『イニストラード:真紅の契り』の映画パロディの元ネタを書く(オマケで『真夜中の狩り』もあり)

マジック:ザ・ギャザリングは元々映画とか文学からの引用が多いカードゲームだが、ホラーをテーマにしたエキスパンション『イニストラード』はとくに有名ホラー映画を元ネタにしたパロディ的なカードが多い。意外とそういうのを解説してる人がいなかったので先月発売の『イニストラード:真紅の契り』のカードギャラリーを眺めながら見つけた映画ネタを書いてみる。ついでなので今更感もありますが『イニストラード:真夜中の狩り』もプラス。イラストの引用などは一切ないのでカードと元ネタを見比べたい人は各自勝手にご検索ください。

イニストラード:真紅の契り

鳴き叫ぶ大群/Screaming Swarm

クリーチャー — 鳥(Bird) ホラー(Horror)
飛行
あなたが1体以上のクリーチャーで攻撃するたび、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはそれに等しい枚数のカードを切削する。(カードを切削するとは、自分のライブラリーの一番上にあるカード1枚を自分の墓地に置くことである。)
(2)(青):あなたの墓地にある鳴き叫ぶ大群をあなたのライブラリーの一番上から2枚目に置く。
4/4

イラストでは目玉のついたヒトデみたいなやつがたくさん飛んでいる。大群とあるからこの飛び回っているのが全部カード名のクリーチャーらしい。攻撃したクリーチャーの数だけ相手のデッキを切削してくれるテキストだからみんなでわーっと人間に群がってちゅーっとなんか吸うイメージだろう。
おそらく元ネタはDC映画『ザ・スーサイドスクワッド』。ラスト近くに飛行目玉ヒトデの群れが人間たちの頭に張りついて操りゾンビにしてしまうシーンがある。これは米国公開が去年8月だからある意味時事ネタって感じすかね。

首無し騎手/Headless Rider

クリーチャー — ゾンビ(Zombie)
首無し騎手かあなたがコントロールしていてこれでもトークンでもないゾンビ(Zombie)1体が死亡するたび、黒の2/2のゾンビ・クリーチャー・トークン1体を生成する。
3/1

これは映画ネタかどうか結構微妙なラインなのだが首なし騎士(Headless Horseman)の登場するアメリカの怪談話「スリーピー・ホロウ」をネタにしたカードで、ティム・バートンとジョニー・デップのコンビ作にそのまま『スリーピー・ホロウ』がある。まぁ有名な映画だしイラストの参考ぐらいにはしてるでしょ。バートンの映画の方の『スリーピー・ホロウ』は『八つ墓村』とかにちょっと通じる田舎舞台のマーダーミステリーなので、自軍のクリーチャーが死ぬ度にゾンビを作ってくれるテキストともちょっとだけ重ならなくもない。

雑食するもの、グロルナク/Grolnok, the Omnivore

伝説のクリーチャー — カエル(Frog)
あなたがコントロールしているカエル(Frog)1体が攻撃するたび、カード3枚を切削する。
あなたのライブラリーからパーマネント・カード1枚があなたの墓地に置かれるたび、それを蛙声(croak)カウンター1個が置かれた状態で追放する。
あなたは、あなたがオーナーであり追放領域にあり蛙声カウンターが置かれているカードの中から、望む数の土地をプレイしたり望む数の呪文を唱えたりしてもよい。
3/3

なかなか珍妙なテキストを持つカードで自軍のカエル・クリーチャーを参照する。カエル・クリーチャーと言われても他にどんなのがあったか思い出せないのだが、こんなテキストになったのはおそらく『吸血の群れ』(原題”FROGS”)という映画が元ネタだから。口から人間の腕がはみ出したカエルはこの映画の有名なメインビジュアル(日本でのみTwitterで某ホラー映画紹介アカウントがアイコンにしていることでも知られる)。FROGSなのでグロルナクだけじゃなくて他のカエル・クリーチャーが攻撃しても仕事をしてくれるわけですねぇ。
ちなみに映画の方は原題に反してカエルはあまり活躍せず、なんか色んな爬虫類とか昆虫とかが欲深い人間たちに襲いかかるというかその生息圏に踏み込んだ人間たちが勝手に騒ぐ感じである。邦題に反して吸血はしない。

