思ったより丁寧映画『ドーン・オブ・ザ・ビースト/魔獣の森』感想文

《推定睡眠時間:15分》

トカナ配給というからこっちはZ級を期待して観にいったのに案外ちゃんとしたものを出してくるんじゃないよ。ちゃんとしたっていうか真面目。ビッグフットとウェンディゴとウェンディゴに魂を食われたグール群団がお馴染みの『死霊のはらわた』スタイルで山小屋に押し寄せるたのしそうな映画ですけどポンコツ然としたところは少なくむしろ、こいつは死ぬだろうなこいつは生き残るだろうなみたいなお約束を微妙に裏切ってくるツイストもあってちょっと普通の意味で面白かった。

そりゃ基本的には山小屋の内外でがちゃがちゃやってるだけですから金がないのは明白ですけど金の無さを言い訳にはしてないんですよね。予算的に撮れないところと撮れるところをちゃんと切り分けていて撮れないところはしっかり誤魔化す。これは無理に撮ってもヘボくなるだなっていうのをたぶん作り手が共有しているから誤魔化し方も場当たり的じゃなくて練られてるし、それは闇をなかなか巧く活用した演出であるとか出てくるキャラクターやモンスターを早い段階で説明少なめにバーっと見せておくことで闇鍋的サスペンスを醸し出すシナリオ面(※制作・出演も兼任したアナ・シールズによる)だけじゃなくて、『デッド・ドント・ダイ』とかにも参加した特殊メイクアップ・アーティストのジェレッド・バログによるモンスター造形とかもそうなんですが、これがそれぞれ補完的に機能していて、無駄に見せすぎないことでモンスター造形は生きて、モンスター造形が生きることでハッタリ演出も案外本格派っぽく見え、本格派っぽく見えることで闇鍋サスペンス展開もヘッポコ感があまりなく…だからこれよくできてるんですよ、あくまでも低低予算ホラーとしてではあっても。

とはいえビッグフットとウェンディゴの絡ませ方はかなり強引で「なんで?」ってなったりはするんですが、それでIMDb見たらなんかこれ”The Retreat”っていうスタッフとキャストが半分ぐらい被ってるウェンディゴ&グールものの山岳ホラーとそれから”Monstrous”っていうこちらも同じ顔ぶれが作ってるビッグフットものの映画のVS的な姉妹編みたいで…あ、ユニバース制度だったの!? じゃあ、もう、ほぼツッコミどころはないな、なんでユニバース制度を採用したのかっていう疑問以外は。トカナ配給なのにツッコミどころがないなんて。なんかすごい映画に思えてきたよ。全然すごくないはずなのに。

あえて難点を言うならゴア描写が弱いっていうところでしょうけどまぁでもその分サスペンス描写で引っ張る。グールでいっぱいになった山小屋を音を立てないように移動するシーンとか不覚にもスリルを感じてしまった。で、そんな風にサスペンスにサスペンスを重ね、謎に謎を重ねてクライマックスのビッグフットとウェンディゴ&グール群団の対決にまで持って行く。そこはちゃんと誤魔化さないで見せるのでえらい。中盤までの闇鍋ムードのわりには小綺麗にまとまり過ぎじゃないかと思わなくもないが、『死霊のはらわた』フォロワーの低予算ホラーかくあるべしのお手本のような一本と言ってもそこまで大袈裟ではないだろうと思う。

ただあのこれだけ褒めちぎった後で書くことでもないでしょうけど予想に反して普通に見れたっていうだけなので別にすごい面白いとかそういうわけじゃないです。うん、台無し☆

【ママー!これ買ってー!】


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内容的にはあんま関係ないんですけど山小屋ホラーといえばこれ好きなんすよねー。

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