わちゃわちゃ楽しい映画『先生!口裂け女です!』感想文

《推定睡眠時間:0分》

この映画のナカモトユウという監督の映画は前に池袋シネマ・ロサでやってた『いけにえマン』と『はらわたマン』というのを観たことがあるのだがその時にへぇと思ったのがこの2本はタイトルから察せられるように自主映画のホラーアクションコメディなのだが案外ちゃんとキャラクターを作っていてその芝居もしっかり付けていて…いやそんなの当たり前だろと思われるかもしれませんが自主映画のジャンル映画とか商業でも最低予算に属するVシネホラーとかってそういうのがおざなりであることが多いんですよホント。アクションならアクション、ゴア描写ならゴア描写を見せるので精一杯というか、観る側もどうせそんなの期待してねぇだろみたいな割り切りがあって、キャラクターの造型はステロタイプだし芝居は一本調子、みたいな。

だけど『いけにえマン』と『はらわたマン』はそういう割り切りもしくは開き直りは感じなくて、その点は『先生!口裂け女です!』も同じだったからこれはそこが良かったな。ゼロ年代サブカルの申し子パターンが多すぎる今の若手監督の最低予算ジャンル映画らしく『コワすぎ!』でお馴染みの大迫茂生(あと若手監督の映画に積極的に出てくれるやさしい六平直政さん)がこの映画にも出てますけどその役柄はグレかかっている主人公の父親。『コワすぎ!』みたいなエキセントリックな芝居ではなく息子とどう接していいか悩む姿を繊細な芝居で…というのを見て感動とまでは言わないけどなんかグッときちゃったよ俺。

あ、大迫茂生って役者さんだったんだっていう。知ってるけど。知ってるんだけどゼロ年代サブカルの申し子パターンが多すぎる今の若手監督の最低予算ジャンル映画に出る時の大迫茂生ってだいたいいつも内輪ウケ的なネタキャラとかゲストキャラみたいな扱いで役者だなぁっていうのを感じる芝居ってあんまり見せてなかったからさぁ。キャラクターで映画を見せるということ、キャラに観客の感情を乗せるということ、そのキャラクターできっちりストーリーを語ること、そういう地味な作業を疎かにしてないんだよなこれは。だから盗んだバイクで走り出したらその持ち主は口裂け女だった…なんて出オチ感満載のプロットの映画なのに与太話になってない、一風変わってはいるけれどもちゃんと青春物語として成立してる。

面白いとか面白くないとかじゃなくて、いや面白いんですが、でもそれとは別にこういう映画はなんか好感を抱いてしまうな。基本的には軽い青春コメディだから怖い場面とか凄いアクションとか血糊ドバァみたいなのはあんま期待しない方がいいけど(でも終盤の口裂け女大暴れのシーンはなかなか燃える)、サクッと楽しい気分になれる映画が観たいってときにこういうのはイイ。勧善懲悪だしギャグは笑えるし口裂け女はかっこいいし、わちゃわちゃしててなんだかしあわせ。そんな映画でしたね。

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昭和の子供たちを恐怖のどん底に突き落とした口裂け女も今やキュンキュン系のラブコメのヒロインみたいです。たしかに冷静に考えてみれば口が裂けたところでどのへんが怖いのかよくわからない(鎌で裂かれるのは怖いっていうか死ぬ)

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