さまよう心/Wandering Mind

飛行
さまよう心が戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上にあるカード6枚を見る。あなたは「その中からクリーチャーでも土地でもないカード1枚を公開してあなたの手札に加える。」を選んでもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
2/1

空飛ぶ触手付き脳みそ。これは直球の引用ネタで1958年のイギリス映画『顔のない悪魔』にこういう見た目の怪物が出てくる。「さまよう心」というのはこの怪物が昔の怪奇映画にありがちな超テクノロジーで人間の潜在意識が具現化したいわゆるイドの怪物だから。映画では透明で人知れず殺人を繰り返していく(それも群れで)かなり手強い怪物だったのだが、カードの方はなんだかずいぶん優しい感じのテキストになってしまった。

板塞ぎの窓/Boarded Window

アーティファクト
あなたを攻撃しているすべてのクリーチャーは-1/-0の修整を受ける。
各終了ステップの開始時に、このターンにあなたが4点以上のダメージを受けていた場合、板塞ぎの窓を追放する。

建物に籠城した人々がゾンビなど外の怪物から身を守るために窓を板で塞ぐというのはホラー映画の定番行動。というわけでそれをカードにしたものだが、『イニストラード:真紅の契り』は狼男が吸血鬼と共にサブテーマになっていることから、演習中の部隊が狼男の集団に襲われ人里離れた一軒家に立てこもるニール・マーシャル監督作『ドッグ・ソルジャー』がイラストの元ネタだと思われる。フレーバー・テキストも兵隊の台詞になってるし。

魅惑する求婚者/Alluring Suitor-命取りの踊り手/Deadly Dancer

魅惑する求婚者
クリーチャー — 吸血鬼(Vampire)
あなたがちょうど2体のクリーチャーで攻撃したとき、魅惑する求婚者を変身させる。
2/3

命取りの踊り手
クリーチャー — 吸血鬼(Vampire)
トランプル
このクリーチャーが命取りの踊り手に変身したとき、(赤)(赤)を加える。ターン終了時まで、ステップやフェイズの終了に際してあなたはこのマナを失わない。
(赤)(赤):これでないクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、命取りの踊り手とそれはそれぞれ+1/+0の修整を受ける。
3/3

昨年リブート的続編(かなりよく出来ていた)も公開された『キャンディマン』が元ネタ。鏡に向かってキャンディマンと三回唱えると…という都市伝説系のオカルト・スラッシャー映画で、トニー・トッドが演じたキャンディマンは90年代のホラーアイコンの一つとなった。キャンディマンは吸血鬼ではないが原作はクライヴ・バーカーなのでエロティックな魅力で主人公の女性を引きつける。その関係性がテキストには反映されているんだろう。

イニストラード:真夜中の狩り

幻影の馬車/Phantom Carriage

クリーチャー — スピリット(Spirit)
飛行
幻影の馬車が戦場に出たとき、あなたは「あなたのライブラリーからフラッシュバックか降霊を持つカード1枚を探し、あなたの墓地に置く。その後、ライブラリーを切り直す。」を選んでもよい。
4/4

扉を斧で破るシーンが『シャイニング』に引用されたことでも知られるサイレント映画史上の傑作『霊魂の不滅』(英語題”THE PHANTOM CARRIAGE”)が元ネタ。これは『クリスマス・キャロル』のような回想形式のお話なので降霊はともかくフラッシュバック持ちのカードをライブラリーから引っ張ってくるテキストもちゃんと元ネタ映画に即している。映画に出てくる馬車はもっと夢幻的でおそろしくも綺麗な感じすけどね。

食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre

伝説のエンチャント
食肉鉤虐殺事件が戦場に出たとき、ターン終了時まで、すべてのクリーチャーは-X/-Xの修整を受ける。
あなたがコントロールしているクリーチャー1体が死亡するたび、各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失う。
対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体が死亡するたび、あなたは1点のライフを得る。

はっはっは、これは訳した人がホラー映画好きなんだろうな。「食肉鉤虐殺事件」。いいっすね~この響き、「事件」と付けたのが技ありだ。元ネタはもちろん『悪魔のいけにえ』、原題”The Texas Chain Saw Massacre”で、カード名の食肉鉤というのは『悪いけ』劇中で殺人鬼レザーフェイスが犠牲者を生きたまま引っかける鉤を指す(これはゲームの『Dead by Daylight』でも引用された)。イラストの奥の方で肉包丁を振るっているエプロン姿の大男もレザーフェイスそのまま!

