへんシリーズが好きな人ほど賛否が分れるんじゃないかとは思ったが、賛の人も否の人もたぶんこの展開・コンセプト自体には違和感あんまないんじゃないすか、という意味で上手いリブートではありましたね。いや俺シリーズ作観てないんだけどさ。

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それでどんなお話かっていうと、正義のスパイ組織チャーリーズ・エンジェルっていうのがいて、作った人がスケベだったのか(?)スパイはみんなとても頼れる女の人です。でそこにお助け系案件入ってくる。白熱灯とかLEDに代わるIoT発光システムを売り出そうとしていた電気ベンチャーの女性プログラマーがシステムの致命的な欠陥に気付くが売り込みに躍起な会社の偉い人は聞く耳持たない。

その欠陥とは発光システムが不正な操作により殺人EMP兵器として使えてしまうというまさに致命的なもの。それなのにどうして会社は聞く耳を持たないのか…まぁ悪いことを企んでいるからに決まっているが、そんな奴らはチャーリーズ・エンジェルがお仕置きだ! かくして電気ベンチャーとエンジェルズ+垢抜けないプログラマーの戦いが始まるのであった。

うーん、ショボいね。なんかショボくないすか、敵。難しいなこれは。作品コンセプト的にそうせざるを得なかったというのはある程度わかるんですけど、でも敵側にあまりに魅力がない。もっとすごい悪い男を敵にすればよかったのって思ってしまうよ。人里離れた別荘で何人も金持ち的はした金で買った難民とかホームレスの女児を飼育して性奴隷にしているとかそれぐらいの悪さは欲しかった。じゃないとやっつけろ感、出ないよね。

というか意識的にあまり出してこない。どうせ映画の中の悪人なんだからみんな殺しちゃえばいいのに、それじゃ野蛮な男と同じじゃんって感じでエンジェルたちはみね打ちを基本にしてんすよね。それは道徳的にもコンセプト的にも正しいけれども映画的にはさぁ…って俺はちょっと思いましたよ。自分でメタルギアとかやるときは初回プレイから麻酔銃をメインウェポンにしてノーキルを目指すんですけどさ。

だからそこじゃないわけですよ見所は。オープニングに本編と全然無関係なアクティブ女子映像集っていうのが入ってくる映画で、女の人だってガンガン好きなことやっていいじゃない! そういう感じですよね。アクションというのはその一つでしかなくて、エンジェルスはシーン毎にファッションを変えるから色んなファッションを楽しめるし、スカイダイビングとかもまぁ一応あるし、競馬の世界も基本的に男社会ですがそこにエンジェルスは食い込んでジョッキーに扮したクリステン・スチュワートがビビットな勝負服で馬にまたがる、音楽はノリノリのポップス垂れ流しで色彩あざやか、字幕には反映されていなかったと思うが下ネタもあって、もう、単発タンクトップの脳筋クールなクリステン・スチュワートが言う「私のことは私が決める」みたいな冒頭の台詞がすべてですが、女の人のエンパワメント映画、疲れた心に活力注入なサプリメント映画。コンセプトというのは要はこれです。

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そのメッセージに文句を言うつもりはないですが…しかしせめて、敵も含めてもうちょっと個々のキャラクターを掘り下げたり、アクションにしたって場面単位では悪くないですけどキャラの薄さも相まって全体として繋がりが薄く盛り上がらないのでもう少し盛り上げ方を考えたり、常時ポップス流してパーティ感出すのもいいですけどそこは展開も含めてもう少しメリハリを付けてほしい…とは思った。

コンセプチュアルな映画なんですよ結局。だからそのコンセプト自体にアガれる人は面白いんでしょうけど、俺はコンセプトよりお話の展開であるとか何が画面に映ってるかの方を楽しむ人なので、仕事帰りに観るには軽くて明るくてよくまとまって栄養ドリンク効果もあってよくできた映画だとは思うのですが、これ観に行こう! って意気込んで映画館入ると物足りないんじゃないかなって思いましたね。

あとキャラクターですけどクリステン・スチュワートのガサツ系エンジェル、エラ・バリンスカの肩幅立派系エンジェル、実写版『アラジン』でジャスミン役だったことなどすっかり忘れていたナオミ・スコットのエンジェル候補生、これはそんな悪くなかったんじゃないすか。俺基準で言えばクリステン・スチュワートはガサツキャラにしてはガサツが足りないし(部屋めっちゃ汚ねぇとかそういうのを見せるべきなんですよ)、エラ・バリンスカはアクションも頑張るし何より堂々とした立ち姿がカッコいいのに三人のエンジェルを平等に見せようとしてるからせっかくの良さが目立たない(作戦の進め方でちょっとした喧嘩をするとか一匹狼的に行動するとかそういうのやったらいいんですよ)、ナオミ・スコットは一応エンジェルスと行動を共にする一般人キャラなので他のエンジェルとの絡みの中でその差異を描かないと共感できる観客的主人公(この人が影の主人公であったことはエンドロールまで観ればわかる)になりにくいとか…そういうのはある。

が、単純にみんなそこそこキレイだしそこそこカッコいいっていうのがあるからね。身も蓋もないがどうせ娯楽映画なんだから美男美女を観たいっていうのはあるんだ。そのそこそこっていうのがまた煮え切らないところだが…イタリアのシーンでのエラ・バリンスカのファッションがバリバリ決まっていたからまぁいいか! ダンスシーンも良かったしね! そういう感じ、そういう映画。そういう新生『チャーリーズ・エンジェル』でしたね。

※警備員の人はめちゃくちゃ可哀想だった。

【ママー!これ買ってー!】


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みんな女性版『ゴーストバスターズ』の時も同じような感想だったなぁと思ったら今度また『ゴーストバスターズ』の再リブートやるらしい。いい加減にしろよハリウッド。

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