真実の映画『愛国女子 ー紅武士道ー』感想文

《推定睡眠時間:0分》

現在後継者と目されているらしい長女・大川咲也加が教団を抜けた大川宏洋に代わって実写フィクション系の幸福映画の脚本(総裁の言いたいことの翻訳)を手掛けるようになってから何作かは大川総裁のMCUにおけるスタン・リー的カメオ出演が一つの売りになっていたがそういえばこれも含めて近作では見ないなと思っていたらポストクレジットに「大川総裁自ら剣道の指導に立った…」的なテロップに続いて胴着を着た総裁登場、「きぃ~えぇぇぇ~い」と力の抜ける声を発しながら腰の据わらないゆるゆる所作でペコとかポコとか音のしそうなズッコケ剣道を披露するのであった。

和んじゃったよね。そうねぇこれは内容的にはタイトルから想像はできると思いますが右翼っていうかネトウヨ映画でどのへんがネトウヨかと言いますと全部ネトウヨだよ! 地図上では明らかに中国になっている北朝鮮と中国(でも地図上は北朝鮮は入ってない)を雑に混ぜたソドラ共和国が日本上空を通過して太平洋に着弾するミサイル実験や軍艦の領海接近(それはもう国際的事件だろ)を繰り返す中で主人公の剣道女子・千眼美子が極主観的総裁伝記映画『世界から希望が消えたなら。』においてヤング大川総裁を演じてたことから総裁の映画的分身と考えられる霊的指導者・田中宏明の指導を受けて首都にミサイルが着弾しキノコ雲が上がる霊的ヴィジョンを見て危機感を募らせにも関わらずテレビのワイドショーではコメンテーターが「対話で解決すべき」と穏当な意見を述べていることに威厳たっぷりの父親共々「テレビは偏向してる!」と一家団欒の夕食の席で憤っていると勉強熱心な長男が「今はテレビよりネットに正しい意見があるよ!」とネットの討論番組を父親と千眼に見せて感心されるとかそんな映画だからネトウヨですけどそれにしてもこのシーン咲也加はどんな気持ちで脚本書いたんだろうね!

宗教家として一時代を築いた父親のまぁ昔から幸福は保守系の新宗教ではあったがさすがにここまでアホにはなっていなかったはずがいつの間にやらなこの憐れなネットDE真実(死語)ネトウヨ凋落っぷりに哀しくなったりはしないのだろうか。この家族がしかもザ・昭和な亭主関白男尊女卑家庭で大川総裁がこんな家庭に憧れているのはわかるが総裁本人はこんな強い恐い父親ではないし家庭内の雰囲気も(察するに)こんなものではまったくない和やかな(察するに!)ものであったことは咲也加ならよく知っていると思うのだがとまぁそんなことはいいのだが!

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なにせ日本会議をもじったと思しき「日本救済会議」が日本を霊的に防衛する正義の組織として描写されその事務局長が総裁の分身の田中宏明だったり千眼たちがソドラ共和国のミサイル実験に業を煮やして軍備力の強化と強硬な対抗措置を三島由紀夫ばりのもしくはヒトラーばりの身振り手振りで訴える街頭演説をしていると突如「戦争を始める気かー!」と叫びながら鉄パイプを持った男が現れ逮捕されたこの男はテレビで「共産党運動員」の肩書きで報じられ(そんな肩書きがあるか!)たりする穏やかならざるにも程があるだろな内容であるからうわー幸福やっぱやべーなーと幸福映画を数年前からウォッチしている俺でも引いていたのであったが例の総裁直々の剣道指導映像を見たらまぁ、察す。

総裁の願望世界なんだねぇこれは。子供たちから尊敬される威厳ある父親になりたいとかさ、日本会議みたいな政治的影響力のある組織のリーダーになって永田町を動かしたいとかさ、大学までずっと勉強勉強だったけど武道のできる強い人に今からでもなりたいとかさ、そういう総裁のたられば集ですよ。あと本筋とは何も関係なく挿入される「はちみつロール食べたい!」の台詞および食事シーンは銀座にある幸福の科学が経営するブックカフェ(総裁の本が大量に置いてあるカフェ)の新メニューのたぶん宣伝です。だからほっとしたという変ですけどまぁそんなもんだね現実はって思いましたよ。映画は妄想を見せてくるのにこっちが見るのは現実なんだからそのギャップが面白いよね。

思想はともかく映画としてどうか。どうかも何もないよそんなの「いっけな~いもうこんな時間! 早く家に帰らなきゃ!」みたいな独り言の台詞を冒頭で千眼に言わせてる時点で映画としての面白さは察せよって感じだよ。幸福監督・赤羽博の演出はこの人はプロですから普通ですけど脚本の咲也加は総裁の忠実な翻訳者なのでどう総裁の思想と教団の姿勢を信者に伝えるかしか考えてない。これは咲也加の個性が出てるのかなみたいな咲也加脚本の幸福映画(ファンタジー要素が強いやつとかアイドル要素のあるやつ)もありますけど『愛国女子』はそうじゃない政治性および宣伝性の強い内容なので、まぁ最後の霊界決戦? みたいなやつは総裁が偏愛する角川映画的な趣で多少は楽しめないこともないが…ぐらいが関の山でしょう。そこもゾンビ的亡者の大群が出てきたりして幸福映画の中ではかなり絵作りに金をかけた方だと思うが亡者の大群とかいうせっかくのオモシロ要素を全然活かしきれていないので盛り上がらないし。宏洋脚本だったらこんな場面はアクション満載で盛り上げるのにねぇ。

ってな感じでしたはい今回の幸福映画。ネトウヨの世界観で撮られた劇場用映画というのは貴重なのでその意味では一見の価値あり。か?

【ママー!これ買ってー!】


ネット右翼とは何か (青弓社ライブラリー)

なぜ人は高齢化すると「真実」に目覚めてしまうのか。

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