腐敗した再会/Rotten Reunion

インスタント
墓地にあるカード最大1枚を対象とする。それを追放する。腐乱を持つ黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークン1体を生成する。(それではブロックできない。それが攻撃したとき、戦闘終了時に、それを生け贄に捧げる。)
フラッシュバック(1)(黒)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードをフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

アメリカ美術史では有名な一枚のグラント・ウッド『アメリカン・ゴシック』はよくパロディのネタにされる絵画なのでこれもその可能性が濃厚なのだが、その名も『アメリカン・ゴシック』というちょっとしたカルトホラー映画もあり、こちらもポスターとかビデオのジャケットになってるメインビジュアルが絵画の方の『アメゴシ』のパロディ。ゾンビとか出てくる映画じゃないのでカードとは関係ないかもしれないが、この映画おもしろいので機会があったら観てみてねということで…すごいんだよ精神年齢が八歳で止まった五十六十のオッサンたちが遊びで若者たちを殺していく絵面が奇怪で。

戯れ児の縫い師/Poppet Stitcher-戯れ児工場/Poppet Factory

戯れ児の縫い師/Poppet Stitcher
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
あなたがインスタントやソーサリーである呪文を唱えるたび、腐乱を持つ黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークン1体を生成する。(それではブロックできない。それが攻撃したとき、戦闘終了時に、それを生け贄に捧げる。)
あなたのアップキープの開始時に、あなたが3体以上のクリーチャー・トークンをコントロールしている場合、あなたは戯れ児の縫い師を変身させてもよい。
2/3

戯れ児工場/Poppet Factory
アーティファクト
あなたがコントロールしているすべてのクリーチャー・トークンはすべての能力を失い基本のパワーとタフネスが3/3になる。
あなたのアップキープの開始時に、あなたは戯れ児工場を変身させてもよい。

これはもう完全に俺の主観ですけど「戯れ児の縫い師」面でゾンビ作ってるオッサンの見た目がかなり少しだけモダンゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロに似てる。まぁテキスト的にもどんどんゾンビを作っていくわけですからロメロをネタにしていてもおかしくはないんですけど、でもロメロのトレードマークの額縁メガネをこのオッサンかけてないんだよな。どうなんでしょうね。映画パロディならわりと自由にやれるけど実在人物モチーフとかになっちゃうと無許可でやるのはちょっと的な声が会社から出てそれで微妙に似せっぷりになったとか…って気しません?

〈オマケ〉発見はできなかったがなにかしら元ネタのありそうなカードたち

『不気味なくぐつ師/Creepy Puppeteer』はカード名だけならこんな感じのホラー映画はたくさんあるが、ただイラストに既視感がない。テキストもいまいちピンと来ない。いかにもありそうなんすけどねぇ。”Creepy Puppeteer”でしょ? う~ん…。もう一枚は『恐怖のドールハウス/Dollhouse of Horrors』。これは絶対ホラー映画ネタだと思うがやはりイラストにピンと来るものがない。カード名だけなら『テラー博士の恐怖』、原題”DR. TERROR’S HOUSE OF HORRORS”がまぁまぁ元ネタっぽい感じで、このカード墓地のクリーチャーを参照してどんどんクリーチャー・トークンを作っていくテキストですけど、『テラー博士の恐怖』はオムニバス・ホラーだから内容面でもかけ離れてはいない。まこのへんの探索は誰か他の知恵者に託そう。おねがいします。

【ママー!これ買ってー!】


MTG マジック・ザ・ギャザリング イニストラード:真紅の契りコレクター・ブースター 日本語版

せっかくだからアフィリンク貼りましたけど俺自身はもうずっと紙ではやってなくてMTGアリーナなんすよね。英語圏の人にわりとムカつかれている気がする舐め腐ったユーザー名PooPooPoo#25597でやってますのでカジュアルマジックが好きな人はどうぞ。ちな基本イゼット系。

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