幸福の映画『美しき誘惑-現代の「画皮」-』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , , , , , , , , ,

《推定睡眠時間:15分》

最初の緊急事態宣言下で公開された幸福映画の前作『心霊喫茶「エクストラ」の秘密』は映画館の予約画面を見ると半数に制限された座席が満席に近く、コロナ禍でもちゃんと映画観に来る幸福信者気合入ってんなーと思いきや映画館に入ると客は俺一人で映画館行けないから信者たちが前売りだけ使ったのかなんだか知らんがなんで非信者の俺が都内でやってないからと往復三時間かけて県をまたいで幸福映画観に行ってんのに比較的近場にもいるであろう信者は来ないんだよと誰様目線か不明な義憤が沸き上がったものだったが今回はちゃんとリアルにほぼほぼ満席。

ロビーは「あなた映画に出てらした…」みたいなガヤガヤ信者内輪会話(幸福映画は信者出演者が普通に映画館に来るので公開週の土日は毎回舞台挨拶状態なのだ)で溢れ劇中で幸福のどこどこ精舎ロケの映像が映れば「おっ!」の声が上がり(何がおっなんだ)信者ならともかく基本的には信者ではない映画館スタッフはこんな映画ぶっちゃけ流したくないので明らかに対応が冷たい…そうそうコロナ禍以前の幸福映画こんな感じでしたよねと幸福映画も日常を取り戻しつつあることを実感してワクチン接種もまだまだ進んでいないのが現状だが、コロナ禍の出口が変な方向から見えてきたのであった。

しかし映画の纏う意図せぬ先の展望(?)とは裏腹に映画自体は40年ぐらい内容が退行しており幸福映画のセンスの古さは毎度のこととはいえ今回はとくにスゴイ。昼は真面目な銀行員(副頭取秘書)夜は大物コネクションを狙うために銀座のホステスという『蘇る金狼』を地で行く昭和下剋上女性が空海だと何か問題があるのか明らかに空海モデルだと思うのだが海空様と呼ばれる坊主の転生した幸福信者の世襲政治家と出会って心の魔を祓い改心するというしょうもない物語だが、冒頭の神社に参拝しにいったこの金狼(正体は狐なのだが)魔性女性が二人ともサングラスを頭に乗せたヤングカップルの男の方を見てニヤリ、わざと男の前で転んで「キャ!」「大丈夫ですか!」とかいう昭和な茶番からして古すぎる。

最近の幸福映画の脚本は教団を脱退した長男・宏洋に代わって長女の大川咲也加が担当しているが、エンタメが好きなので流行りの意匠を取り入れたり映画的な面白さを重視していた宏洋脚本に対して咲也加脚本にはそうしたケレン味が絶望的にない。どうせ観に来るのは信者だけだし信者の高齢化もだいぶ進行してるからむしろ古いぐらいな方がいいということなのかもしれないが、それにしても父親の主張や世界観やセンスを直訳調で脚本に落とし込んだだけとはいかがなものか。かといって『心霊喫茶「エクストラ」の秘密』みたいに娯楽に寄せて面白いかといえばそれも別に面白くはないのだが…いや、でも『心霊喫茶「エクストラ」の秘密』の方がまだ多少は面白かった気がする。客は俺一人だったけど。

広告

咲也加ものの恒例となりつつある咲也加の下手な歌唱は今回も入っていて女は~変身したいのよ~みたいなのが魔性女性がドレスアップする場面に乗るが、咲也加がかつてアイドル志望だったという宏洋の暴露情報を踏まえればこのへんはちょっとだけグッとくるところかもしれない。いっそ昼は幸福の科学の次期総裁候補で夜は秋葉原の地下アイドルみたいなお話の映画にしてしまえば面白かったのにとか思わないでもないがそんな主張はしないのが咲也加だしそこまでアンテナを広げられず過去の世界に浸り続けるのが父親だから無理だろう。

すこし面白かったのは今年は衆院選があるので幸福の政治部門・幸福実現党の宣伝がかなり前に出ているところで、タイトルを忘れてしまったし知りたがる人もいないと思うので忘れたまま書くが何年か前の幸福映画で幸福実現党の宣伝をやった時にはもっと攻撃的な内容だったのだが、今回は同じ政党宣伝でもだいぶ主張がマイルドで洗練されていた。ゆーても言っていることは国防強化と法人税減税なのでゴリゴリの右派であるし全編に横溢する男尊女卑ムードと世襲政治の全肯定っぷりもまたゴリゴリの右派で、「我々の言いたいことは、ジャパンファースト!」とかいう世襲政治家の街頭演説とか入る。

このへんの主張は自民党右派と概ね重なるしオルトライト系政党とも重なる部分が多く、幸福実現党の独自性をアピールしたい作り手と隆法の狙いとは裏腹に幸福実現党というよりは現代右派政党の一般的傾向を知るためのコンパクトなガイド映画の観がある。幸福映画には金に困った(可能性がある)ビートきよしが以前はよく出ていたと思うが今回はそれより遥かに豪華、デビット伊東、永島敏行、矢部美穂、杉本彩などのこう、なんというかこう、なんというかなんというかあの人は今的な枠の豪華芸能人キャストで、B級豪華芸能人キャストで見る現代右派ガイド映画はなにか味わい深さと芸能界の業を同時に感じる。

内容的には面白い話ではまったくないし人に勧められるものでもまったくないが、社会勉強にはなる幸福映画だったかもしれない。

【ママー!これ買ってー!】


蘇える金狼 デジタル・リマスター版 [DVD]

たぶんですけど隆法は角川映画が好き。

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments